政治【産経抄】2月20日2011.2.20 02:51

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【産経抄】
2月20日

2011.2.20 02:51

 デービッド・アッテンボロー氏の『鳥たちの私生活』によれば、アホウドリの類は最も広い行動圏を持つ海鳥である。海面でイカなどを捕らえながら、何カ月も飛び続けることができる。眠るときも飛んだままという卓越した滑空技術を持っているのだそうだ。

 ▼ところがこの海のスグレモノも陸上ではさえない。子育ての時期は島などで過ごさなければならないのだが、歩くのは苦手で飛び立つのもスムーズにはいかない。モタモタしている間に簡単に捕まるから、こんなありがたくない名前をつけられてしまった。

 ▼そのアホウドリの島を移す計画が進んでいる。これまでの繁殖地、伊豆諸島の鳥島は火山島で、大噴火が起きると不器用な鳥たちは絶滅する恐れがある。そこで人の手でヒナたちを小笠原諸島の聟(むこ)島に移送、ここを「母なる島」にしようとしているのだ。

 ▼その結果、今月10日には3年前に巣立った10羽のうち1羽が聟島に帰っているのが確認された。お引っ越し成功に一歩前進できたという。絶滅危惧種を守ろうという関係者の努力には頭が下がるが、どこか身につまされるような気もする。

 ▼日本人は鎖国などの時期を除き、海洋民族として生きてきた。だがその海での活躍を可能としてきた島々が危うくなってきているからだ。ロシアに奪われた北方領土は返ってこない。尖閣諸島やガス田のある東シナ海は中国の脅威にさらされ、本土にもジワリと包囲網が感じられる。

 ▼その上、南極海での調査捕鯨も、テロリスト同様の反捕鯨団体の妨害で中止に追い込まれた。アホウドリではないが「母なる島」が盤石であってこそ海に向かって雄飛できる。もう一度「海の守り」を考え直すしかない。

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