2011年1月14日 20時47分 更新:1月14日 22時29分
菅再改造内閣の発足を受け、市場では財政再建や環太平洋パートナーシップ協定(TPP)参加問題の進展を求める声が上がった。財政再建論者の与謝野馨氏の入閣は評価する声が多いものの、衆参で与野党が逆転する「ねじれ国会」の打開策は見えないまま。14日の株式や債券市場は改造にほとんど反応せず、改造内閣が実際に成果を上げられるかどうかを、市場は冷静に見つめているようだ。
内閣改造の「目玉」となったのは、与謝野氏の経済財政担当相への起用。JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミストは「財政再建と社会保障改革に本気で取り組むという菅首相の意思の表れだ」と話す。経済産業相にTPP積極推進派である海江田万里・前経財相を充てたことも「TPP推進の体制ができた」(ニッセイ基礎研究所の櫨浩一経済調査部長)と、布陣については評価する声が多い。
ただ、ねじれ国会の下、政策を実現するための実行力についての見方は厳しい。自民党で比例当選した与謝野氏が、たちあがれ日本を旗揚げし、今回はその党も離党して入閣したことには、与野党から批判が強い。加えて消費税増税には民主党内でも反対論が根強く、「与謝野氏起用は税制抜本改革に不可欠な与野党連携にはかえってマイナスに働きかねない」(日興コーディアル証券の野村真司チーフ債券ストラテジスト)と心配する見方がある。また、「今春の統一地方選は苦戦が予想され、菅政権が維持できるかどうかも分からない」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘シニア投資ストラテジスト)との声もあり、「とにかく実績を」というのが市場の声だ。
こうした見方を反映して、14日の東京株式市場は日経平均株価終値は前日終値より90円下落し1万500円をわずかに割り込み、円相場は1ドル=82円台半ばと大きく動かず、「株価、債券、為替のいずれも内閣改造には反応しなかった」(アナリスト)。
一方で、「改造で内閣支持率が回復すれば、与党内の求心力も強まり、野党も政権の方針を無視できなくなる」(野村氏)と期待を寄せる声もある。今回の再改造が、デフレ脱却や景気回復など日本経済の底上げにつながるものかどうか、支持率の動向も含めて市場は注視している。【田所柳子、大久保渉、和田憲二】