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[科学]ニュース トピック:主張
【主張】若田さん船長に 和の心で大きな夢描こう
サッカーに例えれば、各国スター選手による世界選抜チームの主将を任されるようなものだろうか。宇宙飛行士の若田光一さんが国際宇宙ステーション(ISS)で船長を務めることになった。日本人が有人宇宙活動の分野でリーダーとして認められたことを象徴する明るいニュースだ。
47歳の若田さんはこれまでに3回、宇宙飛行を経験している。2009(平成21)年には日本人で初めてISSに長期滞在し、日本の実験棟「きぼう」を完成させた。ロボットアームのスペシャリストとして、米航空宇宙局(NASA)でも高く評価され、人望も厚い。船長起用は、プレーヤーとしての高い技術とともに、リーダーシップや協調性など指揮官としての資質が評価されたものだ。
若田船長の誕生を喜ぶ一方、冷静に見つめなければならない課題もある。それはISS計画が大きな転換点を迎えていることだ。
ほぼ四半世紀をかけたサッカー場規模の巨大な宇宙構造物は今年中に完成し、その中心的役割を果たしてきた米国のスペースシャトルは引退する。ISSを完成させることが共通目標だった参加国は、これから新たな計画の意義を見いださなければならない。
米国が有人火星探査計画を打ち出すなど、宇宙開発におけるISSの比重が軽くなっていくことは避けられない。日本は年間400億円をISSに拠出しているが、「それに見合うほどの成果は見込めない」といった指摘もある。有人活動を含めた今後の宇宙開発の戦略も定まっていない。
ISSの老朽化が進み、日本も次の目標を打ち出せていない中、現場のエースとしてフィールドに立つ若田さんは「日本人の和の心を大切にし、チームをまとめていきたい」と意気込みを語った。
船長としての任務を完璧に果たしてくれることは、これまでの実績からも間違いないだろう。その上で、ISS計画の新しい意義とともに、日本の宇宙開発の方向性を示すような活躍を、若田船長には期待したい。
費用に見合う成果を挙げることも大事だ。しかし、宇宙開発の、とりわけ有人活動の最大の原動力は「人類の夢」だ。船長を務めるのは2カ月と短いが、思う存分に「和の心」と「若田色」を発揮してもらいたい。国民は大きな夢を見たいと思っている。
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