2011年2月17日15時4分
私も「だてマスク」を着けています――。風邪でも花粉症でもないのに素顔を隠すためのマスクを年中手放せない。そんな中高生たちの姿を朝刊の連載「いま子どもたちは――よそおう」で取り上げたところ、大人からも共感の声が相次いだ。一方で、だてマスクを着けるわが子にどう向き合うか、悩む保護者も少なくない。
埼玉県春日部市の主婦の女性(49)は、外出時に「だてマスク」を着け、帽子を目深にかぶる。
手放せなくなったのは数年前。中学生だった長男が、同級生やその保護者らから「空気の読めない子」と扱われるようになった頃だった。近所でふいに「○○君のお母さん」と声をかけられるたび、「息子が何かした?」とビクッとし、「子どもとセットで見る人には本来の私がわかってもらえない」と悩んだ。
マスクをしていると、外で知人と行き会ったとき、相手より先に気づくことができる。自分を理解してくれる人には、マスクを外してあいさつ。会いたくない人だったら相手に気づかれず、嫌な顔を見せずにやり過ごせる。「そこまでして近所で『いい人』を演じているんでしょうね」
1月19日付朝刊の記事では「先生に怒られているときマスクをしていると聞き流せる」「顔を隠せて視線にさらされない安心感がある」という中高生の声を紹介した。反響約100通のうちで目立ったのは、大人からの告白だ。
「記事で仲間がいることがわかって、ホッとしました」というのは、埼玉県戸田市の会社員男性(52)。通勤時など外では必ず使い捨てマスクをする。自信のない口元や、夕方になると伸びてくるひげを隠せて、安心するという。
京都市のパート女性(51)も、顔に視線を感じたくなくて、鼻からあごまでぴったり覆うタイプを着けている。一昨年の新型インフルエンザ流行が「後ろめたさをごまかす絶好の契機だった」。マスクをするようになってほとんど化粧をしなくなった。着け忘れたらあわてて薬店を探す。