秘湯として人気の青森・むつ市の温泉が、16日を最後に撤去されることになった。人気の露天風呂の前に立ちはだかったのは、条例の壁だった。撤去されることになったのは、青森・むつ市の奥薬研(おくやげん)温泉にある「隠れかっぱの湯」。入浴者は「長い間、癒やしてくれてありがとう。残念でなりません。開放的でいいでしょ。小学校のころから来ている」と語った。この温泉は、ホテルが閉鎖したあと露天風呂だけが残ったといい、人目につかない「秘湯」ながら、全国から温泉愛好家が訪れるという人気の露天風呂。地元の人は「24時間いつでも入れますよ、誰でも。観光客であれ、地元の人間でも、男でも女でも」と語った。ところが、県の条例で義務づけられている脱衣場や囲いがなく、周囲から丸見えの混浴風呂であることや、管理者がおらず衛生面での問題もあるとして、2010年2月から使用禁止になった。そして、17日に撤去されることになった。この温泉は、地元の有志らが自主的に清掃、管理するなど、長年にわたり愛されてきた。温泉への道を雪かきしていた人は「本当に残念でたまらない。あきらめきれないけれど、あきらめるしかない。今までありがとうですね」と語った。40年間通っていたという地元の人は「(撤去は)よくない。みんな反対しているんだから。残しておきたい」と語った。地元の飲食店の人は「隠れかっぱのお風呂に来るのが楽しみで来るんですから。風呂がなくなれば、(客の)足が遠ざかるから、影響はあると思います」と語った。残す手について、むつ市役所大畑庁舎の舘 健二総括主管は、「外部から入浴者が見えるとか、混浴状態であるとか。(改善の)工事をするには、ちょっとあの場所は難しい場所で。(改修費用は)推定だと1,000万円以上。残念ですが、法令順守の立場を守らないと」と語った。公衆浴場法に管理されている全国の温泉。静岡県の修善寺温泉の「独鈷(とっこ)の湯」は、弘法大師ゆかりの温泉だが、川の中央にあり、入浴する姿が見えてしまうこともあり、現在は入浴が禁止されている。地元の人は「マナーの問題じゃないですか。外から見えますし」全国の秘湯に迫る法律の壁。しかし、営利目的ではない温泉施設に、公衆浴場法を適用することに懐疑的な声もある。日本温泉協会の布山裕一事務局長は「行政指導により、囲いや脱衣所を設置した事例は結構ある。だけど、浴槽そのものを撤去したということは、ほとんど耳にしたことはない」と語った。撤去作業は17日から1カ月かけて行われるという。
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