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支局長からの手紙:頭頸部外科知って /栃木

 1月下旬、宇都宮市で開かれた第21回日本頭頸部(とうけいぶ)外科学会の学術総会で、シンポジウムの基調講演を務めました。これまでほぼ20年間、医学・医療を取材してきた縁です。

 頭頸部外科という診療科は、あまりなじみがないでしょう。実際、毎日新聞のデータベースで過去24年間の記事を検索したところ、小児科は1万223件、産婦人科も7205件ありましたが、頭頸部外科はわずか26件でした。

 首から上の顔のうち、脳と目以外が対象で、耳鼻咽喉科の外科部門です。中高年に多い喉頭がんや舌がんなどの手術を担当していますが、社会の認知度は低いです。さらに外科系の診療科は「3K」とされ勤務がきついため、深刻な医師不足に陥っています。シンポジウムは自分たち頭頸部外科の医師が社会にどうみられているかを知ったうえで、現状を打開するための第一歩にしようという狙いです。

 テーマは「社会の眼から見た頭頸部外科」。私は報道の立場から、同じように医師不足が深刻な産婦人科や小児科が、社会に訴え改善を求めてきた経緯を紹介しました。

 一方、第一線で手術を担当する医師は、がん治療のため顔の一部を切除し、体の別の部分から筋肉を採取して、顔を再建する手術の様子をスライドで紹介。10時間以上かかる手術が終わり生命の危険が去っても、容ぼうの変化が患者の想像以上だと満足してもらえなかったり、手術後、社会との接触を断ってしまう方もいるという厳しい現実を打ち明けました。

 小児科や産婦人科が扱うのは、子どもや赤ちゃんです。このため、社会も注目し医師不足は改善の方向です。これに対し頭頸部外科の患者は高齢者に多く、この部分のがんで亡くなる人は乳がんや婦人科のがんとほぼ同数の年間8000人以上ですが、患者が表に出たがらない傾向があるようです。埋もれた存在になりがちな頭頸部外科。ぜひ、知ってほしいと思います。【宇都宮支局長・吉川学】

毎日新聞 2011年2月21日 地方版

 
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