このような政治家が昨年6月まで首相を務めていたかと思うと、背筋が寒くなる。沖縄の米軍普天間基地問題をめぐる鳩山由紀夫前首相の発言を聞いて、こう感じた有権者は少なくないだろう。
鳩山氏は在任中の昨年5月、普天間基地の同県名護市辺野古への移設を定めた日米合意を交わした。それまで掲げてきた県外移設を断念した理由として「学べば学ぶにつけて」海兵隊の抑止力の大切さが分かったと説明した。
ところが、最近の共同通信や沖縄地元紙とのインタビューで、抑止力を理由に挙げたのは「方便だった」と発言した。沖縄に米軍がいる意味を理解しないまま、後付けの理由として「抑止力」という言葉を使ったことを認めたわけだ。
日本の安全保障に責任を持つ首相は、在日米軍の役割を熟知していなければならないのは当然だ。鳩山氏は最後まで安全保障の基本知識を身につけず、首相に必要な最低条件すら満たしていなかったことになる。
鳩山氏はこのほかにも自らの信頼を傷つける発言を繰り返してきた。首相をやめた直後には次期衆院選に出馬しないと言明しておきながら、撤回している。
菅直人首相は鳩山発言について「私の認識とは違っている」と語り、北沢俊美防衛相も「理解できない」と反発した。菅政権は普天間移設を巡る日米合意を堅持し、在日米軍の役割を重視する立場をとっている。鳩山発言を批判し、一線を画すのは当然だが、それだけでは不十分だ。
鳩山発言はすでに各方面に波紋を広げている。沖縄では「抑止力」が県外移設断念の方便に使われたとして、日米合意の見直しを求める声が出ている。
外交への影響も気がかりだ。米政府はいまのところ静観の構えだが、北方領土問題で攻勢を強めるロシアや軍拡を加速する中国に、日本の安全保障政策がぐらついている印象を与えないか心配だ。
こうした事態を抑えるため、菅政権に求められるのは行動だ。まずは在日米軍が日本の安全に果たしている役割をもっと詳しく国民に説明し、沖縄をはじめとする人びとの理解を得る努力を尽くす必要がある。
鳩山由紀夫、北沢俊美、菅直人、沖縄、方便、米軍、普天間基地、首相、基地問題、在日米軍、抑止力、発言、インタビュー
日経平均(円) | 10,842.80 | +6.16 | 18日 大引 |
---|---|---|---|
NYダウ(ドル) | 12,318.14 | +29.97 | 17日 16:30 |
英FTSE100 | 6,059.42 | -27.96 | 18日 12:52 |
ドル/円 | 83.37 - .40 | -0.16円高 | 18日 21:46 |
ユーロ/円 | 113.25 - .28 | -0.06円高 | 18日 21:46 |
長期金利(%) | 1.295 | -0.040 | 18日 15:11 |
NY原油(ドル) | 86.36 | +1.37 | 17日 終値 |
経済や企業の最新ニュースのほか、大リーグやサッカーなどのスポーツニュースも満載 詳細ページへ
日経ニュースメール(無料)など、電子版ではさまざまなメールサービスを用意しています。
(詳細はこちら)