【モスクワ大前仁】前原誠司外相が今月11日の日露外相会談で、3月の主要8カ国(G8)外相会議に合わせた2国間会談の開催を提案しながら受け入れられなかったことが分かった。ロシア側は対日強硬姿勢を強めており、北方領土住民と日本側の交流を支えてきた「ビザなし交流」への影響も懸念される事態になっている。
日露外交筋などによると、前原外相は3月14~15日にパリで開かれるG8外相会議での再会談を打診したが、ラブロフ露外相は明確な回答を避け、事実上提案を拒んだ。G8外相会議の日程が発表されていなかったことなどを理由にしたという。
ルカシェビッチ・ロシア外務省報道官は17日、日本との平和条約交渉について「領土問題にだけ焦点を当てた交渉は適切でない」と述べ、領土問題では「(日露の)立場がかけ離れているので交渉の用意はない」と発言。「4島の帰属確認」を原則とする日本に譲歩を迫っている。
北方領土を巡り92年に始まった「ビザなし交流」では、両国が3月に今年の実施内容について協議する予定だ。だが、ロシアの国境警備局やサハリン州当局はここ数年、交流が国内法に抵触していると主張し、新たな書類の提出を求めるなど圧力を強めてきた。
「(中断は)日露に残された窓口を閉ざしてしまうことになり、破局的だ」(サルキソフ露外交アカデミー日本・北東アジアセンター所長)と懸念する声が出ている。
毎日新聞 2011年2月19日 2時30分(最終更新 2月19日 3時06分)