2010年12月23日 15時9分 更新:12月23日 20時28分
金融・証券・商品先物を横断的に取り扱う「総合取引所」構想で、経済産業省、農林水産省、金融庁は22日、上場商品ごとに異なる規制・監督を一元化することに合意した。ただ、監督権限を金融庁に集約するか、独立機関を設置するかで調整がつかず、主要な論点は両論併記という玉虫色の決着になった。【中井正裕、田所柳子】
総合取引所構想は、政府が新成長戦略で掲げた金融分野の目玉。扱う商品によって異なる規制を統一し、証券会社や投資家の利便性向上を図るのが狙いだ。現在は「(金融・証券との)二重規制でコストが増大する」(米田道生・大阪証券取引所社長)として商品市場への参入に消極的な年金基金など機関投資家が、規制の統一で投資しやすくなる効果が期待される。取引量減少で赤字を抱える国内取引所の救済策の色合いも濃い。
金融・証券を所管する金融庁と商品市場を所管する経産、農水省は年内の結論取りまとめを目指していた。しかし、金融庁が監督権限を同庁に集約するよう提案したのに対し、農水省は「農業政策上、監督権限は手放せない」として独立の「金融商品取引監視委員会」の設置を主張。協議は暗礁に乗り上げた。
同日発表した中間整理では、13年度の総合取引所創設を目指し準備を進めることは一致したものの、取引所統合の道筋については「集約は避けられない」と「各取引所の経営判断」の両論を併記。具体案のとりまとめ時期すら農水省は「6月まで」、金融庁は「1月をめど」と意見が分かれた。3省庁は年明け以降、協議を再開するが、具体案決定には曲折が予想される。
一方、取引所側は「組織統合を押しつけられかねない」との警戒感を強めている。各取引所は、投資家の利便性向上や取引所の事務コスト削減につながる規制・監督一元化には賛成だが、赤字経営の商品取引所との統合には東京証券取引所などが消極的だ。
しかし、海外ではシステム投資の負担軽減などを目的に、国際的な取引所間の提携が活発化している。国内市場は東証が09年に年間売買代金で上海証券取引所に抜かれ、世界4位に転落するなど存在感の低下が著しい。特に、商品取引所は勧誘規制強化などを受けて取引量が激減し、03年に世界2位の出来高を誇った東京工業品取引所(東工取)が昨年11位に後退。東京穀物商品取引所も21日、取引量低迷を理由に東工取への市場移管を決め、単独の生き残りは厳しいのが実情だ。