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社説:相撲界組織改革 八百長根絶が前提だ

 大相撲が野球賭博事件で大揺れしていた昨年7月、日本相撲協会の改革を目指して設置された「ガバナンス(組織の統治)の整備に関する独立委員会」(奥島孝康座長)が17日、協会改革案を答申した。

 A4判で50ページ近くに及ぶ答申書につけられたタイトルは「日本相撲協会の公益法人化へ向けての改善策」。2年後の11月に申請期限が迫った新しい公益法人制度への移行をにらみ、認可に不可欠な組織改革を盛り込んだ。

 協会のあり方については従来の協会の「常識」にとらわれず、公益法人としてあるべき組織図を描き出した。相撲部屋の師匠と協会理事の兼任を禁じ、理事会、評議員会のメンバーの半数前後を外部の有識者とするなど大幅な組織改革を求めた。現在50ある相撲部屋を30程度に削減することも提案している。また、年寄名跡がしばしば高額な金銭で売り買いされていることについては「公益法人としてふさわしくない」と切り捨て、売買の禁止を強く求めた。

 大幅に既得権益の縮小を迫られる相撲部屋の親方衆にとって、簡単には受け入れ難い部分も少なくないと予想される。だが、協会が公益法人格の取得に失敗すると、両国国技館の土地、建物をはじめ協会が保有する財産の放棄を迫られる。

 外部の有識者で作る独立委員会が新公益法人への移行という「錦の御旗(みはた)」を掲げ、協会に全面的な組織改革を求めたという印象が強い。このところ相次いだ大相撲を取り巻く不祥事が、協会に対してより厳しい要求を突き付ける背景になったことは間違いないが、読みようによっては「こうすれば大相撲は生き残ることができる」という愛情あふれる処方箋とも受けとれる。

 ただし今回の答申の原案が「八百長メール」の発覚前にまとめられたため、八百長相撲問題には言及していない。八百長相撲は大相撲の根幹を揺るがす不正行為だ。八百長相撲に対する厳罰規定を作り、その徹底的な排除と具体的な再発防止策を協会が示さない限り、相撲協会の「公益法人化」は絵空事に終わる。

 いうまでもなく大相撲は日本国民共有の文化財であり財産である。常人離れした厳しい稽古(けいこ)で心と肉体を鍛え上げ、土俵上で技を駆使して相手に立ち向かう。その姿が日本人の心を打ち、守るべき日本の伝統として大相撲を愛し、支えてきた。

 一握りの力士出身者が協会を切り盛りし、外部の声を遮断している間に八百長相撲が巣くってしまった。大相撲も時代の要請に応える組織に変わらなければ生き残ることはできない。それこそが全国の相撲ファンの期待に応える唯一の道だ。

毎日新聞 2011年2月20日 2時31分

 

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