菅政権は、口蹄疫(こうていえき)や高病原性鳥インフルエンザなどへの対応を定めた家畜伝染病予防法(家伝法)の改正案を今国会に提出する。発生の通報が遅れるなどした農家に、家畜の殺処分の補償をしないなどの罰則を新設するほか、感染拡大防止策として発生農場の周囲の健康な牛豚の殺処分や、鳥インフルの原因とされる野鳥の生息地周辺の消毒を法制化する。
1951年制定の家伝法の大きな改正は97年以来。昨年、宮崎県で発生した口蹄疫や、今季の鳥インフルの流行の教訓を踏まえた。自民党も改正案に賛成する方向だ。
改正案では「家畜伝染病の発生、蔓延(まんえん)を防止するために必要な措置を講じなかった者には、手当金の全部または一部を交付しない」と規定した。宮崎県での口蹄疫の場合、農家の通報遅れが流行の拡大を許したとされる。
発生農場や養鶏場ではすべての家畜が殺処分されるが、通報遅れの農家には処分家畜の補償にあたる手当金を交付しないか、削減する。この罰則の対象には、消毒など適切な衛生管理や予防措置を怠った農家も含める。一方で、現行法で手当金が家畜の評価額の5分の4とされたことが通報や処分の遅れにつながっているとの指摘を踏まえ、手当金を評価額全額に引き上げる方向で検討する。
具体的な流行防止策としては、口蹄疫の場合、「急速かつ広範囲の蔓延を防止するためにやむを得ないときは、健康な家畜の殺処分を行える」と定める。宮崎県のケースでは、家伝法に規定がなかったために特別措置法を制定し、発生農場から半径10キロ以内のすべての牛豚を殺処分した。法改正でこうした予防的殺処分を常時、可能にする。
さらに、鳥インフルウイルスの運び役とされる野鳥を念頭に、「家畜以外の動物の感染が発見され、家畜に伝染する恐れが高いときは、消毒を行うことができる」と規定。感染野鳥の生息地周辺の道路や土地、通行車両などの消毒のほか、人や車の通行制限を知事の権限でできるようにする。鹿児島県出水(いずみ)市では昨年12月、特別天然記念物・ナベヅルの感染が発覚。飛来地は養鶏地帯のそばだったが、自治体は法の裏付けがないため積極的な防疫措置がとれず、1月には養鶏場に感染が広まった。
農水省は改正案の要綱をまとめ、細部の詰めの作業に入っている。罰則の新設や予防的殺処分の法制化など改正案の主な項目について、民主、自民の両党はおおむね同趣旨の提言などをまとめている。(大谷聡)
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