2011年1月15日 11時48分 更新:1月15日 13時56分
大学入試センター試験が15日始まった。各地の試験会場では、長引く不況の影響で国公立大や親元から通える地元の大学を選ぶ受験生の姿が目立った。就職に有利とされる理系の学部や資格が取得できる学部に人気が集まっているのも今年の傾向だ。【まとめ・井上俊樹】
東京都文京区の東京大学。午前7時半すぎ、カバンに合格祈願のお守りを付けて東大の試験会場に一番乗りした練馬区の受験生(18)は「就職率の高い大学を選んだ。保育士の資格が取れるから」と、東京家政大を志望するという。
埼玉県川口市の男子生徒(17)は、第1志望が法政大理工学部。「情報通信関係の就職に強いと聞いている。ニュースで見る就職難は人ごとではない。就職は一生にかかわることだから強く意識している」と話した。
同様の声は各地でも。京都市左京区の浪人生(19)も「進路を選ぶ際に就職難の影響はあった。将来を考えて医学部にした」という。
神戸女子大文学部教育学科志望の大阪市の女子生徒(18)は「大学に行くのは就職するため」ときっぱり。「教員免許があれば就職にも役立つし、安定していそうなので志望大学を決めた」と話した。
家庭の経済事情も進路に影を落とす。弘前大を志望する札幌市北区の女子生徒(18)の目標は看護師になること。「資格を取得して就職を有利にしたい」と話す。経済的な事情から受験するのは国立大のみ。「合格すれば大学の寮に入ってアルバイトし、親からの仕送りを少なくするよう頑張りたい」と意気込む。
仙台市青葉区の女子生徒(18)は「親に負担をかけたくない」と受験する大学を地元の東北大一本に絞り、福岡県大野城市の男子生徒(18)は「受験するのは地元の私立大2校だけ。自宅から通うように親からも頼まれた」と打ち明ける。
厳しい環境の中でも、何とかして夢を追いかけようとする受験生は多い。愛知県大府市の男子生徒(18)は将来、マスコミで働くのが夢で、「マスコミに強いとされる早稲田大が第1志望」。メーカー勤務の父親は、景気低迷などで来年度から給料が減額される見込みだが、「『奨学金を活用するから』と言って父を説得した」と話した。
受験生の地元志向は大手予備校の調査からも明らかだ。約28万人が参加した昨年10月の河合塾模試。国公立大の志望者は前年比5%増えたが、地区別では近畿9%増▽北海道8%増▽東海・北陸7%増の伸び率が顕著だった。私立大の志望者(8%増)も北海道、東北、中国・四国がいずれも18%増となるなど、地方ほど増えた。
就職に有利とされる理系や資格系学部の人気の高まりもうかがえる。国公立大の志望動向を学部別に見ると、「法」「経済」など社会科学系が前年並みだったのに対し、「理」「工」「農」「医療」などの理科系は5~9%増。教員養成系は10%の大幅増となった。
河合塾が昨年末、全国の高校教員2176人を対象に行ったアンケートでも、約7割が「就職を意識した学部を選ぶ傾向」や「通学可能な大学を選ぶ傾向」が「強まっている」と回答。河合塾は「厳しい経済環境が進路選択に影響を及ぼしている」と分析している。【井上俊樹】