ガゾーン関門都市圏

2010年10月3日更新

楠橋城

用途地域等
第一種低層住居専用地域、建ぺい率80%、容積率50%
現況
集落の主が築いた天守閣風建築物。界隈は他にも見ものがいくつかある。
場所
北九州市八幡西区楠橋西1-8-30
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駅方向から楠橋集落に到着 車から出て城の存在に気づき、息を呑んだ ※クリックでパノラマ写真

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楠橋城 北西 北の丸?(左)と本丸(右) ※クリックで大判写真

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大手門 二匹の竜が戸の両側に巻きつき睨み合う 柱には三つ目の鬼の面 ※クリックで大判写真

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楠橋城 城の東側は空き地が広がる

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楠橋城 北の丸? 自動車はここから入り、橋を渡って本丸へ

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楠橋城 北側 端正な表情で、もっとも城らしく見える 大棟の両端に孔雀、間の三匹は、大蛇?

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楠橋城 南側 金箔で縁取りした入母屋破風の押し出しが強烈

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楠橋城 東側 墓場と城

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付近に鎮守も 撮影適地がなく、裏側から 撮影(全13枚)=2010年9月

あらまし

楠橋城は、楠橋の古い集落に立地する天守閣風建築物。城主の名を取って「松尾城」、以前の大字名を取って「香月城」とも言う。威風堂々とした姿が山陽新幹線の車窓から見えるらしく、関心を抱く方が少なくない。史実にない城が実在するのだから、よもやま話には事欠かない。

楠橋は北九州市内では都心・小倉からもっとも遠い位置にあり、市民は意外とこの城の存在を知らない。界隈は遠賀川の氾濫を恐れて高い石垣の上に住宅が築かれるなど独特の雰囲気がある。松尾氏が築いたのは楠橋城だけではなく、神仏混交の鎮守などもそうだろう。よそ者にはめずらしいものがいくつかあり、散策して楽しい場所だ。

建造物

都市計画上は行儀のよい建物ではないが、この楠橋城、百年残せれば文化財だろう。建物は鉄筋コンクリート造のデコ城のようにも見えるし、大規模な木造建築のようにも見えなくはない。天守閣の形式は層塔型なのだろうが、上層階が小さくなっておらず、1階から3階までほぼ同じ幅の寸胴だから床面積が相当ありそうだ。

外観ではなんといっても破風が素晴らしい。南北の金箔で縁取りした入母屋破風と、その下の軒唐破風の組み合わせが男気だ。特に南側はその巨大さと相まって一度目にすると忘れられない。大棟には孔雀と大蛇がいる。軒下の斗栱はわざとらしいが、装飾としては見栄えがよい。東西1階の出格子窓も城らしさを演出する。

しかしわたしはこの豪壮な天守閣よりも、本丸の大手門に見惚れた。白い楼門。しかも、平入妻出の動線だ。これでは不審者が塀をひょいと乗り越えそうだが、それは脇において、芸が細かくて痺れる。戸の両側の柱に巻きつき睨み合う竜と、厄除けの三つ目の鬼の面が印象的だ。こんな凄みのある門はかつて見たことがない。

天守閣風建築物は現在も全国各地に築かれている。しかし、その大部分は歴史的建造物の安っぽい模倣か、男のロマンを言い訳にしたハリボテであり、とても見られた代物ではない。この建物は大枚を投じて築いた現代版の城であり、その外観は復古趣味ではなく、現代感覚に溢れている。

2010年9月20日作成

資料

参照記事(外部サイト)
木屋瀬宿街道案内 - 北九州市立木屋瀬市民センター
関連項目(ガゾーン内)
小倉城 - 細川忠興の居城。史実より派手な鉄筋コンクリート造の復興天守。

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Kusubasi Castle