朝日社説のヒステリックな小沢叩きとマニフェスト誹謗 - 菅四面楚歌
週末から週明けにかけて、マスコミ各社の「世論調査」が発表されている。それによると、菅内閣の支持率は、朝日が20％、毎日が19％、産経が16％となっていて、発足以来最低となり、歴代内閣が崩壊した直前の水準に達している。一方、テレビと新聞がこの政局にどういう論評を発しているかと言うと、「政局で揉めている時ではない」とか、「いま解散したら日本が混乱して滅茶苦茶になる」とか、「予算関連法案が通らないと国民が迷惑を蒙る」とか、「国債の格付けを下げられる」とか、そういう恫喝じみた警告口調で全社整列し、菅政権を擁護する姿勢を際立たせている。小沢系に対する罵詈讒謗は無論のこと、自公に対しても、「菅政権の足を引っ張らずに政策で協力しろ」と要請を言い続けている。マスコミの政治報道は、現在、データ系とコメント系で分裂した状態にある。メッセージの矛盾が検出できる。データ系の方は菅政権の崩壊と終焉が近い事実を伝え、コメント系の方で菅政権を支えて世論が倒閣に向かわないように誘導している。例えば、2/20のTBSの番組での大宅映子や岸井成格の発言が典型的で、解散は無意味だとか、政局騒動はやめろなどと喚いていた。データ系とコメント系を一致させている男が一人いて、共同通信の田崎史郎で、政局商売の季節の到来が嬉しくてたまらず、稼ぎどきの出番に顔を綻ばせながら、「菅降ろし」を煽り立てている。
今朝(2/21)のTBSの朝ズバも基調は同じで、菅直人に三政策（�‐暖饑覗�税、��TPP加盟、��小沢斬り）を断行させたい連中が、「政局ナンセンス」を言い、解散は6月までないと言い、菅政権は持ち堪えるだろうと「応援予測」の解説に徹している。要するに、永田町の議員に対して、政局に動揺せずに三政策断行に協力して尽力しろ発破をかけているのだ。官僚の側のメッセージである。こうして、コメント系とデータ系の政治報道の背反を見るとき、そこに何を感知するべきかと言うと、おそらく、データ系の方はもっと破滅的な状況なのに違いないという真相だ。つまり、菅内閣の支持率の実態は、発表されている数字よりも相当に低いと推察されるのである。実値は10％を切っているのだ。マスコミの本音はコメント系の方にある。菅直人が退陣に追い込まれて、三政策の見通しが立たなくなる事態を恐れている。しかし、菅政権はもう保たないという実情も理解しているため、データ系の報道もそれなりに流し、バックアップ・システムを裏で作動させるべく、三政策を継承するポスト菅の準備を永田町に指示しているのである。普通に考えて、地方選で全敗して、民主党の地方議席を半減させながら、それでも責任を取らずに居直る図はあり得ない。公債特例法案だけでなく、予定の重要法案は一本も通らないし、野党は余裕で首相問責を仕掛け、世論の支持を受けるだろう。
本日（2/21）の朝ズバでは、桜井充が「菅政権の政策を検証する勉強会」を開くと公言する映像と、筒井信隆が地元の支援者との懇親会で「菅政権は退陣しなければならない」と発言する映像の二つが紹介されていた。桜井充は財務副大臣であり、筒井信�呂惑誠緝�大臣である。菅内閣の要衝にある人物で、この二人の造反は大きい。桜井充は中間派だが、昨年の代表選では菅直人支持で動き、全体に与えた影響が小さくなかった。その論功で財務副大臣のポストを射止めている。また、松原仁も2/18に造反の動きを見せたが、先行した原口一博と連携して今週中に「東京維新の会」を旗揚げすると見られている。民主党の内部にいて、菅政権の中枢に近い者ほど、この政権がもはや崩壊を始めている現実を実感しているだろう。2/18に仙谷由人が朝日記者にリークをして、「総理を代えてもいい」と公明党の漆原良夫に打診した件を夕刊１面に載せたが、この日の夜、菅・仙谷・岡田・枝野の4人が公邸に集まって協議している。この緊急会議については情報がほとんど出てないが、常識で考えて、朝日の記事の件が問題にならなかったはずがない。相当に険悪で深刻な議論になったはずだ。仙谷由人が菅直人に面と向かって退陣の決断を迫った可能性もある。仙谷由人が退陣を迫ったということは、もう外濠が埋められたも同然だ。党と内閣の中で菅直人を支える者はいない。
江田五月が2/20に公邸を訪ねた件が象徴的で、もう四面楚歌の状態で、周囲に手勢がないのである。解散カードは江田五月としか相談できないのだ。マスコミ報道より立場はずっと窮地で、政権は煮詰まっていて機能していない。「税と社会保障の一体改革」の4月案など、とても取り纏められる態勢ではなく、菅政権の商標でそんなものを世の中に出したら、世論調査で一気に否定される始末となり、取り下げざるを得なくなる。すなわち、官僚も次の御輿探しに活路を見出すしかないのだ。今後、菅直人が一人で往生際悪く立ち回り、ますます追い詰められ、詰め腹を切らされる結末に向かうと予想される。岡田克也も枝野幸男も次の保身を考えるようになり、菅直人から距離を置いて静観する態度に変わるだろう。菅直人と心中したらキャリアに無駄な傷がつく。現在、マスコミは民主党の政局を「菅執行部vs小沢系」の対立で描き、世論を小沢批判で塗り固め、その小沢批判を菅支持に転化する詐術で世論工作している。が、実際には、党内政局の構図は、「菅直人vsそれ以外」に変異しつつあり、「菅直人vsポスト菅」こそが現在の政局の対立軸なのである。そして、解散はなく、あるのは総辞職と代表選なのだ。「菅直人vsポスト菅」の政争に小沢系が絡んでいるのであり、マニフェストという政策軸の対立の要素を色づけしているのである。マスコミ報道とは裏腹に、国民の中で、マニフェストを遵守せよという声がいかに強いかを思わされる。「国民の生活が第一」の小沢ドクトリンは支持されていて、見直しを国民は許容していない。
朝日新聞は、2/19と2/21の社説で、猛然と小沢一郎と小沢派に向かって牙を剥き、これを最終的に殲滅すべく攻撃を仕掛けている。今日(2/21)の社説は上下二段を貫く大型のもので、本日、国会で「政治とカネ」の集中審議がある時機を計算した上での情報戦だ。もし、この政局で小沢一郎が復権へと進捗する結果に転べば、朝日の政治敗北と権威失墜は目も当てられないものになるだろう。2/19の社説で、朝日は09年マニフェストを「ばら捲き型のマニフェスト」と罵倒し、「財源不足で破綻していることは誰の目にも明らか」で「見直すのは政権与党のむしろ責務だ」と痛烈に糾弾している。「確たる恒久財源の当てもなく、マニフェスト実現のスローガンばかりを繰り返す方がよほど無責任である」とも断罪している。この主張は、マスコミの世界では「正論」であり、山口二郎も異口同音だが、われわれ国民は全く正論として受け入れていない。そして、永田町の中でも、次第に正論ではなくなりつつある。09年マニフェストを「バラマキ」だと罵倒するのは、自公みの野党勢力の言い草で、ジャーナリズムが検証もなしにそういう決めつけをするのは問題だろう。そもそも朝日自体が、政権交代の当時は、子ども手当の創設を含む09年マニフェストを支持する論調が明瞭だったはずで、当時の社説を掘り返せば、証拠はいくらでも見つかるだろう。重要なのは、国民がマニフェストを「財源不足で破綻している」と認めていない点である。財源捻出の努力を菅政権が放棄し、官僚の言いなりに降参したため、マニフェストの実行に必要な資金が工面されてないだけである。
国民は、蓮舫がヤラセ芝居で演じている「事業仕分け」を信用していないのだ。朝日を始めとするマスコミが、どれほど「事業仕分け」を宣伝して、もうこれ以上「無駄」を見つけられないと言い張っても、国民は簡単には騙されないのである。それは嘘なのだ。「事業仕分け」の事務局は「構想日本」の加藤秀樹がやっている。一民間人の加藤秀樹が、どのような手続きで行政刷新会議の事務局長の官職を得ているのか、法律なのか、国会同意人事なのか、閣議決定なのか、その法的根拠は不明だが、誰もが知っているのは、加藤秀樹が財務省のOBであり、丹呉泰健と組んで政府内で小泉改革の下請けをしていた過去である。「構想日本」は財務省のお抱え業者で、小泉改革のために行政制度を弄くる小間使いだった。その加藤秀樹が財務省と一緒にリストアップしているのが、「事業仕分け」の個々の事業であり、財務官僚が全体も細部も仕切っている。16.8兆円が能く捻出されないのは、財務官僚が「事業仕分け」の実務を統轄しているからであり、テレビに撮影される蓮舫の会議など、財務官僚が脚本を書いて演出した仕上げのショーに過ぎない。実質的に、財務省と現業省庁が予算折衝する場の代替に財務官僚が利用していて、マスコミと政治の権力を現業省庁の予算要求封じに使っているだけである。「事業仕分け」は無駄の削減をやってはいない。だから、朝日の言う「財源で破綻したバラマキ・マニフェスト」という決めつけは誤りなのである。本格的な無駄削減や財源捻出の作業は始まっておらず、一般会計と特別会計の統合も踏み込まれていない。
この状態で、「もう無駄はない」とか「財源は出て来ない」とどれほど喚いても、それは官僚の言い分であり、国民がその口上を鵜呑みにすることはできないのである。そもそも、民主党が公約していた「天下りの禁止」も実行されておらず、官僚は悠々と天下りして多額の退職金を懐に入れ、税金の浪費と豪遊を続けているではないか。公約にあった公務員人件費の2割削減も棚上げされたままだ。こうした財源問題が未着手なままで、国民は「マニフェストは破綻した」と認めることはない。朝日とは見解が異なる。そして、この問題は必ず選挙で争点に浮上する。無駄削減と財源捻出を強調し公約する勢力が国民の支持を集め、大量の議席を獲得することだろう。朝日は、同じ2/19の社説で、「小沢氏の処分を早く決め、マニフェストの見直しや社会保障と税の一体改革も決然として進めなければならない」と言い、「マニフェストの見直しを一部先行させ、大胆な予算修正もためらうべきではない」と菅直人に要求している。だが、朝日の注文に従えば、4月の地方戦で失う議席は半分では済まなくなることを菅直人は知っている。何と言っても、政権運営の基礎は国民の支持なのだ。支持率の低迷の原因を、いつまでも小沢一郎の所為に押しつける詭弁は通用しない。そのような作り話を国民は信じない。マスコミは、自分たちの報道が世論になるストラクチャーについて、あまりに楽観視しすぎている。説得力のない報道は、決して世論としてインストールされることはない。反論はネットに上がる。マスコミは政治言論の一部をカバーする存在でしかない。菅直人も、ポスト菅も、朝日の要求には応じないだろう。政治家は、最終的には国民の方を向いて仕事をしなくてはならない。選挙が近づけば尚更のこと。
