シーズン4 第1回

 たまご(その4) ロッキーの生たまご飲み

 すっかり忘れていた。同人の皆さんに「ラーメン」でVOTEをしていただきながら、その集計結果をご報告していなかった。先週、デスクと「あれ忘れてるね」「忘れてましたね。集計しなくちゃ」という会話を交わしていながら、忙しさにかまけてまたまた忘れていたのである。

デスクぺこり すんません。すっかり忘れてました。

 まずラーメンに「ナルト(かまぼこ)」が入る地域はどこか。「入って当然」と「入ることが多い」を合わせて70%を超えたのは福島・群馬(74)、山形(73)、岩手(71)。

 東北・北関東に集中している。

 60%台は静岡、栃木、山梨、茨城、和歌山、東京、秋田である。和歌山を除くと見事に東日本勢ばかり。

 逆に「あんまり入っていない」と「知らない」を合わせてみると宮崎、長崎、大分、佐賀、徳島が100%。つまり九州などでは「ナルト」の出現率は限りなくゼロに近いという結果が出た。

 東日本ナルト地帯、西日本非ナルト地帯という傾向がはっきりしたと言えそうである。想像していたより鮮明。

 麩はどうか。「入る」で有意な数字が出たのは秋田、青森のみ。秋田は十文字ラーメンが代表であろう。青森では津軽、下北でよく麩入りラーメンをみかける。八戸がある南部ではほとんど見かけない。

 あとは函館を中心とする道南であろうか。札幌ラーメンにはまず麩は入らない。

 今回も実に立派な結果が出た。同人の皆さんのご協力に感謝。

 そして今週から「たまご」に関するVOTEを始める。

 その前にTさんから「カレーと生卵に関しては調査済みです」という表題で次のようなメールをいただいた(原文のまま)

自分のサイト名で検索すればそれしか出てこないのは当然では? 最近は本文の内容にも調査不足の偏った独断を散見します。ジャーナリズムの一角に居る意識があるのならもう少し視野を広くもった方が良いと思います。 by T
 ハウス食品の「地域別カレーの食卓に関する調査」によると、カレーを食べる際のトッピングに、大阪では、生卵をかける人が東京の5倍近くいる。



日経社員食堂の「巣ごもりつくね」、親子ね

 別に反論するわけではないが、前回書いたようにこのサイトでもすでにカレーに生たまごは関西で優勢な食べ方であることが判明している。だから上の調査結果には驚かない。しかもこの調査は北海道、東京、愛知、大阪、福岡というくくりでの比較であって、質問事項は「カレーにはどんな味付けを?」というものだった。それに対する回答が「ソース」「生卵」「醤油」「何もつけない」に分かれ、大阪の「生卵」が突出していたという内容である。私たちが調べようとしているのはその先、つまり都道府県別のデータである。さらに「カレーとたまご」という単一テーマに絞っている。これらの点でハウス食品の調査とは違う。

 さらにハウス食品の調査でははっきりした傾向が出ているのに、横浜カレーミュージアムは「地域性は明らかではない」とコメントしているという。VOTEをする意味はあるのである。

 私たちのVOTEはどのような結果になるのだろうか。

 さて、次回テーマ予告。

 新テーマはサバ・アジ・サンマ・イワシなどの「青魚」である。

 なぜこのようなものを思いついたかというと「東京ではサバ味噌が主流なのに大阪ではサバの照り煮ばっかだったなあ」「小樽で食べたサンマの寿司は美味かったなあ」「目刺しはどうしてあんなにご飯に合うのかなあ」といういくつかの「なあ」が背景にある。

 青魚は昔から日本人が愛してきた魚なので、各地に思いもよらない食べ方が存在するのではないかと思うのである。

 私が個人的に偏愛しているのは博多の「ごまサバ」。同じ物が大分では「りゅうきゅう」と呼ばれている。美味いんだよなあ、あれ。缶詰ではイワシのかば焼きにちょくちょくお世話になる。

 といった具合に、皆さんにも様々な青魚体験がおありだろう。たくさんのメールを待っています。

デスクふうむ 先日おじゃました京都錦市場で焼き鯖の多さに目を見張りました。首都圏では、お総菜屋さんはともかく、鯖は焼くとしても自宅で焼くものだと思っておりました。やっぱ違うんだなぁ、と。

ベティー隊員 青魚ではないけれど、岡山ではサワラを生で食べるんですね。こんなふうに地域独特の食べ方がわかれば面白いですね。

 さて本題のたまごに関して。

だし巻き入りの太巻き?実はUSBメモリーです(いけずな京女43歳さん提供)

ご意見 先日愛媛県の内子町というところに行きました。昔からの町並みが残るいい感じのところなのですが、壁一面に「内子名物卵酢」の文字が! どうやら生卵を酢に漬け込んで、完全に溶かしてあるらしく、色はきれいな真黄色でした。
 味は、高知名物ごっくん馬路村のようで、ユズの香りで甘くて、とても酢と卵とは思えませんでした。何でも吟味した選りすぐりの材料で、飲み続ければ血圧降下やダイエット効果もあるとか…同行の母が買ってくれたので飲んでいますが、今のところダイエット効果は見受けられません(にゃんちゃん)


 四国観光立県推進協議会によると、これは酢とたまご、ユズ、アセロラなどを合わせた健康飲料。360ccで2300円。

 内子には松山から予讃線に乗って一度行ったことがある。坂道の両脇に古民家が並び、由緒ある芝居小屋が残っている。そこで文楽の公演があって、人間国宝の竹本住大夫さんが太夫を勤めた。風情のある店で晩飯を食べたことはよく覚えているが、文楽の方は…。

デスク羨望の眼差し あのぉ、僕、生まれて40数年、一度として四国の地を踏んだことがありません。行ってみたいなぁ。

野瀬 すごくいいとこ。おいしいものてんこ盛り。

 先日、友人とチャーハンをつくる際のたまごの投入タイミングが話題になった。私は最初に中華鍋でスクランブルエッグをつくり、それをいったん取り出しておく。具材を炒めご飯を加えた段階でその卵を投入する。

 それは「素人だ」と言われたが、腹も立たなかった。だって天下無敵の素人なんだもん。

卵はいつ投入すべきか?)

ご意見 台湾の飯屋でときどき出てきた「黄金炒飯」を自己流で研究してみました。
 ご飯:1膳を1人前とします、冷や飯はデンプンが老化しているので電子レンジで加熱しておきます。
 鶏卵:1人前2個、できるだけ冷蔵庫から出して室温にしておきます。
 塩、コショウ:お好みで。
 <作り方>
 1.ボウルなどに卵を割り十分かき混ぜ卵白をほぐし、さらさらにしておく。黄金色が濃いのをお望みの場合は卵黄のみで人数分の倍の鶏卵を用意してください。
 2.先ほど加温したご飯にほぐした卵を入れ玉かけご飯の要領で混ぜます。
 3.フライパンあるいは中華鍋にサラダ油を入れ沸騰させます。その後玉かけご飯を入れ火傷しないように木製しゃもじで塊ができないよう手早く混ぜ、ご飯粒がばらばらになるように炒め、塩、コショウで味付けします。卵に少し醤油などで味付けをしておいてもかまいません。
 4.要領よくパラパラご飯にするには素人の私はご飯2膳が混ぜる限度です。何回かやってコツをつかむと簡単にでき、友人たちが驚きました。仕上げにごま油(香油)を1、2滴たらして香りつけにしますと隠し味になります。お好みでカキ油を入れても何を入れても熱いご飯と十分にほぐした卵さえあれば失敗しません。
 5.中国人は小さな小さなアミみたいな干しえびを隠し味に入れているようです。
 野瀬さんもお宅でお試しあれ(沼さん)


デスクごくり …(つばを飲み込みながら遠くを見る目)

 中華料理の油の温度は高いと思ってはいたが、沸騰させるのかあ。「沸騰するまで油を熱する」ことがポイントだったんですね。これまで温度が低すぎたかもしれない。よし、黄金パラパラチャーハンに挑戦しよう。

 で、スクランブルエッグはつくらないのね。つくるのはやっぱり素人なのね。

 前回「長崎チャンポン」さんからご質問があった長崎のカラフルなたまごを使った食べ物に関して2通。

ゆでたまごもあるでよぉ

ご意見 沖縄チャンポンさんが仰っているのは長崎かんぼこの『竜眼』です。見かけはスコッチエッグみたいな感じです。確かに正月ごろに市場で売ってます。日持ちが悪いので夏にはあまり売ってないのかもしれません。ちなみに、長崎人は「かまぼこ」を「かんぼこ」と発音します(柴田さん)
ご意見 それは「孔雀(くじゃく)」のことだと思います。久留米から東へ車で30分ほどの大分県の日田市あたりで、おめでたい席などに出てくる郷土料理。
 色をつけたゆで卵を、色をつけた魚のすり身(かまぼこ)で包み、蒸してから油で揚げます。それを輪切りにしてきれいに並べると、孔雀が羽を広げた姿に見えることからその名が付いたそうです(久留米やきとり学会の豆津橋さん)


 長崎では「竜顔」、日田では「孔雀」。長崎の方はよく知らないが、大分の物件はNHKの朝ドラ「風のハルカ」の公式HPの中にある「ふるさとの食卓」第2回で詳しく紹介されている。ただし紹介しているのは佐伯市の「くじゃく」。長崎と大分では名前が違うが同じものらしい。

 温度たまごと温泉たまごの違いはいまだに不明。そこにまた新手が現れた。

玉子のみそ漬け(いけずな京女43歳さん提供)

ご意見 東京出張の折、「江戸たまご」という玉子のみそ漬けを見つけました。銀座の有名なお漬けもん屋さんの商品ですが、江戸時代、庶民にとって最高にぜいたくな酒の肴だったゆで玉子を、江戸時代の料理書をヒントにお漬けもんにされたのだそうです。落語「貧乏花見」を思い出しながら食べると、江戸っ子気分になれます。
 さあ、いよいよB−1グランプリ。せんべい喫茶のモーニングコーヒーも楽しみです(いけずな京女43歳さん)


 ほう、このようなものですか。京女さん、八戸でお目にかかりましょう。

デスクぺこり お目にかかりましょう。

ベティー隊員 一緒にB級グルメを楽しみましょう!

 ロッキーの生たまご飲みに関連して。

有精卵と立春朝採り烏骨鶏卵の割卵(豊下製菓の豊下さん提供)

ご意見 昔、卵の端に穴を開けて卵をただ呑むということをしていたと思います…私の感じでは、この食べ方は戦後すぐのような状況――食糧事情が悪く、卵がとても貴重だった状況において、今で言うドリンク剤みたいにただ呑んだ。その際、釘なり針金なりだけを使って、元気をつけるために卵を呑んだ…みたいな光景が、浮かんで来るのです。
 ひとつ言えるのは、これは手先が器用ではじめて可能な食べ方(呑み方)だということです。その意味で、いかにも日本人の得意技だなあとつくづく感じます。
 ロッキーが朝トレに出かける前に生卵を飲む場面の意味について「普通の人は口にしない生卵を、敢えて、ゲテモノ的強壮剤の感覚で摂取する、そのくらいスゴい自主トレをしておるのだ、ということの説明だ」と後で聞かされて、ありゃーそういうことだったのかー、と驚愕した覚えがあります。だって私は「コップがないと卵も呑めないなんて。アメリカ人って不器用だなあ。穴開けるんだよ穴」とほんっとうに思い込んでいたんですよ!(日野みどりさん)


 だいぶ前のテレビ番組でSMAPのメンバーが罰ゲームとして生たまごを飲む、というのがあった。ロッキーと同じくコップで飲んでいた。

難波ネギ(豊下製菓の豊下さん提供)

 私は生たまごを飲むのがどうして罰ゲームになるんだろうと不思議だった。私が子供のころ、生たまごは滋養と強壮の源で、日野さんが書いておられるように殻に穴を開け、直にちゅうちゅうやっていたのである。醤油なんか垂らすと美味かったんだぞー。

デスクうーん 何か生たまごを飲むって精力つけたいおっさんが鼻つまんで「えい、やぁ」で飲む、というイメージが強いんですけど…。昭和30年代っぽい感じで。

ベティー隊員 コップで飲むと黄身も白身も一気に口に入ってきますよね。味がついていなければ結構キツいものがあるかも。

 これは昔のたまごが有精卵であったからであろう。いまは普通、無精卵で有精卵はなかなか手に入らない。色川武大の「喰いたい放題」を読んでいたら、やはり「有精卵が手に入らなくなった」と書いていた。1984年だからいまから20年も前のことである。

 この近辺の写真は豊下製菓の豊下さんから送っていただいたものである。

有精卵と立春朝採り烏骨鶏卵の外見(豊下製菓の豊下さん提供)

ご意見 我が家で常備している有精卵と立春朝採り烏骨鶏卵の外見と割卵です。割卵では同じような大きさに見えていますが、烏骨鶏はLサイズの6割の大きさ。
 もう1枚のネギは、大阪市内の農地で昨年に発見された、九条ネギの原種といわれている難波ネギです。大阪府立食とみどりの総合技術センターの試験圃場の温室で撮影しました。楽屋裏で出番を待っているところです。やや時季がはずれていますが、食べてから3日も臭っていました。


 良すぎるくらいのタイミングで有精卵の写真の来着である。烏骨鶏のたまごも有精卵。実にみごとである。どこで手に入れたんですか?

鵡川のシシャモ(ちょっとこがしちゃった=デスク)

 魚卵といえばシシャモ。しかも本物の。

 札幌の雪あかりさんから貴重な鵡川のシシャモを送っていただいた。一般にシシャモとして出回っている「カペリン」とは魚体の色が違う。身の味わいが違う。たまごのうまみが違う。雄がおいしい。

 フライパンかホットプレートにクッキングシートを敷き、焦がさないように弱火でじっくり焼くのがコツとか。これで一杯やるぞ。うー、たまらんだろうなあ。

鵡川のシシャモの干物

 雪あかりさん、ありがとうございました。

デスク乱入 いっしょにいただいた干物もチョー美味しかったです。いけずな京女さんにいただいた京都の銘酒のアテにいただきました。カリカリで噛むとどんどん味が出て美味しい日本酒にぴったりなのです。もうむさぼり食い、飲んでしまいました。ありがとうございました。

 例の黄身残し教穏健派が発言を求めている。

ご意見 半熟の黄身に醤油を注ぎ込んでぐるぐるしたいならゆで卵か温泉卵でできるじゃないですか? 油分が欲しいと言うならフライドエッグがあります。しかも、目玉焼きを構成する白身をどう楽しむか、お考えになったことはありますか?
 神は一つ目目玉焼きで太陽と空を現し、二つ目目玉焼きで人の顔を現したのです。そして、三つ目目玉焼きはぜいたくだからいけないとされたのです。
 空のない太陽がないごとく、顔のない目がないごとく、白身のない目玉焼きはありえないのです。
 卵のおいしさは黄身にしかないと思われる方には、質の悪い卵では良いメレンゲはできないことのみを指摘しておきます。
 オムレツやスクランブルエッグが黄身と白身のハーモニーを楽しむものなら、目玉焼きはそれぞれのソロを楽しむものなのです。白身のカリッとした食感と熱を加えた濃厚な黄身の味を楽しみましょう。
 そうすれば、いきなり黄身をすすって、白身を無視するような食べ方がいかに××であるか、神の御心にそわない行為であるかご理解できると思います( 太ったオオカミさん)


 一部編集し、一部を伏せ字にさせていただいた。伏せ字は久しぶりである。

 私はお腹が空いているとき、目玉焼きの黄身の真上を通る中心線でまっぷたつに切り、それをウスターソースまみれにして一口で食べる。白身がどうの黄身がどうの考えたことがない。これから目玉焼きを食べるときには少しは考慮したいと思う。

 でもこの方が原理主義者でなく穏健派でよかった。

 外国での生たまご事情についてドイツ在住の「こんどはチョコレートがお題にならないかな」さんから「こちらの人も知らず知らずに卵を生で食べてます。ムースに卵の黄身をあわ立てた『卵の黄身クリーム』を使う場合があり、確実に生です」とのメールをいただいた。

 先週紹介したイタリアの桔梗庵さんからのメールにも「ティラミスはマスカルポーネチーズ、砂糖、生卵の黄身などをぐちゃぐちゃに混ぜた物で、最後まで火は通しません。姿は見せなくても生卵を食べていることになります」という文章があった。

 なんだかんだと言いながら、彼の地でも生たまごは食べられている。勉強になりました。

小浜の焼き鯖

 繰り返すが、次回のテーマは「青魚」。そこんとこよろしく。

 このサイトが更新されたころ私は八戸にいる。17日夜は石毛直道さん、三林京子隊長、熊谷真菜日本コナモン協会会長と会うことになっている。そしてそこにサプライズゲストの作曲家船村徹さんがいるはずである。

 なぜB−1グランプリに船村さんが? はい、単なる成り行きです。18日のイベント初日には会場の八食センターに登場してもらうことになっている。そこで出展者自慢の食べ物の数々を堪能していただきたいと思う。

 イベントの模様は小紙夕刊「食を歩く」で18、25の両日にわたってベティー隊員が報告する。

 ネットでも会場のライブ映像をご覧いただける。仮想投票も可能である。http://b-1gp.cande.biz/にアクセスしていただきたい。

 では、また来週。

(編集委員 野瀬泰申)

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