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社説:G20パリ会議 インフレ対応で結束を

 「世界の食料価格は危険なレベルにある」--。世界銀行のゼーリック総裁が強い危機感を表明した。主要20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議がパリで始まったが、食料に代表される物価上昇に対し、G20は警戒を強め、正しい処方箋を書く必要がある。

 国連食糧農業機関(FAO)の主要食料価格指数が08年に付けた史上最高値を更新するなど、食料やエネルギー価格の高騰が深刻だ。新興国では物価全般に波及しており、世界経済の回復に水を差しかねない。

 途上国における貧困もより深刻にさせている。世銀によれば食料価格の上昇が顕著になり始めた昨年6月以降、途上国で4400万人が新たに貧困層入りしたという。チュニジアに始まった反独裁政権デモの背景にもなっており、緊急性の高い国際問題に浮上した。

 ではG20は何をすべきだろう。

 価格高騰の背景には、干ばつなど気象に起因する農作物の生産減少や、多数の人口を抱えた新興国の需要増がある。途上国への技術支援など増産に向けた中長期的取り組みが求められている。

 しかし需給上の問題だけではない。食料や石油などを国際的に取引する商品市場に、高い利回りを狙った投機資金が流入し、価格変動を増幅させている面がある。 

 議長国のフランスはそうした投機資金の管理強化を通じて高騰の抑制を図りたい模様だ。アジアの新興国も同調しているようである。

 投機資金を悪玉に仕立てて規制する手法は実効性への疑問や副作用が指摘されており、反対も根強い。新興国に流れ込む逃げ足の速いマネーについても、資本規制で制限する動きがあるが、そもそもなぜ投機資金が市場にあふれるのかという点にもっと目を向ける必要があろう。金融緩和というマネーの蛇口は全開のまま、特定の市場への流入だけ制限しても抜本的な解決にはならない。

 最大の蛇口である米連邦準備制度理事会をはじめ先進国の中央銀行は、大規模な金融緩和の見直しに向けた検討を始める時ではないか。

 農産品の輸出制限など、価格高騰に拍車をかける政策をG20諸国がとらないと約束することも重要である。そのうえでG20以外の国にも協調を求めていくべきだ。

 急激な物価上昇は暴動など社会不安につながることがある。影響は当事国だけでなく世界経済全体に及ぶかもしれない。最近は先進国でも景気が予想以上の回復を見せており、物価上昇はもはや新興国だけの問題ではなくなってきた。インフレの回避で共同歩調をとることはG20の責務である。

毎日新聞 2011年2月19日 2時32分

 

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