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[16696] 【ネタ】Muv‐Luvに第6世界のアイツ(ら)を放り込んでみた
Name: 猫村◆14da4150 ID:ec5c5327
Date: 2011/02/20 12:15
 社霞が『ソレ』に出会ったのは、10月の下旬───何時もの様に、シリンダーの中の“彼女”との『会話』を終え、自室に引っ込もうとしていたときの事だった。


 ───まるでボールのような───


『ソレ』を見た霞の第一印象である。

 ボール“のような”――形だけ見ればまさしくその通り、大きさ30㎝程の『ボール』である。
 ただし素材は金属、収納式の四本足で歩行、――挙句“Pi Pi Pi”と、電子音でがなりたてる『ソレ』を『ボール』と呼べれば、だが。

 ───博士の研究サンプルだろうか───

 霞がそう思ったのも、むべなるかな。『ソレ』には高度な自意識───というより知性───が宿っており、さらに驚くべきコトに意思疎通・・・会話も可能だったのだから。
 まあ、会話と言っても耳に聴こえてくるのは例の、“Pi Pi Pi”という電子音なので“彼女”との『会話』と同じく、リーディング等を用いてのモノではあったが、それでも一方通行ではない『おはなし』は、霞にとっては新鮮だった。

 なによりも、『ソレ』は実に色々な事を知っていて、たくさんのお話を聞かせてくれた。

 ねこかみさまのおはなし、いぬかみさまのおはなし、とりかみさまのおはなし、うさぎかみさまのおはなし、りゅうのおはなし、きへいのおはなし

 霞は時間が経つのも忘れて『ソレ』・・・否、『彼』(男性であったらしい)が語ってくれるお話に聞き入った。

・・・・・・・


 楽しい時間は経つのが早い。そろそろ戻らないといけないだろう・・・しかし、

 ───またお話してくれるだろうか───

 そう思って『彼』に尋ねると、『構わないがひとつ頼みがある』とのこと。


     『ともだちになってほしい』


_______


 次の日、『転がる丸い友』のところに赴いた霞が見たのは、二つに増えた友の姿だった。

 ───もしかして、『彼』の『家族』だろうか───

 友に尋ねてみたところ返ってきたのは、『そこらにあったガラクタで作った』とのコト。───なるほど、言われてみれば昨日まであった廃材等が消えてなくなっている。
 友の意外に器用な面に霞は感心し、そして友達が増えたことを喜んだ。

_______


 さらに次の日、霞の友は四つになった。

_______



 ・・・一週間後、霞に百を越す友達が出来た。


_______


 友が出来てからしばらく経ち、ふと気になったコトがある。
 ・・・現在、霞と共に“彼女”の部屋にいるのは僅か2・3体の『転がる丸い友』のみ。だが計算違いでなければ、

 ───友の数はとうに百万の大台をこえたはずだが───

 さして大きなカラダではないとはいえ、数が数である。そこらをうろつけばこの基地が、ちょっとしたパニックになるのは目に見えている。しかし今のところ、誰も気にした様子はない・・・というか、友の存在に気づいてさえいない。

 ───だとすれば、残りの友は何処で何をしているのだろう───

 友は、『内緒だ』と答えた。なんでも霞をビックリさせるための準備を行っているのだとか。

 ───バラしてしまっては意味がないが・・・でも嬉しい───

 友の心遣いに、あえてそれ以上は聞かない事にした。

_______


『友よ、なにを憂うる?』

 ある日の友の問いに、霞は困惑した。どうやら顔に出ていたらしい。

『友の憂いを祓うのは、我らの義務にして誇りである。遠慮する事はない、我らに出来る事なら喜んで力を貸そう』

 気持ちがいいくらいに言い切る友に、霞は躊躇いがちに口を開いた。

 ───実は───

 このごろ、基地内の整備に携わるスタッフが、超過勤務等により疲弊し、戦術機はじめとした各装備のメンテナンスが追いついていない。

 ───何かよい知恵はないものか───

 それを聞いた友は『なるほど』と納得し、次いで『ならば自分たちに任せておけ』と一言。

 そして、いずことなく転がっていった。


・・・・・・・・


 次の日、ハンガー内の全ての戦術機が、完璧な整備済み───装甲から計器類にいたる全てが、メーカー修理にでも出したのかと思うほどの状態───となっていた。
 ・・・というか、まったく別の機体とそっくり入れ替わっていた。現在ハンガーを見渡せば、

『不知火・弐型』が、『F-15ACTV』が、『タイフーン』が、『ラファール』が、『ラプター』が、『殲撃10型』が、(まあ、最初の二つは殆どの人間が知らなかったが)etc・・・

 ・・・とまあ、世界各国の誇る最新鋭の機体がひしめき、挙句には『武御雷』(しかも全部紫色の)までが、所狭しとすし詰めになっていたりする有様だ。
 その光景に感動したのか「スバラシイ、スバラシイィ───!」と叫びながら、ヘンなポージングをしてたポニーテールがいたが、無視した。

 ───友の仕業か?───

 当りだった。
 なんでも『最初のうちは、普通に修理するダケのつもりだった』のだそうだが、基地内のデータを閲覧したところ、現行の機種よりも性能的に優れたモノがあったので、そちらに改造しておいた、とのこと。

 ───イチから作り直すのを改造とは言わんだろ───

 ツッコむべきか迷ったが、友の厚意は有難く受け取っておくべきだろうと考え、黙っておくコトにした。そして申し訳ないと思いつつ、苦言を呈する。

 ───『アレ』はなんとかならんものか───

 霞の脳裏に、

 芋洗いのごとく、ハンガー内にあふれかえる“国の象徴”たる戦術機『武御雷』と、
 ソレ“ら”を前にしてやれ「不敬である」だの、「この機体は冥夜の御為にのみ・・・」だのと、“博士”に難癖つけるけったいな赤装束の姿、
 赤装束を止めようとする、これまたけったいな髪型の少女、
 空気を読まず、嬉々として武御雷に乗り込もうとしたところを、赤装束に蹴っ飛ばされるポニーテール・・・

 諸々の姿が浮かんでくる。

 話を聞いた友は暫くの間、Pi Pi Piと仲間内で相談? らしきモノを行い、『わかった、善処しよう』と言って、またいずことなく転がっていった。


・・・・・・・・

 次の日、ハンガー内の全『武御雷』のカラーリングが一新されていた。


 ───ピンクやオレンジ、ミントグリーン等のパステルカラーにはじまり、水玉模様やストライプ。ねこや犬、ペンギンといった可愛らしい動物の絵が、でかでかと描かれたモノもあった。
とりわけ霞が喜んだのはボディいっぱいにウサギのマークが描かれた機体だった。実に素晴らしい。

 ───なるほど、これなら斯衛の連中も五月蝿く言うまい───

 そう思いつつ周りを見渡せば、昨日の赤服がヘンテコ髪型共々痙攣しながらぶっ倒れているのが見えた。

 ───おそらくあまりの愛らしさに感動したのだろう───

 霞は友の機転に改めて感心した。

・・・・・・・・

 さらに翌日、例の赤服が今度は一新されたカラーリングにケチをつけているのを偶然目撃し、

 ───なんと美的センスに欠ける連中か───

 霞は悲しくなった。


_______


 HSST(再突入駆逐艦)がこの基地めがけ突っ込んでくる。その話を聞いたときに霞の脳裏に閃いたのは、転がる丸い友の存在だった。

 ───早く逃げて───

 友に懇願する霞。その表情は、いつになく真剣だ。

 ───自分のことはどうでもいい。一刻も早くココから離れてほしい───

 そう告げると転がる友は、『・・・やはり友は、我らの見込んだ通りの人物だったな』誇らしげに語った。何のことだ、と尋ねようとする霞――その瞬間、響き渡る轟音。

 ───真逆、もう墜ちて来たのか───

 焦る霞を落ち着けるように、転がる友が説明を行う。

『心配するな、あれはな───』

 なんでも基地内の戦術機のいくつかに、ありったけのロケットモーター(当然製作したのは友だ)をくくりつけ、ついでにS11を詰め込み空に打ち上げたのだとか。

『ブースターの推力は軽く10Gを突破するので、知類(彼らは霞たち“人類”をこう呼ぶ)が乗ればあの世逝き確定───なので自立誘導で駆逐艦にぶつける』

 要するにカミカゼアタックというヤツだな、と説明する友。『我らが故郷における、“最低接触戦争”を参考にした』とのことだが、良くは分からない。
 ちなみに十機以上打ち上げたのは、命中率と作戦成功率の問題を解決する、手っ取り早い方法を採用したからだそうな。

『馬鹿でも出来る物量戦も、誰にも負けぬほど極めつくせば文字通り“誰にも負けない”戦術・戦略となる』・・・友の言葉である。


 そうしている内にHSSTに激突する十数機の戦術機、の形をした爆弾。吹っ飛ぶ駆逐艦。あまりにも身も蓋もない光景である。

_______


 ───“彼女”に身体を造ってあげられないか───


 いつもの様に“彼女”との『会話』を終えた霞は、思い切って友に聞いてみた。友は笑いながら、彼女の頼みを快諾してくれた。

『優しいのだな、我が友は』

 その言葉に、霞は頬を赤くした。

・・・・・・・・

 数時間後、“彼女”の為に用意された《身体》を見た“博士”が、「ダレの仕業よ!」とか「アタシの数年間を返せ!!」とか喚いていた。

 ───素直に喜べばイイのに───

 友の厚意を無碍にされた気がして、霞は頬を「ぷくー」と膨らませた。

・・・・・・・

 そして翌日。“彼女”の起動を行い───成功したのかどうかはイマイチよく分からない。
 なにせ“彼女”ときたら、何を話しかけても「タケルちゃんがいない、タケルちゃんが───」と、ぶっ壊れたレイディオよろしくエンドレスに呟くのみ。それなりに長い付き合いではあるが、流石に引く光景である。霞は放っておくことにした。

_______


 クーデターが起きた。

 勃発後、1時間で鎮圧された。

 クーデター派の使用していた、戦術機をはじめとした機械類が一斉に使用不可能に陥ったらしい。
 首謀者であるところの、やたらとめんどくさい苗字の男は、

「死して護国の御盾とならん───」

 と、言い残してハラキリを行おうとしたところを、何者かが投げつけた靴下の直撃を受けて失神───お縄になったそうである。

 またこれと時を同じくして、どこかの国の空母が領海内で救難信号を発信、太平洋上にぷかぷか漂っていたところを、帝国海軍が救助するという珍事が発生した。SOSの理由は、艦長以下の乗組員の半数以上が、食堂で出された『死神定食』とかいう料理を口にしてぶっ倒れ、艦の機能がマヒしたとのこと。ていうか、そんなモン食っちゃ駄目だろう死神だけに。

 なお、なんだってこんな時期にこんな所をうろついていたのか───と言う質問に彼らは、『た、たまたま演習を・・・』と眼を逸らしながら答えていたらしい。別にどうでもいいが。


・・・それら一連の事件に関して、友は多くを語らなかったが『情報のリーク』『流石は三年物』とのみ洩らしていた。


ところで、『ソックスレムーリア』ってナンだ?

*******

 あとがき

前編はここまで。
さて、最終決戦はどうしよう。ドラマCDに倣うなら『武勇号』『希望号』『慈愛号』だけど、いっそ『複座士魂号』でも出すべきかしら。


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