きょうのコラム「時鐘」 2011年2月18日

 寒くてもコートを着ないのが中高校生である。寒くないのかと感心していたら投書欄で当の高校生が「愚かな我慢比べはやめようぜ」と呼びかけていた

各世代には世代の美意識がある。登下校の寒さを辛抱するのも、中高校生の美学であり「かっこよさ」なのだろう。辻立ちで演説する政治家もコートは着ないという。暖かい姿では同情されない。かわいそうと思われなくては票にならない。これも愚かな我慢比べか

かつて福沢諭吉は「やせ我慢の説」を書いた。幕臣だった勝海舟や榎本武揚が新政府で重用されるのを批判したのだった。海舟はその批判を無視した。政治家の評価は世間がすること、自分は預かり知らぬと一蹴したのである

言う方も言われる側も、さすが維新の大物だった。この大物と比較するのは心苦しいが「党員資格停止」の寒風にもめげず、取り巻き議員が風よけの壁を作る大物に「やせ我慢の美学」は無縁のようだ。党分裂気味の争いは「愚かな我慢比べ」に見えるのだが

やせ我慢は愚かに見えても同情を集め、まったくなければ面憎(つらにく)い。政治家が武器とするには難しい。