チュニジア:「ジャスミン革命」道半ば

2011年1月18日 21時0分 更新:1月19日 0時31分

前大統領派らの新政権からの排除を求め抗議デモを行う市民=チュニスで2011年1月18日、和田浩明撮影
前大統領派らの新政権からの排除を求め抗議デモを行う市民=チュニスで2011年1月18日、和田浩明撮影

 一人の若者の焼身自殺が23年続いた独裁政権の崩壊につながった、北アフリカ・チュニジアの未曽有の政変は、国花から「ジャスミン革命」と呼ばれ始めた。しかし、かれんな呼び名とは裏腹に、ベンアリ前大統領の警護隊残党と国軍との銃撃戦が首都チュニスや観光地カルタゴで続き、前大統領派の排除を求める国民は、17日発足の新政権を「旧政権の継承」と反発する。18日には治安部隊が抗議デモの参加者に暴行する場面も見られ、治安も政情も「革命」と呼ぶにはほど遠い状況にある。【カルタゴ(チュニジア北部)で和田浩明】

 ◇前大統領派と戦闘続く

 チュニスから車で約30分。古代ローマに滅ぼされた都市国家遺跡を擁し、政変前は観光客でにぎわっていたカルタゴに17日入ると、銃撃音が散発的に響きわたる戦場だった。

 大統領宮殿に至る道は国軍戦車が封鎖していた。道路脇には、焼き打ちされた乗用車があちこちでひっくり返っていた。市内中心部のベンアリ氏の巨大看板は、顔の部分が破り取られていた。

 国軍とベンアリ前大統領の警護隊の残党との銃撃戦は、16日夜から始まった。大学生のオマルさん(20)によると、一部住居の屋根から前大統領派の狙撃手が発砲を続けている。「ヘリコプターから狙撃手を狙い撃ちしやすいよう、部屋の明かりを消して」と国軍から要請された。

 住民が集まるカフェで取材中、「パン、パン」と乾いた銃声が聞こえた。上空には軍のヘリコプターが旋回。戦闘が続いた約1時間、「ドン」という腹に響く砲声が建物を震わせた。宮殿や周辺に前大統領警護隊が潜伏しているためだ。

 政変前に約3000人いたとみられる前大統領警護隊は今も武装したまま。前大統領が孤児らを引き取って育てたとされ、忠誠心が厚い。武力抵抗を続ける可能性が高く、治安回復の道は多難だ。

 17日に発表された新内閣メンバーは、メバザア暫定大統領が「挙国一致内閣」を約束した。だが、ガンヌーシ首相ら主要閣僚が残留し、野党から閣僚入りした3人が18日に抗議の辞任を表明。新政権は旧政権と似た顔ぶれとなり、全国で市民数千人が抗議デモを実施。チュニスでは鎮圧を図った治安部隊が、デモ参加者に暴行したり催涙弾を発射した。

 カルタゴのカフェにいた医師、スガイヤさん(44)が「ベンアリ関係者が政府に残ることは受け入れられない」と語ると、周りの人々もうなずいた。憲法が定める60日以内の大統領選実施も実現は不透明で、国民の新政権への失望感が新たな怒りに変わりつつある。

 一方、長期専制や富の偏在などチュニジアと状況が似ているアラブ諸国は、政変の飛び火を警戒している。エジプトやアルジェリアでは政府に抗議する焼身自殺未遂が相次いだ。隣国リビアの最高指導者、カダフィ大佐は「ベンアリ氏は14年の大統領選不出馬を約束していた。なぜ(国民は)待てなかったのか」と不快感を表明。エジプトのアブルゲイト外相は「波及はない」と断言してみせた。

 しかし、アラブ連盟のムーサ事務局長は17日、「アラブ社会には(今回の政変と)共通する要因がある」と語った。

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