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きょうの社説 2011年2月20日
◎百万石行列に友禅 「工芸王国」を発信したい
60回の節目を迎える今年の金沢百万石まつりで、加賀友禅を時代行列の衣装に採用す
るのは、行列を魅力的な中身に変えていく新たな一歩といえる。年に1度のイベントで、どこまで衣装にこだわるかは議論のあるところだが、せっかく地元に着物ブランドがありながら、京都の貸し衣装店に頼るだけではやはり物足りない。まつりの在り方を見直す改革案では、行列の衣装として、加賀友禅だけでなく、加賀繍 、加賀蒔絵、加賀象嵌など地元工芸品の活用を探る方向性が示されている。ぜいたくを言えばきりがないが、たとえば主役級の衣装にこだわるなど知恵を絞れば工芸を取り入れる余地はまだあるはずである。 全国に名だたる石川の伝統工芸も加賀藩の文化政策で育まれたものであり、前田家を抜 きにして語ることはできない。加賀象嵌にしても、武具を彩る技法から発展した工芸である。前田家を顕彰するまつりの性格を考えても、工芸はもっと前面に出していい。 加賀友禅は、珠姫のお輿入れ行列に加わる御殿女中役(あやめ隊)の女児60人分の着 物として使われる。加賀染振興協会が制作し、児童を対象にした着物体験などでも活用する。 百万石行列は、金沢の歴史や文化を内外に発信する一年のメーンイベントである。近年 は加賀友禅のファッションショーなども増えてきたが、沿道が人で埋め尽くされる百万石行列はスケールの大きな野外ショーの舞台でもある。加賀友禅以外の伝統工芸も取り入れていけば「工芸王国」「工芸都市」を効果的に発信できる。全国の他の武者行列との違いを際立たせることにもなろう。 今年の百万石行列は歴代藩主全員が登場する「時代絵巻行列」が編成されるなど節目の 年を意識した中身となる。北陸新幹線開業を見据え、新しい時代にふさわしいまつりの姿を探っていきたい。 外国人観光客には日本のイメージとして「サムライ」が浸透し、世界共通語にもなって いるが、百万石行列は「サムライ」の街、金沢を分かりやすく発信できる場でもある。そうした視点からも行列のもつ可能性を考えていきたい。
◎中東・アフリカ支援 重み増す日本のODA
中東アラブ諸国の盟主といわれたエジプトでムバラク政権に代わる新政府づくりが進め
られている。北アフリカでは、先にチュニジアでも独裁政権が崩壊する一方、エジプトと国境を接するスーダンでは南部地域の分離独立が住民投票で確定している。これらの国々は、今後の国家建設で日本の経済・技術支援に大きな期待を寄せている。 歴史的な変革に対応して、対中東・アフリカ支援外交を戦略的に見直し、日本の存在感を強めていきたい。 日本は2008年のアフリカ開発会議で、それまで年間1千億円規模だった対アフリカ ODA(政府開発援助)を、2012年までの5年間で2千億円に倍増させるほか、最大で40億ドルの円借款を約束した。ODA予算額が圧縮される中、今後の経済発展や豊富な地下資源をにらんで、アフリカに対する援助は強化してきた。 エジプトは主要なODA対象国の一つで、これまで農業・水利施設整備や太陽光発電、 ポリオ撲滅などに協力してきたが、これを機に支援の在り方を再検討する必要があろう。チュニジアを含めて、教育の向上や雇用の拡大につながる支援が重要である。 一方、スーダン南部の独立は、まさにゼロからの国づくりである。南北の民族対立の根 は深く、国境の画定が混乱なくできるかどうか、7月に予定される独立宣言まで、なお予断を許さない。国連は後戻りしないよう、独立を強力に支えていく必要がある。 国際的に孤立傾向にあったスーダンの北部中央政府を、軍事面も含めてバックアップし てきたのは中国である。油田権益の獲得が最大の狙いであるが、独立の動きに合わせ、南部にも既に総領事館を開設したという。 日本の対スーダン支援は、感染症予防や地雷除去、難民避難など国連活動に沿って行わ れてきた。今後は、南部の経済的自立につながるインフラ整備で出番が来よう。内戦の影響で国民の識字率は2割強といわれており、教育支援も欠かせない。資源獲得の前にまず国民の心をつかみ、信頼を獲得する支援をめざしたい。
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