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2009年 9月 20日

「ジャニーズ系作家」大野智、岡田准一の並々ならぬ才能

ビジネスマンのための「現代アートABC」【第36回】

私が並々ならない才能を感じているアイドルが二人います。ぜひきちっとした展覧会をやっていただきたいものです。

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もともと歌手や俳優という職業は、自分を表現しているのですから、芸能と芸術はかなり近いところにあります。また、基本的に歌の才能や演技の才能がある方は、器用だと思いますし、仕事の経験を通じて、色や形のバランス感覚なども磨かれていると思うのです。芸能人の方々が、現代アートの作り手になったり、コレクターになったりして、少しでも現代アートに興味を持つきっかけを作ってくれたら、本当に嬉しいです。

初の個展「FREESTYLE」にあわせて出された大野智さんの作品集
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初の個展「FREESTYLE」にあわせて出された大野智さんの作品集

実は、私が並々ならない才能を感じているアイドルが二人います。意外に思うかもしれませんが、一人は嵐の大野智さんです。正直に言えば、この人が作品を作っていると聞いた時、「そんな時間あるわけないじゃない」と思っていました。また、ジャニーズ事務所は、所属タレントにアート作品を積極的に発表させたことはないと思いますし、半信半疑だったからです。しかし一昨年の作品集「Freestyle」と個展を見て、ちょっと驚きました。大野さんご本人が「描きたくてしかたがないし、寝る時間を削ってでも集中してしまう」と語っていた通り、好きで好きで仕方がない、ということが作品から伝わってくるのです。自分を良く見せようとか「ほら、凄いだろう」というような自己顕示欲も全く感じませんでした。

前述の通り「アーティスト症候群」の中に実名で芸能人アーティストのことが書かれていますが、芸能人アーティストの中には、アシスタントを使い、その人に大部分を描かせたり、あるいは先生がいてその先生の作品とそっくりに描いている方も少なくありません。しかし、大野さんの場合は、独創的だし、ほとばしる表現衝動をそのまま表現している、生成りの良さ、があると感じました。黒人の頭部をお洒落なフィギュアにしている作品などは、例えば、展覧会場にぎっしり展示されるほどたくさんの数を展示出来たら、きっと非常にユニークなインスタレーションになると確信します。

もう一人、才能を感じるのがV6の岡田准一さんです。先日、何気なく、手にしたPR誌に、写真作品が掲載されていました。また映画館のロビーに岡田さんの写真作品が飾られているのを見ました。岡田さんに近い方から、彼は本当に一流デザイナーになれるくらいの才能があるんだ、という話を聞いたことはあったのですが、その話が納得できるクオリティでした。

私は写真については、まずはフレーミングをみます、絵画でいえば構図ですね。さらに光の指している方向を確認します。そして構成力をチェックします。岡田さんの写真では、光がやわらかく、なんというか、包容力のある光が表現されていました。また構図としては、左右対称を避けた、アンシンメトリカルな構図が多く、欧米の写真家に多くみられるような、色で描く写真、の表現になっていました。PR誌のインタビューでは「他のクリエーターとコラボしてみたい」と語っておられましたが、ぜひ挑戦していただきたい、と強く思います。これは勘になりますが、おそらく岡田さんは写真だけではなく、もっと芸術的な表現が出来るような気がします。

たまたまお二人共に、ジャニーズ事務所に所属される方ですが、関係者の方がおられたら、ぜひきちっとした展覧会をやっていただきたいものです。また、若い女性に対して多大な影響力を持っている二人ですので、例えば、現代アート業界から言えば、大野さん、岡田さんが「美術館へ行くのが楽しい」とか美術館に行くとお二人に出会う確率が高いというようなことになれば、本当に有難いです。私は感性の強い芸能人の方が、現代アーティストになっていく日も近いと思っています。

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プロフィール

山口 裕美

Yumi Yamaguchi●アートプロデューサー&アートジャーナリスト。アーティストをもっとも近くから応援するその活動から「現代アートのチアリーダー」の異名を持つ。ウェブサイト、トウキョウトラッシュを主宰。アート系NPO法人芸術振興市民の会(CLA)理事。エレクトロニックアートの祭典「eAT金沢99」の総合プロデューサー、2004年ARS ELECTRONICA ネットビジョン審査員。著書に「TOKYO TRASH web the book」(美術出版社)、「現代アート入門の入門」(光文社新書)、「COOL JAPAN-疾走する日本現代アート」(BNN新社)、「芸術のグランドデザイン」(弘文堂)、「Warriors of Art」(講談社インターナショナル)、最新刊「The Power of Japanese Contemporary Art」(アスキー)がある。

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