きょうのコラム「時鐘」 2011年2月21日

 金沢の繁華街の「ミスド」と「スタバ」が店じまいをするという。若者たちは、ミスタードーナツ、スターバックスコーヒーという長い名前を、いとも軽やかに縮める

略して呼ぶのは、今に始まった事ではない。黒部川第4発電所ダムが「黒ヨン」。清水の次郎長親分は、山本次郎八の養子・長五郎という素性を乱暴に縮めた呼び名だそうな。縮めると呼びやすいが、聞いただけでは、意味がなかなかつかめない

政治倫理審査会は「政倫審」。開く・開かぬ。出ろ・出ない、ともめ続け、揚げ句に党内で造反騒ぎである。「リンリ、リンリと鈴虫が鳴いている」と皮肉ったのは、確か中曽根元首相。倫理を声高に叫ぶのは大事だが、叫ぶだけでは事は収まらない

負けずに騒々しいのが、大相撲の八百長問題。そういえば、「八百長」も八百屋の店主・長兵衛を縮めた呼び名である。碁仲間の親方にわざと負けてご機嫌を取り結び、相撲茶屋の利権などの甘い汁にありついたという

政治家と倫理、相撲取りと八百長の根絶。二つ並べて見ると、どれも先行きが平たんな道でないのが容易に見て取れる。