目黒夫婦殺傷 木村容疑者、韓国女性に数百万円送金
2011/02/17 07:53更新
記事本文
≪不可解な行動「金品が動機のすべてか」≫
東京都目黒区で約1カ月前に発生した殺人事件をめぐり、新事実が浮上した。東京都目黒区の元会社役員、大原道夫さん(87)夫妻が殺傷された事件で、殺人容疑などで逮捕された木村義昭容疑者(65)が、韓国在住の女性に対し、10年以上前から総額数百万円を生活費として送金していたとみられることが2月16日、捜査関係者への取材で分かったのだ。冷え切った家族、韓国にいる女性との間にできた娘の入院…。逮捕から1週間が過ぎ、「金銭目的のだった」との動機は明らかになりつつある。ただ、その動機と行動はちぐはぐともいえ、事件は謎に包まれている。
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記事本文の続き 関係者によると、木村容疑者は1997年ごろ、韓国・ソウル在住の当時30代前半だった女性と内縁関係になった。家族と暮らす福島県いわき市の自宅を生活拠点にしたまま、頻繁に福島-ソウル間を往復する二重生活が始まった。
その後、韓国人女性との間に2人の女児をもうけた木村容疑者。年に数回、生活費名目で数十万円を送金していた。韓国を訪れた際に手渡すこともあり、年間100万円以上に上ることもあったという。
さらに韓国にいる女児の入院費用が必要となった。木村容疑者は昨年秋、知人から数百万円を借りたほか、事件後にも入院費名目で借金を申し入れている。捜査本部は韓国への送金に当てるためだったとみている。
■冷え切った家庭
二重生活にもゆがみが出始める。不景気のあおりを受けて、産業廃棄物処理を仲介する仕事の受注はここ1、2年で激減。主な収入は2カ月に1度支給される年金だけとなっていた。
逮捕前日の2月9日、木村容疑者の口座には現金300万円が振り込まれていた。知人からの借金とみられるが、家族はそれを知らなかった。
木村容疑者は妻と次女との3人暮らし。家族は捜査本部に「会話はあまりしなかった」と説明しているといい、家族関係は冷え切っていた様子だ。
犯行当日、木村容疑者は同居する家族らに「仕事に行ってくる」とだけ伝え、いわき湯本から高速バスで東京に向かった。
事件後の木村容疑者の様子について家族は「特に変わった様子はなかった」と話したが、捜査幹部は「もともと夫に関心がなかったのかもしれない」とみる。
木村容疑者が所有していた携帯電話は、取引先を通じて契約したものだった。取引先の社長は「頼まれてうちで契約したが、料金は(木村容疑者が)自分で支払っていた。家族に知られたくなかったのだろう」と話す。
■せっぱ詰まった?
ただ今回の事件には、いまだに不可解な点が残る。
家族に見放され、遠くに住む愛人との生活を守るため金策に走り、追いつめられていった木村容疑者の姿が浮かぶ。
だが、自宅から200キロも離れた東京で、なぜ下見もせず凶行に及んだのか。住民の制止を振り切って執拗(しつよう)に大原さんを刺した理由は何だったのか。
木村容疑者が口にする動機と犯行態様にはいまだ開きがある。捜査幹部も「金品が動機のすべてとは言い切れないのではないか」との見方を示す。
東工大教授(犯罪精神病理学)で精神科医の影山任佐氏は「わざわざ遠くまで出向いて、屈強な男性が住人かもしれないのに、下見しないのは不可解」と指摘する。
高速バスの乗客名簿に実名を記入するなど、地元から離れて犯行に及ぶ「利点」を帳消しにするような失敗も犯していた。
影山氏は「顔を公然とさらし、逮捕覚悟だった可能性がある。ずさんで、ちぐはぐな点も多く、金策にせっぱ詰まった末の犯行との見方もできる」と分析する。
犯行当日の木村容疑者は、バスで東京駅に到着後、恵比寿駅付近に移動して3時間近く時間を潰してから犯行に及んだとみられているが、事件前後の時間帯の行動には多くの謎が潜んでいるとの見方ができる。
真相の追及が続く。
◇
■目黒夫婦殺傷事件 東京都目黒区の自宅玄関で(80)代の大原道夫さん夫妻が殺傷された事件。警視庁目黒署捜査本部が1月10日、殺人の疑いで福島県いわき市のアルバイト、木村義昭容疑者を逮捕した。大原さん夫妻は「知らない男だった」と話していたが、捜査本部は木村容疑者と大原さんの関係を含め経緯や動機を追究。事件から約1ヵ月が経過する中、駅で回収した切符から木村容疑者の指紋を検出されるなど、新たな証拠が浮上している。
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