〔インタビュー・構成/西中賢治〕
「このままではお上がいいと決めたものしか作れなくなる日が来る」
【青少年健全育成条例改正を巡る騒動】'10 年2月、東京都青少年健全育成条例の改正案が都議会に提出された。その内容は、「十八歳未満として表現されていると認識されるもの」=「非実在青少年」の性描写を描いた図書類を販売規制するものだった。6月に否決されたが、同年12月に「非実在青少年」の言葉を削除した修正案が通過した。これにより、東京都によって社会規範に反する性交を不当に賛美しているとみなされた作品は、不健全図書として、一方的に販売規制をかけることが可能となった。
12月の改正案可決に向かう都議会の流れは、あまりにも拙速でした。作家と出版社の主張を聞き取りするなどして、議論を深めた形跡もなく、私自身、改正案の採決は決定的だと新聞紙上で知ったくらいです。そこで、新聞に声明を載せても効果を見込めないと思って、ツイッターで伝えることを思いついたんです。
東京都の青少年健全育成条例改正案にアニメフェア不参加という形で真っ先にNOを唱えたのが、角川書店の井上伸一郎社長(52)だった。井上氏は昨年12月8日、自身のツイッター上に、〈さてこの度、角川書店は来年の東京アニメフェアへの出展を取りやめることにいたしました。マンガ家やアニメ関係者に対しての、都の姿勢に納得がいかないところがありまして〉と書き込んだのだ。条例が可決・成立する1週間前のことだった。井上氏の書き込みが呼び水になった格好で、講談社や集英社などから成る「コミック10社会」も石原慎太郎都知事(78)が実行委員長を務める『東京国際アニメフェア2011』への不参加を決めた。
我が社も「東京国際アニメフェア」の立ち上げ時( '02 年)から実行委員としてコミットしてきたし、海外のバイヤーも訪れますから、出展取りやめは社の利益を損ないます。事前にうちの海外担当に私の行動で販売の機会を失うかもしれない旨を伝えると、彼らは私の方針に賛成してくれました。ツイッターでのつぶやきは、他の出版社に相談したわけではありません。私は黙っていられなかったんです。表現の仕方は、作家や私たち出版人が考え、修正するもので、お上が規制するものでは決してありませんから。
石原慎太郎都知事は、一連の騒動の渦中にあって、改正案に反対するマンガ家に対して「(規制対象となる作品の作者は)ある意味で卑しい仕事をしている」などと発言。「描き手が無言の制約を受け、圧力を感じて描きたいことも描けなくなるということなのだろう。その連中が、そんなことぐらいで描けなくなるなら、そんなものは作家じゃない」とまで言い放った。
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