TV番組:ネット海外転送サービスは著作権侵害…最高裁

2011年1月18日 20時21分 更新:1月18日 23時15分

 インターネットを通じて海外で日本のテレビ番組を視聴できるサービスを提供するのは著作権法違反だとして、NHKと在京キー局5社が、運営会社にサービス停止と計約1000万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(田原睦夫裁判長)は18日、請求を棄却した1、2審判決を破棄し、サービスは著作権を侵害するとの初判断を示した。そのうえで、審理を2審・知財高裁に差し戻す判決を言い渡した。

 ◇著作権侵害認める

 判決により運営会社側の敗訴が事実上確定した。同業者はサービス停止を迫られることになりそうだ。差し戻し後に賠償額などが審理される。

 被告は「まねきTV」の名称でサービスを提供している「永野商店」(東京都文京区)。同社によると、番組送信用の市販機器を購入して同社に預け、入会金1万円と月額使用料4800円を支払えば、海外や東京から離れた地域でもキー局の番組をリアルタイムで見ることができる。

 訴訟では、番組提供がテレビ局側の著作権を侵害する「公衆送信行為」に当たるかどうかが争われた。1、2審は「各利用者と1対1の関係でサービスを提供しており、公衆に対する送信ではない」などと判断したが、小法廷は「誰でも契約できるサービスで、永野商店は主体的に不特定の人に番組を送信している」と結論付けた。【伊藤一郎】

 ◇「無秩序許されず」…民放関係者

 業界関係者によると、使用する機器や技術的形態が異なるケースも含め「まねきTV」と同様のサービスを提供している業者は30社程度あるという。最高裁判決に従えば、ほぼすべてのサービスが違法と判断される可能性が高い。

 在京各局は別の業者を提訴したり、悪質な業者を刑事告発してきた。民放関係者は「海外に番組を販売する場合は出演者らに利益を還元できるよう権利処理をしている。番組が無秩序に海外に送信されれば、正当な報酬を支払えなくなる」と説明。「フリーライド(ただ乗り)は許されない」と話す。

 これに対し、05年に現行のサービスを開始した永野商店の永野周平社長は「テレビ局の既得権益を守るため、便利なサービスを受けられる権利を奪うのはおかしい」と主張。差し戻し後に判決が確定するまではサービスを続ける意向だ。現在の利用者は不明だが、07年時点では74人が契約していたという。

 ただし、判決は個人同士による番組転送まで違法としているわけではない。海外在住者が日本にいる家族や知人に送信用の機器を預けるなどすれば、現地で日本の番組を見ることは可能だという。

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