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急膨張する「グルーポン」の危うさ

2011年2月号 連載 [IT万華鏡]

ネット業界の初夢は目覚めの悪いものだった。2010年の業界を席巻した共同購入クーポンサイトの最大手グルーポン・ジャパンに、お節料理の購入者から苦情が殺到し、岡崎トミ子消費者行政担当相が「実際にそうであれば景品表示法違反」と発言する騒動となったのだ。

昨年11月末、グルーポンは2万1千円相当の「謹製おせち」を半額で約500セット販売した。だが、届いた商品が見本と品数も見た目もあまりに異なるとのクレームが続出。極めて杜撰な運営実態が露呈した。製造・販売元である外食文化研究所の水口憲治代表は辞任を表明。グルーポンは購入者に全額の返金とお詫び商品を送ることで事態の収拾を図ったものの、共同購入クーポンに対する不信は一気に広がった。

問題の核心は「出来ないものを無理に行った」と釈明する外食文化研究所の間抜けさよりも、急成長する市場でシェアを伸ばそうと躍起のグルーポンのビジネスモデルにある。

米グルーポンは昨年12月に米グーグルによる60億ドルの買収提案を“蹴った”ことで日本でも評判になった。共同購入クーポンは、期間内に決められた成立枚数に達した場合だけクーポンを販売する仕組み。国内市場の昨年11月の推定総売上高は14億7千万円。サービスが本格化した昨年4月以降、市場規模は倍々ゲームで拡大している(ルクサ調べ)。

ベンチャー企業が雨後の筍のように類似サイトを立ち上げ、総数は今や150を超えた。ネット業界関係者は「参入障壁が低く、すでにレッドオーシャン(血で血を洗う乱戦図)。生き残るには急拡大していくしかない」と言う。グルーポンの野田臣吾執行役員は、昨年12月に「社員は600人を超えた。毎週50~60人の社員が新しく入ってくる」と誇らしげに語っているが、にわか仕込みの営業部隊が無理な営業をしているのではないかとの見方も多い。

グルーポン・ジャパンは、もともとパクレゼルヴと独立系VCのインフィニティ・ベンチャーズLLPが出資して立ち上げたクーポッドを米グルーポンが買収して社名変更したものだ。そのパクレゼルヴは、経営陣にあの光通信の出身者が名を連ねている。ネットバブル当時に大量採用と強引な営業手法で世間を賑わせた光通信の姿を想起させ、政府内でも「メンツが悪い」「景品表示法違反のど真ん中ゾーン」と手加減せず消費者庁に取り締まらせる構えだ。

グルーポンに掲載実績のある美容関係者は「確認なく販売枚数を勝手に上乗せされた」と証言する。この美容施設は対応できる1日当たりの顧客数に限りがあり、販売直後から顧客対応に追われたという。店舗や施設側のキャパシティーを超えた販売に踏み切るグルーポンの体質にも非があることは間違いなさそうだ。

さらに輪をかけて強引なのが米グルーポンである。昨年12月、日本法人を管轄する欧州のトップが来日した際には、主要なメディアに対して広告出稿を直接取引にしたいと通達し、電通を怒らせた。すでに取引のあるネット広告代理店に対しても、大量の広告出稿と引き換えにマージンをゼロにすることを要求している模様だ。現在、グルーポンの広告出稿量は月間20億円近いとみられ、各社は頭を悩ませているという。ネット広告関係者は「マージンがゼロでも、大量の出稿があれば媒体社からのキックバックが入るので、そのほうが旨みがある」と言う。

実はグーグルの買収断念は、グルーポンの成長性や運営内容に疑問を抱いたからだと言われる。豊富な資金を武器に、強気な攻勢をかけるグルーポンだが、不祥事が続けばメッキが剥げる可能性がある。

   



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