経済・IT【産経抄】2月21日2011.2.21 03:01

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【産経抄】
2月21日

2011.2.21 03:01

 「日本の作家の暮らしはどうかね」「大変だよ」「そりやまた、どうして?」「何しろ税金がひどい」「えつ!」「日本の連中はおとなしく税金を払ふのか?」「それは払ふよ。あんたはどうしてるの?」「払ふもんか」。

 ▼ペルー出身で、昨年ノーベル文学賞を受賞したバルガス・リョサさんと、ある日本人作家がかわした会話だ。書き留めた丸谷才一さんは、仰天する。リョサさんはこの会話から1年後の1990年、アルベルト・フジモリ元大統領に敗れたものの、大統領選に挑んでいるのだ(『月とメロン』文芸春秋)。

 ▼ペルーが抱える極端な経済格差の問題も、不公正な税制と無関係ではあるまい。もっとも日本でも、税金なんて「払ふもんか」とうそぶくお金持ちがますます増えそうだ。母親からの資金提供問題で、「平成の脱税王」と呼ばれた鳩山由紀夫前首相は、いまだきちんとした説明をしていない。

 ▼先週末には、消費者金融大手「武富士」の創業者夫妻からの株の贈与をめぐる、さらなる仰天ニュースが飛び込んできた。約1330億円の追徴課税処分取り消しを求めた長男の言い分を、最高裁が認める判決を下したのだ。長男には、国から利子を含めて約2000億円が還付されるという。

 ▼税務当局はもちろん、武富士の違法な取り立てや経営破綻で、多大な損害を被った人たちは、憤懣(ふんまん)やる方ない思いだろう。たとえ税逃れが明らかであっても、厳密に法に照らせばやむを得ないというのが、最高裁の判断らしい。

 ▼古代ギリシャの哲学者、ソクラテスは、「悪法も法なり」と言って、毒杯を仰いだとされる。その末裔(まつえい)の国が財政破綻を招いた一因も、富裕層の目に余る税逃れだった。

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