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Intelの最新ロードマップで確認する,次世代CPU「Ivy Bridge」&「Sandy Bridge-E」の立ち位置
Intelはまた,NetbookやNettop,あるいはタブレットPCの市場でも,統合型グラフィックスを強化し,競合他社製品との差を詰めようとしている。
今回は,そんなIntelの最新ロードマップから,次世代CPUの仕様と,Intelの戦略を確認していきたい。
Intel製デスクトップPC向けCPUのロードマップ。詳細は後述する |
次世代CPU「Ivy Bridge」はGPU強化がキモ
DirectX 11対応のミドルクラス向けという位置づけ
Intelは,同社が2012年第1四半期に市場投入を計画しているメインストリーム市場向けCPU,Ivy Bridgeのセールスポイントを,「グラフィックス性能の強化」だと位置づけている。
そのCPUコア部は,最大で4コア8スレッド対応,容量8MBのLLC(Last Level Cache)搭載という仕様になっており,端的に述べて,Sandy Bridgeからの大きな変化はない(※アンコア部は必ずしもそうではないが,そのあたりは後述)。一方,GPUコア部では,実行ユニット(Execution Unit)の数がSandy Bridgeの最大12基から同16基に増強され,DirectX 11への対応も果たされる予定だ。
大手PCベンダーの関係者は,エントリークラスの単体GPUと同等のビデオ再生機能を搭載したSandy Bridgeが単体GPU市場を現在進行形で脅かしているとしつつ,「続くIvy Bridge世代では,3Dグラフィックス機能や性能でも,エントリー市場向けの単体GPUを無力化する計画を,Intelは持っている」と言う。
Intelがその技術的な詳細を明らかにしていないため,「DirectX 11対応に必須となるテッセレーション機能をどう実装するか」など,Ivy Bridge世代のグラフィックス機能に関しては,まだ不明な部分が多い。また,Intelに近い関係者によれば,次世代GPUコアのアーキテクチャは,現行のIntel HDグラフィックスを踏襲するものとのことで,劇的な3D性能の向上は望み薄ともいえる。しかしIntelが,3D機能&性能の底上げに本腰を入れていることだけは確かなようだ。
ここで,「本腰を入れたところでエントリー市場向けじゃ,全然使えないだろ」と思った人は鋭い。
第1世代のCore iプロセッサを完全に“喰う”性能を示すSandy Bridgeだが,実のところIntelは,その後継となるIvy Bridgeを,よりミドルクラス〜エントリー市場――同社が言うところの「メインストリーム」――へシフトさせる意向を固めているのだ。そのため,Ivy BridgeがDirectX 11対応のエントリー市場向け単体GPUと同等のグラフィックス性能を持つというのは,むしろSandy Bridgeよりも,バランス的に落ち着くこととなる。
LGA1155プラットフォームの第2弾となるIvy Bridgeを,より下位の市場へ向ける理由は,Intelが2011年末に,LGA2011パッケージを採用したハイエンド〜ハイクラス市場向けCPUとしてSandy Bridge-Eを投入する予定になっていることが挙げられよう。そう,2012年以降,Intelは,Sandy Bridgeの上位モデルを,LGA2011パッケージのSandy Bridge-Eで置き換える計画を持っているのである。
なおIntelは当初,ハイエンド市場向けに「Sandy Bridge B2」を開発していたが,2010年末になって,「Sandy Bridge B2の計画を中止,より拡張性の高いSandy Brige-Eを採用する」と,主要OEMベンダーやマザーボードベンダーに対して通達している。
LGA2011&LGA1155は3年間続くプラットフォームに
Panther PointではいよいよUSB 3.0対応も
あくまでも「現時点の計画」である点をお断りしつつ書き進めると,デスクトップ向けのSandy Bridge-Eは最大6コア12スレッド仕様となり,LLC容量は最大15MBとなる見通しだ。また,4コア8スレッドでLLC容量が10MBとなる下位モデルも用意される見込み。両モデルが4チャネルDDR3-1600対応のメモリコントローラと40レーンのPCI Express 3.0インタフェースを採用することも明らかになっている。
Sandy Brige-Eに対応するチップセット「Patsburg」(パッツバーグ,開発コードネーム)は,最大10基のSerial ATA 6Gbpsポートと,最大4基のSerial ATA 3Gbpsポート,最大14基のUSB 2.0ポート,最大8レーンのPCI Express 2.0にそれぞれ対応する。USB 3.0対応は当初の計画どおり見送られているため,PC&マザーボードベンダーは,外付けコントローラによって対応を実現することになる。
一方のIvy Bridgeでは,先ほど「後述する」と述べたアンコア部分で,まずメモリコントローラがデュアルチャネルDDR3-1600へと進化。Sandy Bridge-Eと比べてレーン数こそ16と少なくなるものの,PCI Express 3.0インタフェースを搭載するのも特徴となる。また,22nmプロセス採用の恩恵を受けて,動作クロックもSandy Bridgeより引き上げられる見込みだ。
組み合わされるチップセットは「Panther Point」(パンサーポイント,開発コードネーム)。Ivy BridgeとPanther Pointによるプラットフォーム「Sugar Bay」(シュガーベイ,同)のブロックダイアグラムは下に示したとおりだが,Panther Pointで,ついにIntelのチップセットはUSB 3.0対応を果たすことになる。
ただし同チップセットは,ミドルクラス以下の市場向けということもあって,PCI Express 3.0インタフェースを備えない模様。CPUとの接続インタフェースも,Intel 6シリーズチップセット同様,DMI 2.0×4に留まると見られる。
ちなみに,Intelは,OEMベンダーにLGA1155とLGA2011について「少なくとも3年間は互換性を保つ計画」と説明しているので,両者とも息の長いプラットフォームとなりそうだ。
Sugar Bayプラットフォームのブロックダイアグラム |
低価格CPUも統合型グラフィックスを強化
Cedar TrailはDirectX 10.1をサポート
グラフィックス機能に話を戻すと,Intelは,NetbookやNettopといった低価格市場向けCPUの統合型グラフィックス機能も強化する計画を持っている。
例えば,2011年末の登場が見込まれる次世代(または次々世代)Atomプラットフォーム「Cedar Trail」(シダートレイル,開発コードネーム)では,遅まきながらDirectX 10.1への対応が実現されるという。
Cedar Trailプラットフォームは,従来の「Diamondville」(ダイアモンドビル)や「Pineview」(パインビュー)と同様に,初代Atomから採用されている「Bonnell」(ボンネル)CPUアーキテクチャを踏襲するが,統合型グラフィックスは一新され,HDビデオのフルデコード機能も実装される。
大手PCベンダーでタブレット端末の開発に携わる担当者によれば,「Cedar Trailプラットフォームの統合型グラフィックスは,描画性能が現行製品比で2倍に高められる」とのことだ。
2011 2011 International CESで公開されたSwitchbladeプロジェクトのコンセプトモデル。展示していたIntelブースで,スタッフは「現行ゲーム機並の性能を実現する」と語っていた。……もちろん,「現行のゲーム機」といっても,いろいろあるわけだが |
Intelロゴが左上に刻印されているのは,同社が本機の開発に深く関わっていることを示唆するものだ |
コンセプトモデルには,RazerロゴだけでなくIntelのロゴも刻まれており,Intelがその開発に深く関与しているのは明白だが,Intelに近いOEM関係者は,Switchbladeの製品版が「Cedar Trail世代で市場投入で市場投入されるはずだ」と予測。同関係者は,「このコンセプトモデルは,PCゲーム市場の裾野を広げる試みのひとつ。Intelは,(IAベースの)モバイル端末でもゲーム市場を視野に入れている」とも付け加えている。
Razer USAの製品展開戦略からすると,1年後に具体的な製品の形が見えてくるというのは十分にあり得る話で,いきおい,Cedar Trailプラットフォーム採用というのも現実味を帯びてくるが,Intelがこのように,モバイル端末や低価格PC向けCPUで積極的なゲーム性能の強化を目指す理由は,競合の動向と無関係ではないだろう。
DirectX 11対応のGPUコアを統合したAMDのFusion APU(Accelerated Processing Unit)はもちろん,NVIDIAの「Tegra 2」などといったARMベースのプロセッサが持つ3Dグラフィックス性能の高さは,急成長を続けるタブレット端末や低価格PC市場において,Intelの主導権を脅かす存在だと言えるからだ。
Intelはこれまで,3Dグラフィックス性能の重要性を認識しながらも「PCユーザーの大多数は動画ユーザーだ」として,HDビデオ支援機能の強化を優先してきた。しかし,最新の市場予測では,2013年にも,オンラインを含むPCゲーム市場が,コンシューマゲーム市場を上回るとされており,Intelとしても,そんな成長著しい市場と真剣に向かい合う必要が出てきたということなのだろう。
Ivy Bridge&Sandy Bridge-Eは
高クロック化できるかが鍵
大手PCベンダー関係者は「Sandy Bridge以降のCPUにおいて,プロセス技術の進化とアーキテクチャの進化を振り子のように繰り返していく『Tick Tock』(チックタック)モデルが変わりつつある」と指摘する。さらに,「今後のIntel CPUは,半導体プロセスが成熟するTockのタイミングで新しいCPUアーキテクチャへ移行することは変わらないものの,Tickで新プロセスへ移行するときは,CPUコアアーキテクチャをそのままに,グラフィックスコアの世代を進化させることになる」という。そんな新しいTick TockモデルのTick第1弾となるのが,22nmプロセスのIvy Bridgeというわけだ。
ちなみにIntelは,Sandy Bridge-Eの4コアモデルやIvy Bridgeで,動作クロックを引き上げることにより,同価格帯の「Bulldozer」(ブルドーザ,開発コードネーム)比で10〜30%高い性能を発揮できると,大手OEM関係者に対して説明している。動作クロックの引き上げがどの程度になるかはまだ分からないが,Sandy Bridge-EやIvy BridgeがBulldozerといい勝負になるとすれば,それは,エンドユーザーであるゲーマーに,それこそ価格など,さまざまなメリットをもたらしてくれるだろう。
2011年以降,Intel製のデスクトップCPUがどのように位置づけられていくかをまとめた表 |
- 関連タイトル:
Ivy Bridge(開発コードネーム)
- 関連タイトル:
Sandy Bridge-E(開発コードネーム)
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