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【第1話 絶対にすべる女】

テーマ:ブログ
2011年02月21日(月) 00時21分37秒

ザザーザザー
うち寄せる波の音が聞こえる。
気が付くと高橋みなみは砂浜に座っていた。目の前には広大な海。
「いやいやいや、嘘でしょ?これがゲーム?完全に本物だって」


砂を触る。本物の砂としか思えない。
試しに海の水にも触ってみる。冷たいと感じる。指をなめると塩辛い。
自分のほっぺをつねってみた。ちゃんと痛い。
「すげーなー。すげーけど痛いのはやだなぁ」


そこで、ポケットに携帯みたいな装置があることに気が付く。
小さなモニタとボタンが3つ。
ボタンにはそれぞれ「地図」「プレーヤー」「能力」と記されていた。


「地図」ボタンを押すと、モニタに地図が表示された。
海に浮かぶ孤島。その島の全体図。島はたくさんのエリアに分けられていた。
数えないけどたぶん48なんだろう。左端エリアの海岸付近に赤い点が1つ。
「この赤いのが今いる場所ってことね」


次に「プレーヤー」ボタンを押す。メンバーの名前が一覧で表示された。
画面上部には48/48とある。
「はいはい、これをどんどん減らして1/48を目指せと」


そして最後に、一番気になる「能力」というボタンを押した。


『あなたの能力は《すべる》です』
モニタの表示をみて、高橋みなみはしばらく固まった。


「はーーー!!んだそりゃ!!すべったことなんてないっつの!!」
そして1人でわめきちらし、ガクンと頭を垂らした。
「・・・終わった。こんな能力でどう戦えと」


しかし説明には、まだ続きがあった。
『様々ものをすべったり、すべらせたりできます。色々試してみましょう』


「試すって?」
高橋みなみは疑心暗鬼しつつも「すべる」と念じて、足元の砂に触れた。
その瞬間、ツルリと指が滑ったのである。
「え?」
もう一度、今度は立ち上がって足で砂を弾く。
するとまるでアイススケートの様に、砂を駆け滑ることができた。


「アハハ楽し、これ面白いかも」
砂浜の向こうに崖が見える。
「よーしあっちの崖まで滑ってみるか」


絶対にすべる女・高橋みなみ
調子に乗って滑り始めた彼女は、いつのまにか隣のエリアに入り、
この後、48人の中で誰よりも早く、他のメンバーと遭遇するのである。


同時刻、無人島の48エリアに分けられた他の者達も、
それぞれの能力を確認し、一喜一憂していた。


バゴォ!!!!大きな岩がコナゴナに砕ける。
その破壊力に宮澤佐江は目を輝かせた。
「いいねぇ。こうゆう分かりやすいの」
力を込めた右腕が気で満ちている。
気を溜めて攻撃力を何倍にも増幅できる能力《元気》であった。
「おーし!誰か強ぇ奴と闘りてぇな!!」


昨年、ジャンケン選抜で1位に輝いた内田眞由美。
その能力は空手経験者の彼女にとってうってつけとも言えた。
『あなたの能力は《ジャン拳》です』
『グー・チョキ・パー。強力な3連続必殺技が使用できます』
試しにその場で一人組手を行なう。そしてその強さに驚いた。
「ほんと必殺じゃん!これなら勝てる。連覇してセンターだ!!」
チャンスの順番がもう一度巡ってきた。


AKB48の中でも筋肉自慢を誇り、
ファン予想でも大島・前田・篠田に続く堂々の4位、
優勝候補の一角とされていた秋元才加は、非情に微妙な顔をしていた。
『あなたの能力は《爆肉剛体》です』
ものすごく嫌な予感がする。
「これ以上マッチョキャラにさせる気かい…」


これらは主に強化系の能力を得た者達。
また、種類がまったく異なる属性系の能力を得た者もいる。


『あなたの能力は《火》です。カサイだけに』
「チユウ!ダジェレかよ!」
文句を言いつつも河西智美は、火の能力を大層お気に召した。
手から燃え盛る炎。もちろん自分は熱くない。
「喧嘩は嫌だったけど、こうゆう能力なら燃えてくるかも~」


藤江れいなは日頃から、静電気を起こすことを特技としていた。
だから今回の特殊能力が《電気》と分かっても、さほど驚きはしなかった。
バチバチバチ!!
だが実際に使用して、それが静電気などとはレベルが違うことを思い知る。
「すご…。選抜入り、いけるかも」


北原里英はふわふわとしていた。
白い煙をベットの形にして寝転んでいる。その特殊能力は《雲》である。
「へっへ~。楽チン楽チン」
これから壮絶なバトルが始まるとも知らず、束の間の休息を満喫していた。


『ブラックなあなたの能力はもちろん《闇》です』
「・・・・・」
柏木由紀は無言で闇に消えた。


さらに強化系でも属性系でも無い
もっと変則的な能力を得たメンバーもいる。


「覚醒?なにそれ~?」
小嶋陽菜は首を傾げて考える。
意味がさっぱりわからなかった。その恐るべき能力の。


「プハー」
誰もいない空間から突如、小森美果が姿を見せる。
(本当に消えた)
その能力は、息を止めている間、姿を消せる《透明》であった。
(うん、ずっと隠れてよっと)


目を閉じると島の全体図が浮かび、48人の名前が島中にちらばっている。
それで何処に誰がいるのか一発で把握できた。その能力《地図》。
全く戦闘には向かない能力である。
しかしサバイバルという意味では、使い方次第で絶大な効果を発揮する。
「私向きだわこれ」
峯岸みなみは考える。優勝するための策を。
とりあえずは自分のいるエリアの近辺に誰がいるのかを探ってみた。
中塚智実、指原莉乃、小嶋陽菜、中田ちさと、佐藤夏希、前田敦子・・・
(うわ、あっちゃん近いじゃん。危険、危険)
そのとき峯岸みなみはある異変に気付いた。
前田敦子と小嶋陽菜を除くこの近辺にいるメンバー、
その全員が何故かある一点に向かって動き始めたのである。
(ただの偶然?それとも・・・?)
その一点に浮かぶ名前。
指原莉乃。


【第1話 終】

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【プロローグ】

テーマ:ブログ
2011年02月20日(日) 23時29分43秒

秋葉原。
いつもの街が今日は違ってみえる。
前田敦子は大きく深呼吸して、空を見上げた。
(選挙、じゃんけん、色々やってきたけど…まだ慣れないな)
一大イベント当日の朝という緊張感。前田敦子といえどそれは変わらない。


「あっちゃん!おはよ」
劇場の手前で、高橋みなみが手を振っていた。
「おはよう。たかみな。いよいよだね」
「本当にいよいよだよー。てかまだ実感わかないよ。皆と戦うなんてさ」


-戦う-


女の子、しかもアイドルの彼女達にとって、縁の遠い言葉であった。


「あっちゃん。やる気んなった?」
「さぁ、わかんないよ」
「ははっ、だよねー」
「でも・・・」
「でも?」
「優子に2度は負けられないかな、最低でも」
高橋みなみは苦笑するしかなかった。
(それは最低じゃなくて、最高っつーの)



始まりは1ヶ月前、2011年初夏。


アリーナ公演最終日に劇場支配人から告げられたサプライズ。
ほとんどのメンバーの脳裏には「第3回選抜総選挙」が浮かんでいたが、
発表の衝撃は、その予想をはるかに上回るものであった。


「バトル選抜」
内容はチームAチームKチームBの計48人によるバトルロワイヤルであった。


当然、全員が騒ぎ出す。
代表するかの様に、高橋みなみが大声で訴えた。


「ちょ、ちょっとー!かよわい女の子に殺し合いさせる気っすか!?」
たかみなの「かよわい女の子」というフレーズに、
前田敦子や板野友美らはツッコミを入れたかったが、それどころじゃないので辞めた。
そのとき、混沌とするステージ上に
AKB48総合プロデューサー秋元康が姿を見せたのである。


「心配いらない。ゲーム上でのバトルだよ」
「ゲ、ゲーム??」
秋元康の合図により、ステージ上の巨大モニタに、
今回のゲームの概要が表示された。


画面上にそびえたつのは最新系バーチャルゲームマシン。
プレイヤーはバーチャル空間を本当にその場にいるかの如く体感できる。
まだ公に発表もされていない超最新鋭ゲームであった。
その開発チームとスポンサー関係が結ばれ、このイベントは実現したのである。
AKB48が戦いあう。今現在これ以上の大々的な宣伝効果は日本に存在しない。


モニタ上で次々表示される解説に、騒いでいたメンバーも徐々に理解してきた。
(こりゃ、マジだ)


「ゲーム内では、それぞれの身体能力+潜在能力+人気=戦闘力となるそうだ」
「ダーメ!人気なんて入れちゃ、あっちゃんや優子に絶対勝てないじゃん!」
そこで大きく抗議したのは『年中無休の反抗期』峯岸みなみである。


「いい反論だ」と言わんばかりに秋元康は笑って、答えた。
「そうとは限らない。よりバトルを面白くする為に、それぞれに特殊能力が付く。
 能力の使い方次第では、戦闘力が上の相手も攻略することが可能だ」


特殊能力という言葉にまた騒ぎ出す一同。
「魔法少女」と呟きながら渡辺麻友の目がキラーンと輝いた。


「最後まで勝ち残った優勝者がセンター!上位10名が選抜入り!
 バトル選抜!開催は1ヵ月後!!健闘を祈る!!」


それが1ヶ月前の出来事で。
そのニュースは瞬く間に日本全土を駆け巡ったのである。


発表後すぐ発売されたCDには、バトル選抜の上位予想用紙が封入。
上位10名を見事的中させたファンには、
その上位10名と一緒に行くPV撮影旅行など無茶苦茶な特典。
天文学的な確率の的中を目指し、そのCDは売れに売れた。
学校や職場などで「誰が強いのか」議論はなされ、バトル選抜は社会現象と化す。
投票用紙には48名以外に、何故か松井珠理奈と松井玲奈の名があった。
それがさらに議論を呼んだのである。


そんな激動の1ヶ月が過ぎ、いよいよ迎えた当日。
リアルタイム中継される全国各地の映画館、アリーナには、
押し寄せたファンで長蛇の列ができていた。


高橋みなみ、前田敦子をはじめ劇場に集まった48名は、
ロケバスでゲームマシンの設置所に移動していた。
いつものにぎやかな雰囲気と違う。
これからみんなと戦う。
一体どーなってしまうのか?誰にも分からない。


「な~に笑ってんだよ、佐江」
大島優子は、隣の席に座る宮澤佐江がさっきからニヤニヤしてることを指摘した。
「だってさ、楽しみで楽しみで」
「負けるのに?」
「はぁ!?負けねーよ!!」
「48人中47人は負けるんだよ。つまり佐江は負けるってことじゃん」
「自分が勝つってかコノヤロー。みとけよー。絶対倒す!」
「かかってきなさい」
まるで緊張のかけらも見せず、大島優子はあくびを噛み殺した。
なかには、こうゆう例外的な者もいる。


目的地は巨大な施設であった。
およそ日常生活では立ち寄らない空間。
バスを降りて、施設内を進むと大きな部屋に出た。


「東京にこんな場所あったんだね~」
「未来のゲーセンだ」
小嶋陽奈と篠田麻里子がそれぞれマイペースに感想を述べる。


部屋の中央に1ヶ月前にモニタで見た最新系バーチャルゲームマシン。
それを囲むようにコクピットの様な小型マシンが48台並んでいる。
マシンには名前が書かれた紙が張られていた。


「これに乗れってことね。あった。高橋みなみ」
高橋みなみはマシンに乗り込んだ。内装も本格的だ。正直凄い。
この凄さを分かち合おうと、一旦外に出て前田敦子を探す。
すると彼女は後方で大島優子と何か話していた。


大島優子と前田敦子。総選挙1位と2位。
今回のバトル選抜ファン上位予想でも彼女達は1位と2位であった。
そこで高橋は気付いた。今2人を見ているのが自分だけでは無いことに。
あの2人の首をとって大金星を当てようとする者は少なくない。
(私は…どうなんだろう。あの2人より上に…)


話を終えた大島と前田がマシンに乗り込み、他の者もマシンに乗り、
ずっとはしゃいでた渡辺麻友が最後に乗り込んで、48人がスタンバイOK。


こうして、バトル選抜はSTARTした!!!!

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