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五輪構想に黄信号 立候補予定者、賛成ゼロ '11/1/29

 広島市の秋葉忠利市長の強い思い入れで始まった広島五輪構想。1千億円近い寄付金集めなどに疑問の声が広がる中で、市長自ら強いリーダーシップで推し進めてきた。今期限りでの退任表明で一転、招致判断は新市長に委ねられた。が、今のところ2020年招致に賛同する立候補予定者はいない。(広島市長選取材班)

 26日、広島国際学院大の中野キャンパス(安芸区)であった開催基本計画案の説明会。学生約45人が市職員の話に耳を傾けた。終了後、現代社会学部3年の男子学生(21)は「五輪をやってほしいが、寄付集めは難しそう。提唱者の市長には頑張ってほしかった」と残念がった。

 秋葉市長が4選に立たないと表明した4日以降も市は、大学や体育団体、女性団体を対象に、計13回説明会を開いた。担当課は「市長の任期中は五輪招致検討の方針に変わりはない」とする。

 任期が残り2カ月余りとなった市長だが、五輪招致の意欲は燃やし続ける。スーツの胸元には今も五輪を模したバッジをさす。中国新聞社の単独インタビューでは、「新市長が招致を決定すれば、すぐに立候補できる体制をつくっておきたい」と強調。退任後も国際オリンピック委員会(IOC)の委員を説得するなどして協力する意向を示した。

 一方で強烈な発信力で広島五輪の「広告塔」を果たしてきた秋葉市長の突然の退任表明は、関係各方面に波紋を広げた。国内候補都市を選考する日本オリンピック委員会(JOC)には、少なからぬ衝撃を与えた。

 「落選したとしても、最後まで続けた議論や検討は必ず財産として残る」。市の構想を見守ってきた市原則之専務理事=東広島市出身=は、招致の継続に期待を寄せる。JOC内ではしかし、「市長は無責任」「何を考えているのか」という憤慨や不信が渦巻く。

 広島市長選には28日現在、4人が立候補を表明。うち元市議の大原邦夫氏(61)、市民団体代表の呉羽山人氏(60)、市議の桑田恭子氏(49)の3人は五輪招致に反対、建築コンサルタントの田中正之氏(51)は、凍結の立場を取っている。

 市議会では五輪構想に反対の声が勢いを増す。市民にも賛同の輪が広がっているとは言い難い状況だ。現職が舞台を去ることで、市長選で争点になるのかさえ微妙な情勢の中、広島五輪は風前のともしびとなってきた。

 ▽クリック 広島五輪構想

 低コスト化を掲げ、総事業費は4491億円を見込む。2016年夏季五輪招致を目指した東京都、福岡市より3千億円前後圧縮、広島市の負担は52億円にとどめた。財源では寄付金を1千億円近く当て込む。28競技304種目を広島県内外の37会場で開催し、仮設施設を多用する。

 ▽荒木氏立候補 取りやめ方針

 任期満了に伴う4月10日投開票の広島市長選で、無所属での立候補を表明していた執筆家荒木実氏(67)=横浜市=が28日、立候補を取りやめる考えを示した。中国新聞の取材に対し荒木氏は「家族に健康上の問題が生じ、選挙に向けた活動ができなくなった」と話した。



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