「どうか批判も自由に書いてください。私たちの主張を聞いてくれるだけでも嬉しく思います。ただし、デタラメを書かれたら、私はしっかり抗議します」
別れ際、藤田はそう言って深く頭を下げた。
在特会宮城支部の街宣を取材したのは10月10日のことである。
街宣前の集合場所に足を運び、参加者へ挨拶していると、そのうちの一人が、やや挑発的な言葉を私に投げかけてきた。
「マスコミなんて信用していないんですよ」
ヨットパーカにカーゴパンツの若い男だ。
「悪いですけど、講談社って小沢一郎の言い分を垂れ流しているだけですよね」
どうやら『日刊ゲンダイ』のことを言っているらしい。確かに同紙はメディアのなかでも数少ない“小沢擁護”の論陣を張っていたかもしれない。だが、そもそも同紙は講談社とは別会社であり、私自身もフリーランスなのだから講談社の「社論」(なんてものがあるのか知らないけど)とは関係ないと説明した。
それでも彼は一方的にメディアの左翼偏向についてまくしたてる。語彙は豊富だし、根性も据わっている。面白い男だなと私は思った。年齢を聞いて、ますます興味を持った。なんと14歳。中学2年生である。彼もネットを閲覧していくなかで「在日の悪行を理解」し、次いで在特会の存在を知って入会したという。
「学校ではいまだに『在日は可哀想な人たち』みたいな教え方をしてるんですよ。まったくもっておかしいですよね。そもそも在日は、日本がイヤであるならば祖国に帰ればいいのに、それをしない。矛盾もいいとこですよ。まあ、学校ではこんな話はしませんけどね。学校ってのは政治の場じゃないでしょう? そんなことくらい僕だってわかってますよ」
仲の良い友人とも政治の話はしないそうだ。
「みんな無関心ですからね。どうせ『そんなこと高校受験には関係ないだろう』って程度の反応しかありませんよ」
背伸びしたくてたまらない年代なのだろう。大人に混じり、政治を語り、日本の危機を訴える中学2年生は、生意気な口調で私に突っかかりながらも、どこか楽しげな様子であった。
つづく
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