2011-02-14
人のセックスを笑うな
映画の話題でも下ネタでもないんですが。
ここ最近の「意識高い」云々に対する言説に気持ち悪さを感じてます。
「意識高い」と称されることに対して警戒してか
僕は意識が高いわけではなく、単純に面白いと思うことをやってるだけ。
という言い訳すら目立ってくるようになりました。
気持ち悪い。
そもそも意識の高さとはなにか。僕自身、自分のことは意識が高いと思っている。
「意識高い」の「意識」とはなんぞや、と。構成する要素を2つに分けると
だと思うわけです。もちろん、自分の身近なひとが幸せであればそれでいいし、そのラインは絶対にキープする、というひともいるわけで、それはそれで意識が高いわけですが、ここでは「社会」に対する意識に限定します*2。
「意識が高い」ことは悪いことだろうか?
そうは思えない。叩かれるべきは、「意識だけ高いやつ」であって「意識が高いやつ」ではない。明確に線引きをすべき。
なんか違う。
『人のセックスを笑うな』というタイトルに込められてるのはたぶん「いろんなひとがいるんだから、好きにしてやれよ」というような意味だと思うんだけど、意識も同じ。好きにしてやってくれ。
というようなことを思ったりしました。
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ところで、映画『人のセックスを笑うな』はおもしろかった気がします。あまり覚えてませんが。笑
2011-02-06
学志会連続講義『投票価値の平等と「公平」な代表』を受けての、一票の較差論
一票の較差を巡る議論が活発である。
僕自身がこのテーマに関心を持って考えをはじめてポストしたのは、どうやら去年の7月のようだ。その最初のエントリはコチラ。それ以来僕は一票の較差についてのエントリを計4回書いている。
友人たちと議論していても決着がつかなかったことから、自分たちがやっている団体である学志会を通じて、一橋大学法学研究科の只野雅人先生に講義を開いてもらい、それを受けて考えを再度見直してまとめてみた。
その講義内容は、すでにyusuke88が自身のブログでまとめてくれたので、参考にしてほしい。→再考「一票の格差」 - とある法学部生の見解
なお、講義が衆議院議員選挙を巡る一票の較差を中心に取り扱ったため、以下の議論も衆議院選挙に関わる内容を想定して書いている。参議院選挙を巡る投票価値の議論では、二院制の意義に由来する特殊性などを考慮する必要があり、内容が一部変わってくると思われる。
基本的な立場
基本的な姿勢は、これまでと変わらず一票の較差を是認する立場だ。これは主に、過疎地に対する経済的な利益誘導を認めて然るべきだと思っているからである。
一方で、これまで4回分のエントリと考えが変わった部分は、「だからと言って、現状の水準での較差は認められない」とした点。また、どうやって格差を解消していくか、についても考えが変わっている。
このエントリでは、最初に過疎地に対する保護を重視する姿勢について説明を行い、その後、較差縮小に向けた打ち手として一般に議論されることの多い、1)ブロックでの選挙区制の導入*1、2)一人別枠方式の廃止、についてそれぞれ見ていく。
結論を先に述べてしまうと、ブロック制の導入は弊害が多く、一人別枠方式の廃止により、是正につなげるべきだと個人的には考えている。
一票の較差を是認する理由
これは一番最初のエントリからほぼ変わっていない。
地域間で人口格差があるときに一票の格差を完全に是正したとする。
そうすると、地方を切り捨てた都市部に非常に偏った政治が行われるようになる。
それがいやなひとは都市部に出てくればいいじゃないかという反論もあるだろう。
若者はそれでいい。けど、そこから動くのが難しいのは一番弱い立場にあるひとたちだよね。収入的に、あるいは健康面などで。そういう一番保護の必要があるひとたちに政策が行きわたらなくなってくる。
それは正義じゃないだろー、と思うわけです。*2
利益誘導をなくした結果、労働需要が急激に縮小、過疎化をさらに加速化させることにつながりません*3。とくに、その中でも立場の弱いひとたちのことを考えると、これは大きな問題になると考えている。
さらにこれらを補完する内容として
- 議員が地域の代表でなく、国民の代表であれば、このメリットは享受できないのだが、実際はそうでないこと。
- 都道府県レベルは、行政上適切な区分であると考えられること。
などがある。
一方で、地域の経済的保護は、他の手段によりカバーすることが可能であり、好ましいとする意見は傾聴に値するが、具体的内容が示されていない以上、議論は行いづらい。
現状の較差の認識
学説では、2倍以内の一票の較差を求めることが一般である*4が、現状は約5倍にも及ぶ。
これまでのエントリで僕は上に述べた内容を理由とし較差の是認を主張してきたが、この理由は5倍もの較差を是認するものとまでは言えない。従って、較差を縮小していく必要はあると思う。
どこまで較差を縮めるべきかに関しては、混乱をもたらさず、かつ恣意性がなるべく少ない政策的変更で対応できる程度の水準まで、とするのが現実的なように思う*5。
さて、以下でブロック制の導入と一人別枠方式の廃止、をそれぞれ検討していく。
ブロック制の導入の是非
ブロック制の導入に関しては、参議院議長の西岡私案が注目を浴びているようだが、個人的には賛成ではない。たしかにブロック制を導入することによって、較差は小さくなると言われているが、このことは別の側面から不平等をもたらすようにも感じる。
理由は、選挙区の拡大に伴い、選挙の負担が多くなり、無所属の議員や小党にとって、非常に不利になることが予想されるからである。たとえば、この私案では九州地方全体や東北地方全体がひとつの選挙区となっている。無所属の議員が九州全体で選挙活動することを想像できるだろうか?
もちろん、選挙区の単位が大きくなると一般に死票が減り、大政党に不利とされるためこの効果は相殺されるのかもしれない。しかし、ここで有利となるのは、中規模程度の政党であると考えられ、政治的多様性が失われるように感じる。
また、道州制などの改革なしに、ブロック制を導入することは行政の単位として適切でないし、従来の行政区画を利用した選挙区の設置がゲリマンダリングを防ぐことにも寄与してきた意味もあったということを無視してしまっている。従って、ブロック制の導入は恣意性の入りこむ要素が高く、また弊害も大きいと感じる。実現性の観点から見ても、大政党に不利な選挙区制度の変更を民主党・自民党の両党が認めるとは考えにくく、困難であると考えられる。
一人別枠方式廃止の是非
一方で、一人別枠方式の廃止については、賛成である。
一人別枠方式とは、地方の保護のために議員定数を47の都道府県に最初に一人ずつ分配してから、残りを人口比に応じて分配していく方式だが、この廃止だけでも、一票の較差は大幅に改善されるとされている。
ここで較差を2倍に近い水準にまで抑えることができるならば、政治的混乱もなく、かつ地方軽視というほどまでの結果にはならないことが予想できる。
まとめ
これまでに強行な姿勢で、一票の較差を是正する必要はないと主張してきたが、そのことは必ずしも5倍もの水準での較差を是認する根拠とはなりえないことにようやく気付いた。
しかし、一票の較差を完全になくし、地域軽視となるリスクをとることは好ましくないため、一票の較差そのものについては相変わらず是認したい。
また、較差是正については、恣意性がなるべく少ないような最低限の制度変更によって実現すべきであり、そのための手段として適切と考えられるのが、一人別枠方式の廃止であると考える。
これを書いていたのが徹夜明けの朝の6時であるため、後ろになるほど段々と文章が減っていく様子がおかしいですが、ご容赦ください。間違いや誤字脱字等ありましたら、指摘していただければと思います。
*1:最近では、参議院議長の西岡議員が提示した私案の中で、全国を11のブロックに分ける選挙区制度が主張されている。
*2:ここで述べた「正義」という言葉は適切でない、という指摘を受けた。ただ、当初の思いを載せたかったので、そのまま載せた。
*3:投票価値の重みが大きいような地域では実際に、利益誘導が多くなされていることは、友人のsakekovic_14がすでにブログで紹介してくれた。→「一票の格差」問題についての議論のまとめ - we gotta dig it up somehow, yeah, yeah.
*5:相変わらず、「一人一票の達成」や「一票の較差は2倍まで」といった議論には魅力を感じない。ここがどうも法学部の価値観とのずれのようだ…。
2010-12-31
2010年、この○○冊。まとめエントリ。
【追記】
2011年1月4日時点で、@kei_kurata, @takagyi, @ecoecoechoを付け足しました。
まだポストしてない方、引き続きお待ちしてます。ポストしたら、連絡ください!!
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とりあえず、2010年に間に合ったものから先に公開。
学部ごとに並べてみると、特色出ておもしろいんじゃないかなと思ったんですが、見てみると意外に学問分野と関係なかったりするので、前回の告知エントリと同じ順番で紹介。
最後にMVB:Most Valuable Bookを発表!!?
@yusuke888
『自由からの逃走』は相当押してるよね、のんちゃん。この中だと樋口先生の著書に惹かれるな。
番外編に載っている阿部勤也『自分の中に歴史を読む』を読んだら、ぜひ次は『ハーメルンの笛吹き男』に移ってほしい。
@ttokumasa
上半期編:2010年夏の3冊・リーダーとは? - tokumasatのブログ
下半期編:(すべりこみ)2010年の本 - tokumasatのブログ
柳井本は読んだなぁ、と思いきやheitarosatoから借りたって書いてあった。笑
ライフネット生命の2トップたちの本は結局読んでないから読んでみたい。『20歳のときに知っておきたかったこと』は立ち読みでいいかと思ってまだだな*1。
@sakekovic
総集編:2010年の4冊 - we gotta dig it up somehow, yeah, yeah.
スポーツ編:今年の3冊【スポーツ編】 - we gotta dig it up somehow, yeah, yeah.
『正義論』…まじっすか、恐ろしいです。読みたいです。『カラマーゾフの兄弟』はかぶったな(訳者違うけど)。そして、『ゴールは偶然の産物ではない』買うか迷ったなぁ…(買わなかった)。
@YuheiSUZUKI
総集編:I’m looking for a new way to fly...: 今年の10冊…もとい今年の7冊
出願で忙しい中、あざす。twitterで「しぶっ」と突っ込まれてたけど、渋いな。なに、ハロルド・ニコルソン『外交』て。笑
カズオ・イシグロはこの間彼女と話題にのぼったりした*2、『1984年』はちょうど@sakekovicから借りてるので楽しみだ(もちろん@YuheiSUZUKIとは違い、日本語で読みます)。
@fukkyy
その1:Make the Life Better: 今年の3冊 『ハッカーと画家 コンピュータ時代の創造者たち』
その2:Make the Life Better: 今年の3冊 『facebook 世界最大のSNSでビル・ゲイツに迫る男』
その3:Make the Life Better: 今年の3冊 『アイデアの作り方』
3つに分けて長編エントリを書いてもらった。ありがとう。
3冊とも読んだことないから、コメントしにくいけど、『facebook 世界最大のSNSでビルゲイツに迫る男』が相当気になるな。かなり話題になってる映画、"The Social Networkの原作"、とのことだから俄然期待が高まる。
@hoshi_hiro
総集編: 2010年、個人的に印象に残った4冊 理系学生がジェネラリストになるためのブログ
まだ面識はないtwitter友人。(卒業前に飲み行きましょう!)
『ネット・バカ インターネットが私たちの脳にしていること』は高校の同期も勧めていたから気になってる。『ヤバい経済学』かぶった。そして『星の王子さま』懐かしすぎる…ストーリーがまったく思い出せないけど。
一橋は文系しかないから、理系の友人はかなり貴重で、読んでる本とか気になったりするわけです。
@ryou757
総集編:今年の三冊(笑) - ナマケモノが人間に進化するブログ
大学の後輩(直接面識はありませんが、知り合いの後輩は全部自分の後輩です!笑)。
『知的複眼思考法』は名著。大学前期のうちに読んでおくべき本だなぁ。『現代の金融入門』は、慶応大学経済学部、池尾先生のゼミに友人が3人所属している関係で、若干読みづらいんだよなぁ*3。
@N_tkd
@ryo757と同じく、直接はまだ知り合いじゃないが、大学の後輩。
結局『フラット化する世界』読んでないんだよなぁ。読みます、彼女がたしか持ってるし*4。
『マグネシウム文明論』…この本を彼が読むことになったきっかけが気になったりします。
@onzka
殺されかけた編:2010年、私を殺しかけた本たちの記録 - Men talking over coffee with smoking Ark Royal.
飛び入り参戦その1。ありがたいです。
twitterのポストの内容から想定していましたが、紹介されてる8冊…寡聞にしていずれも読んだことがありません。というか手が付けられそうにありません(小説が1冊はいっててよかった…笑)。
…ん、藤野寛…??…大学1年のときのドイツ語の先生じゃないか!! これもなにかの縁だと思うので、藤野先生の本から手をつけてみます。
@kanedo394
総集編:Twitter / y.kanedo: ブログに書くほどの内容はないな。今年読んで特に面白か ...
飛び入り参戦その2。去年も飛び入り参戦してくれた@kanedo394ですが、今年は「ブログに書くほどの内容はないな」ということでtwitterで。笑
自分含め、『カラマーゾフの兄弟』は3票目。『名前のない女たち』は気になりすぎるだろ。世界史/W.マクニールとは『疫病と世界史』のことだろうか??*5
id:zhe0169
『哲学する民主主義』はかぶった。斎藤誠先生の『競争の作法』もそういえば読んだな。『ヒトラーの秘密図書館』が一番気になるね。
yutopia21
総集編:RUN,YUTO,RUN : 2010年、今年の5冊
『ルワンダ中央銀行総裁日記』はかぶった。『これからの「正義」の話をしよう』は去年読んだ。小林秀雄は『モオツァルト・無常という事』を読んだことがあるけど、ここで紹介されてる『考えるヒント』は読んでないな。読みたいな。
@heitarosato
2010年読書録総集編! - 志先行型人間が地に足をつける日記
…まぁ自分のエントリなんですが。
以下、締切後に参戦してくれたひとたちを追記。
@kei_kurata
【読書記録】総括:2010年の5冊 - kei_kurata’s effort diary
『今日の芸術』がかぶりました。『ザ・ゴール』は名著。
てか俺誰かに『ザ・ゴール』貸してから返ってきてないんだけど、誰??手をあげなさい。笑
『自分の中に毒を持て』が気になりますね。岡本太郎すごいよ。
@takagyi
2010年の10冊(思想編,世界編,日本編) - takagyi’s blog
『罪と罰』で、ドストエフスキー4票目。この中だと読んだのは、『これからの「正義」の話をしよう』、『三四郎』、『貧困の終焉』はちょうど2010年に読んだな、『罪と罰』は中学生のときに読んだ*6。『銃・病原菌・鉄』は去年も@kanedo394が選んでました。今年頭にジャックアタリが来日して講演するとのことだから、『21世紀の歴史』くらいは読んどきたいな。
@ecoecoechoさん
Echo Research Institute 2010年から5冊を選んで
『ネクストマーケット』は@tokumasat、『銃・病原菌・鉄』は@takagyiに続き、それぞれ2票目ずつ。
『V字回復の経営』と『フリー』はたしかに、一度は目を通した方がいい気がしますね。どっちもちょうど2010年に僕も読みました。
@masashisalvador
2010年の5冊 - AllisPossible.Ifonedesires.
『資本主義と自由』と『イマココ』は読まなきゃなと思いつつ、放置してた本だ。とくに『イマココ』は気になってる。全部読んだことないのでコメントしづらいなぁ。
読んでるね、けっこう。
今後の追記予定は…
- @yuto_takadaは、実家の無線環境の問題で遅れ気味。
MVB
MVB:Most Valuable Bookは、全員出揃ってからですね。
未提出の方々、良エントリ期待してますっ!
2010年読書録総集編!
去年に続き、「今年の○冊」シリーズ。
まわりの友人たちのブログでは、わりとしっかり目に紹介してくれてるけど、僕は読んだ本全部の読書録をブログでつけてるんで、1個1個は少なめです。
さて、まず今年読んだ本は全部で143冊。*7
去年は、その年出たものの中から選んだんですが、今年は7月に『2010年上半期、独断と偏見で選ぶ良書たち。』というエントリを書いて以来、新作を読んでいなかったので、出版年のくくりは外すことに。
その代り、以下の3部構成でそれぞれ5冊ずつ選ぶことにしました。
- 「一般書部門」
- 「新書部門」
- 「小説部門」
一般書部門
第5位! スティーヴン・D・レヴィット、スティーヴン・J・ダブナー『ヤバい経済学』
- 作者: スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー,望月衛
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2007/04/27
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楽しいって理由でだけで研究を続けてるんだろうなぁという雰囲気がぷんぷんする経済学者が、過去の研究を総括した本。経済学のおもしろさがわかる。ただ、おもしろいだけじゃなく、仮説をどう検証するか?、因果をどう見極めるか?など示唆は多い。
自分に還元しようと思えばいくらでもできると思ったり。
第4位!! ロバート・パットナム『哲学する民主主義―伝統と改革の市民的構造』
哲学する民主主義―伝統と改革の市民的構造 (叢書「世界認識の最前線」)
- 作者: ロバート・D.パットナム,Robert D. Putnam,河田潤一
- 出版社/メーカー: NTT出版
- 発売日: 2001/03
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社学の堂免先生に勧められた著書。
現代は"MAKING DEMOCRACY WORK"。イタリアの州政府導入をケースにし、どういう州で民主主義がうまくいくのかを検証した研究成果。結論に近いのは、むしろ「哲学しない民主主義」であるのだが*8。
著者の認めるように一部検証が雑ではあるものの、因果がごちゃごちゃなものをキレイなストーリーにまとめてしまったのはすごい*9。あ、あと翻訳はへたくそ。笑*10
第3位!!! ウォルター・キーチェル三世『経営戦略の巨人たち』
- 作者: ウォルター・キーチェル三世,藤井清美
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2010/12/21
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その年を振り返るにあたって近くに読んだものの方が、印象に残りやすいとのことだが*11、これは今日読み終えた本。笑 従って、おもしろいかはわからん。僕自身の関心があるから、という理由で選んでるのかも。
「経営戦略」というパラダイムを作ってきたコンサルやビジネススクールの歴史。来年からコンサルタントになるにあたって、金言とでも言うべき、示唆がところどころに。
第2位!!!! ロバート・ライシュ『暴走する資本主義』
去年『勝者の代償』を読んですげーーーて思ったけど、この本もスゴ本*12。というかこっちのが有名なんだけど。
ちなみに、この本は、今回この「今年の○○冊」シリーズにも参加してくれてる@fukkyyに春に勧められた本だったりもする*13。
超資本主義の下では、個人は消費者と投資家の二面性を持つ。後者の勢いに押され、前者の権利は抑制されている。シンプルでわかりやすい。
第1位!!!!! 『文明崩壊』
- 作者: ジャレド・ダイアモンド,楡井浩一
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2005/12/21
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1月に読んだはずだけど、今年一番だったかな。
過去に起きた「文明崩壊」を検証。原因をひとに見出す。リアルタイムで起きつつある問題に当てはめて、怖くなる。
僕自身環境問題などには対して敬意を払っていない。最近は温暖化問題も科学的に間違いという揺り戻しも大きかったりする。けど、「起こりえない」と笑っていた結果が、文明崩壊の事例として紹介されている。
島にある木を全部切り倒してしまう…、そんなバカなこと現代人はしない?どうでしょう??
今年読んだ小説部門
- 作者: ドストエフスキー,亀山郁夫
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外語大の亀山先生の訳した新訳『カラマーゾフの兄弟』。1週間以内に読み切ってしまうほどにおもしろかった。サスペンスとしても一流。訳語が適切でないとして問題視されることも多い亀山訳だが、日本人にとってカラマーゾフを一般的なものにした功績は大きいはず*14。
第4位!! ユンチアン『ワイルドスワン』
- 作者: ユンチアン,土屋京子
- 出版社/メーカー: 講談社
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女性が軽視されていた中国で生きた女性3代の話。
ところどころ残酷で、目をそらしたくなるけど、それでも読まなければいけない本だと思った。
第3位!!! カート・ヴォネガット・ジュニア『タイタンの妖女』
- 作者: カート・ヴォネガット・ジュニア,和田誠,浅倉久志
- 出版社/メーカー: 早川書房
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SFがこんなにも美しいとは知らなかった!という感じの本だった。
僕の中では、SFの名誉挽回を成し遂げた作品。
第2位!!!! デイヴィッド ハルバースタム『ベスト&ブライテスト』
ベスト&ブライテスト〈上〉栄光と興奮に憑かれて (Nigensha Simultaneous World Issues)
- 作者: デイヴィッドハルバースタム,David Halberstam,浅野輔
- 出版社/メーカー: 二玄社
- 発売日: 2009/12
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ベストでブライテストな人たちがどう泥沼にはまっていくか。
客観的であるふりをしないこと。現場を見たふりをしないこと。
第1位!!!!! ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』
存在の耐えられない軽さ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-3)
- 作者: ミラン・クンデラ,西永良成
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2008/02/09
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圧倒的。
名前と最初に掲げられる命題「なにを選ぶべきなのか? 重さか、それとも軽さか?」の言葉の重みたちに負けない中身。
間違いなく、今後の人生において何回も読み返す小説。
新書部門
第5位! 海老原嗣生『「若者はかわいそう」論のウソ』
- 作者: 海老原嗣生
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2010/06/01
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ここ最近、新卒採用や雇用の議論が盛んだけど、そういう議論をする前に、この本は読んでおいた方がいい気がする。
現場の声もきちんと聴きながら、丁寧にマクロのデータを拾ってきている。最後にある湯浅誠さんとの対談もおもしろかった。湯浅さんの批判もきちんと受け止め、本に載せるところも好印象。
第4位!! 服部正也『ルワンダ中央銀行総裁日記』
- 作者: 服部正也
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2009/11
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これは、今回の「今年の○○冊」シリーズに参加してる@YuheiSUZUKIからのオススメ。@YuheiSUZUKIが、twitterで「俺が紹介しないでも誰か紹介してくれると思って外した」と書いていたから、いれてみた。
国際通貨基金からルワンダ中央銀行総裁への就任を依頼された服部さんのルワンダでの6年間の格闘記。印象的なのは、素人とされていたルワンダ人の閣僚たちが、服部さんの話に納得し行動に移すシーンたち。それまで、外国人技術者に任せきりだった閣僚たちのボトルネックは自信のなさだったりする。
いまのルワンダが気になる!
- 作者: 辛淑玉,野中広務
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2009/06/10
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それぞれ部落出身、在日というバックグラウンドを持つ、野中さんと辛さん2人の対談。
貧困問題とか差別問題とかって究極に言えば、わからない。だからこそ意識的に読んで、うわべだけでもいいから体験しなきゃいけないと思うんだよなぁ。
第2位!!!! 阿部彩『子どもの貧困』
- 作者: 阿部彩
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/11/20
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子どもの貧困問題に焦点を絞って、格差の連鎖についての研究成果。
以前、ブログで引用した箇所だが、インパクトが大きかった箇所をまた引用してみる。
「格差」や「貧困」を「上流」「下流」、「勝ち組」「負け組」といったラベル付けに象徴されるような、一種の「ゲーム」的な関心で語っているだけでは、「貧困」も「格差」も、新宿西口のホームレスの人々と同様に、いつのまにか「見えなく」なり、「語られなく」なるであろう。
第1位!!!!! 岡本太郎『今日の芸術―時代を創造するものは誰か』
- 作者: 岡本太郎
- 出版社/メーカー: 光文社
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これも圧倒的だった。さっそくひとにプレゼントで使ったなぁ。
芸術とは「理解できてはいけない」、「キレイであってはいけない」。芸術に限らず、「前に進む」とはそういうことかもしれない。
総括
2010年読んだ143冊の詳細を見てみると、経済・経営の分野が多いが、法律系の本が増えたなぁ。これからも他のジャンルの本にも手を広げていきたい。小説が当たり年。
上にあげた各ジャンルのトップ5にははいらなかったけど、次点としてはあげるならば、こんな感じかなぁと20冊。数字は順位ではなく、最近読んだものから順番に並べてあるだけ。
- シャレドダイアモンド『人間はどこまでチンパンジーか』
- 佐藤優『国家の罠』
- 南木佳士『信州に上医あり−若月俊一と佐久病院』
- 東浩紀『動物化するポストモダン オタクから見た日本社会』
- 真山仁『ベイジン』
- マイケルポーター『競争戦略<1>』
- 関根健次『ユナイテッドピープル』
- ジェームズ・コリンズ,ジェリー・ポラス『ビジョナリー・カンパニー』
- 斎藤誠『競争の作法』
- マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』
- 内藤正典『イスラムの怒り』
- トム・ケリー『発想する会社!』
- いしいしんじ『トリツカレ男』
- 大竹文雄『競争と公平感』
- 清永聡『気骨の判決』
- ニコラス・タレブ『まぐれ』
- 湯浅誠『反貧困』
- マックスウェーバー『職業としての政治 職業としての学問』
- 堤未果『ルポ・貧困大国アメリカ1,2』
- 菅原琢『世論の曲解』
みんなが書いてくれた分のまとめエントリをポストします。
お楽しみに。
*1:僕は立ち読みで本を読み切る、という血も涙もないことができます笑
*2:いえ、ノロケではありません。笑
*3:なんか負けてる感じするやん?…いやわからんだろうけど。笑
*4:いえ、これも決してノロケではありません。笑
*6:つまり覚えていない笑
*7:7月の時点で100冊だった気がするんですけど、後半なにをしてたんでしょう??笑
*8:民主主義の機能・成果はその地域の市民性に依存し、市民性は経路依存性を持つ。つまり、昔から民主的な地域がいまも民主的で、政治パフォーマンスも高くなる
*9:いいかはともかく
*10:「〜だった。」という文章が延々と続く笑
*11:まぁ、それは当たり前ではある!笑
*12:ただ、個人的には、『勝者の代償』の方が好き。
*13:当人が覚えてるかはわからんが笑
*14:あと読みもしないで訳語がおかしいと言ってる人は、読んでみて検証サイトとかを見て、その指摘がいかにどうでもいいことかを見てみるといいと思う
2010-12-25
2010年、今年の○冊
追記。
さらに3人の方から参加表明を頂けました。
@hoshi_hiro理系学生がジェネラリストになるためのブログ
@ryou757 ナマケモノが人間に進化するブログ
@N_tkd 今日もあの日
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せっかくいろいろ本を読んでるならオススメの本を共有しませんか?
というわけで、去年に引き続き、今年も「今年の○冊シリーズ」をやることにしました。
お題
「今年読んだ本でオススメの○冊」
前回は「今年の3冊」というお題でしたが、今回は参加してくれる人がまわりに広がったので、ルールを変更し「何冊でもいいし、何部門作ってもいいよ!」ということにします。条件は「今年読んだ」というところだけ。
参考までに去年はこんな感じでした。→みんなの選んだ2009年の3冊まとめエントリ - 志先行型人間が地に足をつける日記
いまのところ参加してくれそうな人たちは…
twitterアカウントとブログともに把握してるひとは、以下7人。
@yusuke888 とある法学部生の見解
@ttokumasa tokumasatのブログ
@sakekovic we gotta dig it up somehow, yeah, yeah.
@takagyi takagyi’s blog
@YuheiSUZUKI I’m looking for a new way to fly...
@fukkyy Make the Life Better
@kei_kurata ひとりっこの暇つぶし
それから友人の友人で、@yuto_takadaくんも参加してくれるそうだ。自分も入れて、総勢9人。
みなさん同期*1ですが、誇るべき優秀なメンツが集まってますね。
締切は年末!
よろしく!飛び入り参加待ってます!!
自分のもしっかり書かないとな。
とりあえず、僕は「2010年新作部門」、「2010年に読んだ小説部門」、「2010年に読んだ新書部門」、「2010年に読んだハードカバー部門」、「MVB(Most Valuable Book!)」の5部門で行こうかと思ってます。ジャンルごとでわけてもなんでもいいです。
ほいじゃ、告知まで。
あ。すでに@sakekovicがすでに1本記事を書いてくれてますね。括りはなぜか「スポーツ部門」
こちらから→今年の3冊【スポーツ編】 - we gotta dig it up somehow, yeah, yeah.
*1:のはずなんだが、id=tokumasatはなぜかまだ大学3年だな。笑
2010-12-11
「理系の方が年収を高い説」をめぐる解釈
追記:
一発書きしてポストしたのを確認してみたら、生存バイアスのところの解説がなんかおかしいっすね。適当に読み流してください。
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ここ最近、twitterで「理系の方が文系よりも年収が平均的に高い」とする京都大の西村和雄特任教授らの研究が話題を呼んでいる。
ここでは、自分の考えをまとめるというよりも、どう解釈ができるかを整理してみたい。
研究内容
大学の理系学部出身者は文系に比べて正規社員の割合が高く、課長以上の比率も高いとの調査結果を9日、京都大、慶応大などの研究グループが公表した。
とのことで、研究チームの代表、西村さんは以前、理系の方が年収が高いとする研究成果も発表している。
解釈その1「理系の方が高待遇はほんと」
「年収が高い」とする研究成果のニュースでは、西村教授自身の解釈として
「技術系の就職が難しい文系より、理系のほうが選択できる職種の幅が広く、転職しても収入が下がりにくいからではないか」
そういう風にも考えられますよね。
解釈その2「学歴格差による見せかけの相関」
見せかけの相関であり、ほんとは雇用上の待遇は学歴差によるものではないか、というもの。具体的には2点指摘できます。
- 理系のほとんどが院卒であることに対し、文系のほとんどは学部卒。
- 中位・下位の大学には文系のみしかない大学が多い。
指摘した2点を考慮すれば、単純な比較をしても仕方ないことは理解してもらえると思う。但し、西村教授の持つ地位を考えれば、こんな単純なミスはしないはずで、きちんと検証しているはずではある。
解釈その3「男女差による見せかけの相関」
その2と同様、男女差による見せかけの相関の可能性もある
- 理系は男性比率が高く、文系は理系と比べ、女性比率が高い
- 多くの女子大学には文系しかない
これらを考慮すると、平均に理系の待遇がいいとしても、単に年収・待遇の男女間格差をとらえたものかもしれない。
解釈その4「サンプリング・バイアス」
サンプルのコントロールが十分なのかは、最初に気になるところですね。
- 職種が相当離れていたりはしない? たとえば、理系グループのデータが医師ばかりだったとか。笑
- 偏差値みたいなもので卒業した大学を分類したときに、偏りがないか? 文系の方が裾野が広いことを考えれば十分にありうる。
- 年齢構成はどちらのグループでも同じような分布か? 理系のデータとして集めたものの平均年齢が文系のそれよりも10歳上だとかだとまずいですよね。
解釈その5「生存バイアス」
まぁ、これが本命でしょう。
年収の研究でも正規・非正規をめぐる研究でも、サンプルは抽出したひとのうち「その時点で年収があるひと」のみ。つまり、この研究が正しいとしても「理系に行くと出世できるわけではない」ということだ。
統計とか計量の知識があまりないひとのために、解説する。たとえば、こういうイメージをもってもらえるとわかりやすい。どちらも直観的に思いつくものだと思うが、データにあたってないので正確なことは言えません、すみません。
これらが正しいとすると、前者からは、文系卒生の平均年収は「正規ポストの中に占める一般職の割合」にひっぱられ、理系卒生のそれよりも低くなるが読み取れる。また、後者からは、データとしてあがってくるのは就職しているひとだけである以上、理系のトップ層と文系の全体層を比較して、正社員比率が高い、年収が高いとしても意味がないことになる。
まぁ、考えをつらつら垂れ流してきましたが、こんなところじゃないでしょうかね。