株式分析研究会 螢舎

Excelを使用した
株価チャートの作り方(研究会独自の方法)

目次
目次
なぜ別の方法を用いるか?
チャートを作る前の準備
チャートの作り方(研究会独自の方法)
サンプルファイル

なぜ別の方法を用いるか?

前回はExcelを使用したローソク足チャートの作り方を説明しました。 今回は別の方法でもう一度説明します。 初めに、どうしてもう一つの方法を用いるかから説明したいと思います。

文字を読むよりチャートを見た方が早いと思いますので、まずは確認してください。 どんなチャートか一目瞭然です。
独自チャート1
△クリックすると拡大します△

これは2007年2月20日から2007年3月13日までの日経平均株価の日足チャートです。

あるルールを定めて売買判定をします。今回はストキャスティクスを使用しました。 ストキャスティクスの詳しい説明
ここでは100%に近いと買われすぎ、0%に近いと売られすぎを表すとだけ覚えておいてください。 100%に近い状態から指数の下落を確認して「売り」と判断します。

上のチャートでは下部分にある茶色の折れ線がストキャスティクスです。 ローソク足については、定番のローソク足は色が少し違いますね。普通の白と黒に加えて赤と青が混じっています。 この薄青の足が発生した日が売りサインの発生日です。次に薄赤の足が発生した日が買い戻しサイン発生日です。 薄青期間の陽線陰線の区別はしてありませんが、もちろん区別する事も可能です。

通常Excelでチャートを作る際はこのように自由にサインを発生させる事ができませんでした。 今回はこのようなチャートの作り方を知っていただきたいと思います。 上記のように自分で決めた条件が発生した時点で売買のサインを発生させて、 うまくいったら、と想像してみてください。
毎日の値動きが楽しみになってきませんか?

それでは早速解説に入りましょう。

チャートを作る前の準備

まずは上記のような難しいチャートを作る前に、その基本的な作り方を解説します。
前回同様Yahoo!ファイナンスInfoseekマネー等のサイトで 各銘柄の時系列データを取得します。

データの配置も前回と同様です。
 
1 日付 始値 高値 安値 終値 出来高
2 06/5/16 16,509 16,596 16,117 16,158 2,063,320
3 06/5/17 16,259 16,319 16,034 16,308 2,300,250
4 06/5/18 16,089 16,139 15,914 16,087 2,024,880
5 06/5/19 16,041 16,166 15,926 16,155 1,905,000
6 06/5/22 16,255 16,269 15,837 15,858 1,906,460
7 06/5/23 15,722 15,776 15,583 15,599 2,061,110
上記に加えて、右側にさらに次のように項目を追加します。
 
1 出来高   日付 土台値 陽線 陰線 上ヒゲ 下ヒゲ
2 2,063,320              
3 2,300,250              
4 2,024,880              
5 1,905,000              
6 1,906,460              
7 2,061,110              
それぞれの項目に何を入れるか順番に解説していきます。基本的に数式を入力していきますが、 Excelに慣れていない方でもわかるように詳細に解説してあるつもりですが、もしわからない時は遠慮なくご連絡ください。

チャートの作り方(研究会独自の方法)

前章で準備した資料を用いてチャートを作りますが、結論から述べると グラフの種類は「積み上げ棒グラフ」を基本とします。

今の段階では意味がわからなくとも大丈夫です。順番に説明していきます。

まずはH列の「日付」ですが、ここは前回同様yyyy/mm/dd形式の日付からm/dという文字へ 変換します。(理由はチャートの作り方1を参照)
H2セルに入力する数式は前回同様次のとおりです。
=TEXT(A2,"m/d")

続いてI列の「土台値」ですが、土台の意味は何かと言うと、積み上げ棒グラフの基礎となる数値です。 まず土台があり、その上に陽線陰線の実体が乗る、とイメージしてください。チャートが完成したら意味がわかると思います。 I2セルに入力する数式は次のとおりです。
=MIN(B2,E2)
数式の意味は「始値と終値の数値の少ないほうを選択する」です。

続いてJ列の「陽線」ですが、ここは読んで字の如く、陽線の値を計算します。 J2セルに入力する数式は次のとおりです。
=IF(B2<E2,E2-B2,0)
数式の意味は「始値より終値の方が高かったら【終値−始値】を計算する」です。 IF文はあらゆる場面で重宝する数式なので文法をしっかり覚えましょう。
IF(論理式,真の場合,偽の場合)
※真の場合とは論理式に合致した場合、偽の場合は合致しない場合

さらにK列の「陰線」は陽線の逆の式です。
K2セルに入力する数式は次のとおりです。
=IF(B2>E2,B2-E2,0)
数式の意味も「始値より終値の方が低かったら【始値−終値】を計算する」です。

続いてL列の「上ヒゲ」も単純に上ヒゲの値を計算します。
L2セルに入力する数式は次のとおりです。
=C2-MAX(B2,E2)
数式の意味は「高値から始値終値の高い方を引く」です。

最後のM列の「下ヒゲ」も「上ヒゲ」と同様です。
M2セルに入力する数式は次のとおりです。
=MIN(B2,E2)-D2
数式の意味は「始値終値の低い方から安値を引く」です。
ここまで入力したら一旦I2からM2を下行にコピーしてみましょう。 出来上がったら次のようになるはずです。

 
1 出来高   日付 土台値 陽線 陰線 上ヒゲ 下ヒゲ
2 2,063,320   5/16 16,158 0 351 87 41
3 2,300,250   5/17 16,259 49 0 11 225
4 2,024,880   5/18 16,087 0 2 50 173
5 1,905,000   5/19 16,041 114 0 11 115
6 1,906,460   5/22 15,858 0 397 14 21
7 2,061,110   5/23 15,599 0 123 54 16

それではここまでのデータを使用してチャートを作っていきます。

前回同様範囲指定を行います。これも前回同様、出来高を除いた価格だけのチャートを作成します。 セルH1からK7までをドラッグします。今回気をつける事は、上ヒゲ下ヒゲは選択範囲に含めないという事です。
セルの範囲指定

次に画面上部のアイコンの中にグラフウィザードアイコン ←こんなアイコンがありますのでクリックします。もし設定を変更していた等で見当たらない場合はメニューの 挿入(I)からグラフ(H)を使用してください。すると下のような画面が開きます。
グラフウィザード1/4

ここまでは前回と一緒です。次は選択するグラグの種類(C)を株価ではなく、単純な積み上げ棒グラフにします。 画面で説明するとこのようになります。
グラフの形式選択

ここで一旦確認の為に右下の完了ボタンを押してみましょう。次のようなチャートが出来ると思います。
仮チャート

ここから上ヒゲ下ヒゲを付けていきます。まずは土台値の部分を右ダブルクリックしてデータ系列の書式設定画面を開きます。
データ系列の書式設定
上ような画面が開いたらY誤差範囲タブを開き、一番下の指定(C)の−(マイナス)の入力ボックスに下ヒゲのセル範囲を指定します。 今回の例ではM2:M7です。
同様に次は陰線の書式設定を開き、Y誤差範囲タブの指定(C)の+(プラス)の入力ボックスに上ヒゲのセル範囲を指定します。 今回の例ではL2:L7です。

できあがったものが次のグラフです。
仮チャート
まだまだ書式設定は続きます。
次は土台値を消します。消すといってもグラフ上から消去するわけではありません。表示だけを消します。 方法は再び土台値を右ダブルクリックします。今度はパターンタブを選択し、輪郭の設定をなし(N)に、領域の設定もなし(E)にします。 画面で説明すると次のようになります。
データ系列の書式設定
次は陽線と陰線の色を設定します。今の例では陽線が紫で陰線が黄色になっていますのでこれをそれぞれ土台値の設定を変えた時のように 変更します。輪郭は自動設定で問題ありません。色は一般的な陽線を白、陰線を黒とします。 ここまでできたら右の陰線・陽線・土台値の表示も消してしまいましょう。 そうしてできたものが次のチャートになります。随分それらしくなってきました。
データ系列の書式設定

5月18日に注目してみましょう。グラフの範囲が200円刻みで目盛線が引かれているのに2円幅の陰線でほぼ表示されていません。 こうなるとヒゲが上ヒゲなのか下ヒゲなのかわかりにくくなってしまいます。書式設定の変更で対応しましょう。
上ヒゲを右ダブルクリックします。土台値や陽線をダブルクリックした時と似たような画面が開きます。
データ系列の書式設定
上ヒゲとわかりやすく線の色(C)を黒から変更します。今回は赤色にしましょう。 さらにヒゲの先端の横棒は不要ですのでマーカー(M)も右側の単純なものに変更します。同様に下ヒゲは青色に変更します。

これで基本の作り方は終了です。完成したチャートは次のようになりました。
完成チャート
この方法でチャートの作り方1と同様に 90日程度のチャートを作ってみましょう。
この方法の応用で全てのチャートは自作できます。例えば冒頭のローソク足の色を変えて売買サインを発生させる方法は、 今回の陽線・陰線と別にもう一つ積み上げ棒を追加し、 「サイン点灯中は陽線陰線の数値を0にし、追加した実体を表示する」のようにExcelのIF文で数式を追加しておくのです。 サンプルファイルにはその方法も記述しておきますので是非ダウンロードしてみてください。 出来高や移動平均線の追加も簡単です。チャートの作り方1で出来高を追加した方法と同じように追加できます。 元グラフが積上げ棒グラフなので追加した時点では形が崩れますが、追加したデータのグラフの種類を折れ線にするか、 軸を第2軸に変更する事で綺麗なチャートが作れます。

ここまでうまくできたら、次から紹介していく各指標の気に入ったものを選んで うまく売買サインを考えてみてください。
うまくサインを機能させるコツは2〜3のテクニカル指標を同時監視し、同時にサインが発動したものをサインを認識するというものです。 移動平均線でも短期と長期の2つ以上を組み合わせてトレンドを予測するようにテクニカル指標もいくつかの組み合わせでより 強力な分析が可能となります。

サンプルファイル