徹底取材

「在特会(在日特権を許さない市民の会)」の正体

いまや日本社会で最もやっかいな存在「ネット右翼」とは何者か

安田浩一 (ジャーナリスト)

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第6回

「どうか批判も自由に書いてください。私たちの主張を聞いてくれるだけでも嬉しく思います。ただし、デタラメを書かれたら、私はしっかり抗議します」

別れ際、藤田はそう言って深く頭を下げた。

在特会宮城支部の街宣を取材したのは10月10日のことである。

街宣前の集合場所に足を運び、参加者へ挨拶していると、そのうちの一人が、やや挑発的な言葉を私に投げかけてきた。

「マスコミなんて信用していないんですよ」

ヨットパーカにカーゴパンツの若い男だ。

「悪いですけど、講談社って小沢一郎の言い分を垂れ流しているだけですよね」

どうやら『日刊ゲンダイ』のことを言っているらしい。確かに同紙はメディアのなかでも数少ない“小沢擁護”の論陣を張っていたかもしれない。だが、そもそも同紙は講談社とは別会社であり、私自身もフリーランスなのだから講談社の「社論」(なんてものがあるのか知らないけど)とは関係ないと説明した。

それでも彼は一方的にメディアの左翼偏向についてまくしたてる。語彙は豊富だし、根性も据わっている。面白い男だなと私は思った。年齢を聞いて、ますます興味を持った。なんと14歳。中学2年生である。彼もネットを閲覧していくなかで「在日の悪行を理解」し、次いで在特会の存在を知って入会したという。

「学校ではいまだに『在日は可哀想な人たち』みたいな教え方をしてるんですよ。まったくもっておかしいですよね。そもそも在日は、日本がイヤであるならば祖国に帰ればいいのに、それをしない。矛盾もいいとこですよ。まあ、学校ではこんな話はしませんけどね。学校ってのは政治の場じゃないでしょう? そんなことくらい僕だってわかってますよ」

仲の良い友人とも政治の話はしないそうだ。

「みんな無関心ですからね。どうせ『そんなこと高校受験には関係ないだろう』って程度の反応しかありませんよ」

背伸びしたくてたまらない年代なのだろう。大人に混じり、政治を語り、日本の危機を訴える中学2年生は、生意気な口調で私に突っかかりながらも、どこか楽しげな様子であった。

つづく

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プロフィール
安田浩一
Koichi Yasuda
ジャーナリスト
1964年静岡県生まれ。週刊誌、月刊誌記者などを経て2001年よりフリーに。事件、労働問題などを中心に取材・執筆活動を続けている。著書に『ルポ 差別と貧困の外国人労働者』(光文社新書)、『外国人研修生殺人事件』(七つ森書館)ほか。Twitter ID: @yasudakoichi




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