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松本晃彦 飛躍の「踊る大捜査線」

−−やはり「踊る大捜査線」に代表されるテレビや映画の仕事が飛躍のきっかけということになるのでしょうか?

松本:インストの仕事は、CMの仕事とか昔からやっていたんですよ。そういう意味では映画の仕事もある程度はありましたが、「踊る大捜査線」っていうものがいわゆる劇伴音楽とは違うようなアプローチをさせてもらえたので、そこがきっかけとなって、僕自身もやりやすくなったというのはありますね。劇伴だとある程度、予定調和的な楽曲をいくつか作れば、その責任は果たせるんですけど、「踊る大捜査線」に出会ったおかげで、例えばダンス・ミュージックを取り入れたりとか、ロックみたいなものを取り入れたりとかできるようになったし、その辺の部分をわかって僕に仕事を頼んでくれるようになったので、それは良かったですね。実は「踊る大捜査線」の最初のテレビ・シリーズは6年前なんですよね。その当時はまだ、劇伴音楽というものはオーソドックスな生のオーケストラとかを使うのが主流だったんですよ。「太陽にほえろ」とかはバンド・スタイルでしてたのかもしれませんが。

−−サントラCDで売れるっていうのは今までなかったところで、「踊る大捜査線」は80万枚を売ったわけですよね。

松本:今回シリーズ全体で100万枚越えましたね(笑)。まあ、あのテーマ曲がテレビであれだけOAしてもらえたので、そのおかげなんじゃないかなぁ(笑)。

−−日本では異例というか、初めてですからね。

松本:昔から「太陽にほえろ」のテーマとか、「ルパン3世」とかあるにはあるんですけど。

−−「宇宙戦艦ヤマト」みたいなアニメとか、テーマ曲が売れたというのはあるんでしょうけど、映画のサントラがそこまで売れたってことはすごいですね。

松本:うれしいことですけどね。やっぱり、視聴者の人も若いわけですよ。年齢層も変わってきてるわけです。その人たちのライフスタイルに合うようなビート感とか、テンポ感みたいなものがドラマについているほうが、違和感なくドラマの中に視聴者の人が入っていけるんだと思うんですよ。

−−「踊る大捜査線」の音楽は、脚本を読んだ段階でイメージしているメロディがあったわけですか?それとも映像を見てなんですか?

松本:テレビ・シリーズのときと、映画のときとは作り方が違うんですよ。テレビ・シリーズの場合はお話は毎回変わっているんだけど、使う楽曲は同じですよね。悲しいときはこの曲とか、日常はこの曲とかって。なので、テレビ・シリーズのときは脚本を見て、プロデューサーとかディレクターに先に曲を渡すんですよ。それで合う曲を当てはめてもらう。だからそのためには、本当に使われるかはわからないけど、とりあえず「日常1」とかお約束のやつを作って、後はお任せするんですけど、映画の場合は尺が決まっているのでそれに合わせて作曲するんです。普通はあるシーンに必要な音楽が7分だと、テンポがいくつで割ると小節数がいくつでって計算して作るんでしょうけど、僕の場合は映像をパソコンに取り込んで音楽のソフトと同期させて作曲するという感じなんです。そうすると音楽だけのことを考えられるので。まあ、デジタル技術が音楽家を助けてくれたというひとつの例になりますよね。アメリカ映画とかだと、例えば爆発するシーンの頭にぴったり曲が合ったりするじゃないですか?そういう作曲の方法をアメリカの人はとっくにやっていたはずです。たぶん、日本では僕がやりはじめてからみんなやるようになったんじゃないですかね。それは映画音楽家の前にプロデューサーをやっていて、ミュージック・クリップとかをどういう風にするかっていうようなことを、あれは映像と完全にシンクロしていきますよね?そのテクニックが自分なりにあったので、すんなり映像とリンクできたのは自然な流れだったんじゃないかなと思います。

−−映画音楽家として誰か目標にしている存在とかいらっしゃいますか?

松本:一杯ありすぎてわからないくらいたくさんいますよね。どっちかっていうと僕は「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」のエンニオ・モリコーネの曲が好きなんですよ。何回聞いても飽きないんですよね。すごくシンプルなアレンジだったりするんだけど、メロディーがすごく良くて、「モリコーネは天才だな」って思います。ごちゃごちゃした細かい装飾物みたいなものもあまりなくて、本当に良くできてて。いい曲だと映画の中で何回かかってもいいんですよね。

−−映画の内容は忘れても、音楽だけはずっと憶えているっていうことはよくありますものね。

松本:あと「ひまわり」とか良かったですね。いい映画って必ず印象的な曲がありますもの。

−−松本さんご自身は元々映画をたくさんご覧になっていたんですか?

松本:うーん、忙しかったんでそんなに滅茶苦茶見る暇はなかったんですけど、でも映画音楽のレコードとかって家に一杯ありましたしね。ヘンリー・マンシーニとか。あと話題作は一応見てましたし。映画ファンってめちゃくちゃマニアックによく知ってるでしょ。その域だったかわからないけど、音楽を中心に見ていましたね。今は自宅に映画ルームがあってですね(笑)、100インチのスクリーンで、THXっていうジョージ・ルーカスが認定した音響システムがあるんですよ。関東だと海老名と国立とかしかないのかな?そのシステムを自宅に入れちゃったんですよ(笑)。7.1chっていってスピーカーがサブウーハーを入れると8つあるんですよ。それで映画を見ると楽しいんです。それは映画音楽の仕事をしているっていうことじゃなくて、趣味として(笑)。またマニアックな話をすると、「ホームシアター」という雑誌があるんですよ。そこに僕の部屋が取材されて記事になっちゃったり…(笑)。ワールドカップのときも我が家の100インチ・スクリーンで事務所の人とかみんな集まって見たんです(笑)。

−−いいですね〜。スポーツ観戦もお好きなんですね。

松本:メジャー・リーグとかヨーロッパのサッカーとかはほとんど見てますね。セリエAやスペイン・リーグのマニアックな選手とかの名前も全部言える感じです(笑)。インターネットで情報を見てるし、中田英寿の日記見てたりとか(笑)。 東アジア選手権の日本戦とかも埼玉スタジアムへ見に行きましたし、巨人戦とかも見に行きますし。

−−ご自身はスポーツはなさるんですか?

松本:最近は年で辛いですよね(笑)。テニスはやっていたんですけど、この間5分くらいやったら「うぇー」ってなって(笑)。サッカーなんかよくやってるなと思いますけどね。

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音楽一家に育った少年時代
内定もらって就職せず〜大学4年の決断
年間100曲を手掛ける売れっ子アレンジャー時代
自分のカタチになるような音楽を作りたい〜叔父・松本英彦の影響
▼ 飛躍の「踊る大捜査線」
音響システムの進化──5.1chシステムの未知なる可能性
日本人ミュージシャンの使命〜世界進出の3本柱


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