ＴＯＹＯＴＡ再発見

（１８）まねでは根付かない

2011年02月08日

大野耐一の墓。大野を慕う企業人らがよく訪れる＝愛知県刈谷市の長遠寺

　大野耐一の墓は、愛知県刈谷市の長遠寺にある。いつも花が供えられ、訪れる人が絶えないことをうかがわせる。
　墓が取り持った縁がある。
　トヨタ自動車会長の張富士夫は２００７年春、旧知の近藤哲夫に電話をかけた。「大野さんの墓参りまでしてもらっては、ノーと言えんわ」
　墓参りしていたのは南鏞。韓国家電大手、ＬＧ電子の最高経営責任者（ＣＥＯ）だ。「トヨタ生産方式を教えてくれ」と頼まれていた。
　近藤は関東自動車工業の元部長で、いまはコンサルタント会社の会長。かつて２人は、大野のもとで関東自動車へのトヨタ生産方式導入を進めた。張は南の依頼を近藤に託した。
　韓国でも「かんばん」や「アンドン」の手法は知られている。ＬＧも採り入れたが、うまく行っていなかった。
　それもそのはずだ。エアコンなどの家電製品は、季節によって販売動向が大きく変わる。であれば、ジャスト・イン・タイムを実現する方法も、車づくりとはおのずと違う。自分に合ったかたちに変え、つねにカイゼンしていく。それがトヨタ生産方式だ。
　近藤はすぐに韓国へ飛んだ。工場で「テクニックではなく、考え方を身につけなければダメだ」と指導した。成果は２年ほどしてあらわれ始めた。製品が完成するまでにかかる時間が、３分の１に縮まった。
　いまも近藤は韓国をよく訪ねるが、言うことは同じだ。「いつまでもまねではダメ。トヨタ生産方式の考え方を基礎に、ＬＧのＤＮＡを生かした手法を自分たちでつくれ」＝敬称略

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