子ども手当:養護施設 児童で差 恩恵を受けられない子も

2010年12月22日 12時39分 更新:12月22日 12時42分

 虐待や親の病気などの事情から親と暮らせない3万人の子どもが生活する全国の児童養護施設で、子ども手当を巡り波紋が生じている。各施設では、親が手当を受け取る子と、親がいない子らを対象にした手当相当の補助金を支給される子が混在。別居している親が手当を子どものために使うとは限らない中、手当や補助金の恩恵を受けられる子と受けられない子に分かれてしまうためだ。補助金は貯金できないなど他にも課題が多く、関係者からは見直しを求める声が上がっている。【野倉恵】

 「会いにも来ない親にお金が行くのか」。

 6月、北海道の児童養護施設で施設長が手当と補助金の説明をすると、男子中学生が吐き捨てるように言った。中学生の親は4年ほど施設を訪れていない。

 別の男子高校生の父親は5年間連絡もなく突然来訪。高校生は手当の対象外と知らずに、施設長に手当について問い合わせた。男子高校生は「(父親は)どうしようもない」と肩をすくめた。

 東京都内の施設は11月、補助金の対象児に使途を聞き取った。「発表会用のブレザー」「デジタルカメラ」「旅行かばん」。次々に希望が出たが、補助金対象ではない子は親が手当を子のために使わない可能性もある。

 山梨県の施設長は「(補助金対象の)一部の子にだけゲーム機を買ったりしたら他の子どもの目にどう映るか。自立準備にせめて貯金したいが、できない。使えず困っている」と話す。

 補助金を巡っては他にも問題がある。毎日新聞の集計では21日現在、支給を始めたのは16道県と10政令指定都市、1中核市にとどまる。親や祖父母らが手当の申請や受給をしていないか、「住民登録先の市町村に照会し、対象児を特定するのに時間がかかる」(東京都)ためだ。

 支給を始めた自治体でも問題が生じた。山口県では、親が行方不明で11月に補助金が支給された施設の子2人について、祖母に子ども手当の受給が認められていたことが判明。施設が、補助金計31万2000円を返還した。

 北海道でも数十件の補助金取り消しが起きた。ある施設では3年近く連絡が途絶えていた女子中学生の父親が突然訪れ、その後手当を申請。覚醒剤関連事件で逮捕され、小学生のきょうだいが入所した別の母親は、処分保留となった後の今夏に申請した。

 補助金と親らへの手当が重複した場合、厚生労働省は「(自治体から)国へ補助金の返還が必要」との見解で、自治体の多くは「施設に返してもらうしかない」。施設の多くは「親の動きは把握できず、返還なら怖くて使えない」と困惑し、補助金は使いにくいものになっている。

 ◇ことば・子ども手当相当の補助金

 施設や里親家庭で暮らし、両親が死別か不明、あるいは虐待で強制入所・親権喪失などの場合に、子ども手当と同額を親ではなく施設や里親に自治体を通して支給する。補助金のため年度末までの使い切りが求められ「物品購入、趣味、会食、旅行」などに使うとされ、預貯金は認められていない。厚生労働省は来年度以降、預貯金も認める方向で検討している。

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