東レとDaimler、CFRP製自動車部品の合弁会社をドイツに設立---2012年発売の「SLクラス」に採用
東レと独Daimler社は、炭素繊維強化樹脂(CFRP)製自動車部品の製造・販売会社をドイツ・エスリンゲン市に設立する。合弁会社で製造した部品を2012年に発売するDaimler社の乗用車「SLクラス」に供給する。Daimler社以外の自動車メーカーや部品メーカーへの供給や、自動車以外の用途開拓の可能性も探っていく。
両社は、2010年3月にCFRP製部品の共同開発契約を締結していた(Tech-On!の関連記事1)。新会社では、東レが開発した「ハイサイクルRTM(Resin Transfer Molding)成形技術」をベースに、東レの材料技術、Daimler社の部品設計ノウハウ、自動化技術などを盛り込み、CFRP製部品を高効率・低コストで量産できる体制の構築を目指す。
第1弾の量産部品として、2012年に発売するSLクラスにトランクリッド・インナーシェルを供給する。CFRP製にすることで、鋼製部品を使用した場合に比べて45%の軽量化を実現できるという。
サイクルタイムは5分以内
ハイサイクルRTM成形技術は、RTM法を大幅に改良したもの(Tech-On!の関連記事2、関連記事3)。炭素繊維織物(クロス)を裁断して細かなパーツとし、それらを張り合わせた上でプレス機によって成形し「プリフォーム」を造る。このプリフォームを型内に設置し、型を閉じてエポキシ樹脂を注入。エポキシ樹脂を炭素繊維クロスに含浸させることで複合材料とする。作業の自動化、マトリックス樹脂の特性改良、樹脂注入方法の工夫などにより、現在では5分以内のサイクルタイムを実現している。
Daimler社メルセデス・ベンツ乗用車生産・購買部門バイスプレジデントのRainer Genes氏によれば、現状でもSLクラスに供給できる程度のサイクルタイムは実現しているが、「Cクラス」や「Eクラス」といったより生産台数の多い車種に展開するには、サイクルタイムの一層の短縮が不可欠だという。今後、サイクルタイムを縮める上では、Daimler社の生産現場における自動化技術を応用していく方針だ。
新会社の出資比率は、東レが50.1%、Daimler社が44.9%。残りの5.0%は、CFRP製部品メーカーで、東レが21%を出資する独ACE社が引き受ける。今後の設備投資などについても出資比率に応じて費用を分担する。新会社の社名は未定である。
Daimler社が出資することもあり、新会社は「まずは、Daimlerへの部品供給を優先する」(Genes氏)。だが、自動車以外にもさまざまな分野でCFRPへの期待が高まっているため、いずれは自動車以外の顧客も積極的に開拓していく予定だ。さらに「新会社からDaimler社以外の自動車メーカーへの供給もあり得る」(東レ代表取締役副社長で複合材料事業本部長の小泉愼一氏)としており、東レ側には将来的に欧州のCFRP製部品の供給拠点にしたいという期待がありそうだ。
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