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TOYOTA再発見
【ものづくりの心】
(19)「考える人」を育てる
2011年02月09日
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トヨタ自動車工業が1970年代に作成したトヨタ生産方式の教材 |
昨年9月、中部産業連盟が約30年前から続けているトヨタ生産方式のセミナーが、名古屋市であった。講演したのは、トヨタ自動車の常務役員、三浦憲二。社内でこの生産方式の徹底を指揮していた生産調査部(現生産調査室)の元部長だ。
「トヨタ生産方式の本質は人材育成にある。人を強くすることが、結果的に会社を強くする」。約300人の受講生を前に、三浦は力説した。
トヨタ生産方式は、作業者に高い次元の働きを求める。1人が複数の工程を担い、ムダなく作業できるように知恵を絞る。極限まで効率を追求した作業の途中でミスが見つかれば、ちゅうちょなく生産ラインを止める。なぜミスが生じたのか、「なぜ」を繰り返して原因を突き止め、再びミスが生じないようにカイゼンを加える。
ノンフィクション作家の鎌田慧は、トヨタの期間工として半年間働いた経験をもとに1973年、「自動車絶望工場」を出版した。ベルトコンベヤーの流れ作業の中で疎外される人間性を描き、大きな反響を呼んだ鎌田の代表作だ。しかし、大野耐一がめざしたのは「人間疎外」ではない。むしろ人間本位の考えるものづくりだった。
大野をよく知る岩月伸郎(デンソー顧問)は「大野さんは人間の能力に強い信頼感を持っていた」と証言する。
トヨタ生産方式は完成することがない。なぜなら、カイゼンに終わりがないからだ。だからこそ、人材育成が重要になる。もっとも、人は流されやすい。トヨタといえども、すぐにムダを抱え込む危険をはらむ。その現実がいま、トヨタの足元に厳然としてある。=敬称略
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