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【社会】

無罪主張の難事件 ことし続々 裁判員に重い負担

2011年2月17日 朝刊

 無罪か死刑か。裁判員裁判三年目を迎える今年、無罪主張の被告に、検察が死刑を求める可能性がある重大事件が各地で裁かれる見通しだ。直接証拠に乏しい中、難しい事実認定と究極の判断を迫られる裁判員の心身の負担は一層重くなる。

 裁判員裁判での全面無罪判決はこれまでに五件。

 このうち昨年十二月、鹿児島地裁で審理された強盗殺人事件では、死刑が求刑された。被告は犯行を否認、目撃証言もなかったが、検察側は現場で見つかった被告の指紋や掌紋などから、被告が犯人だと主張。判決はこれらの間接証拠を慎重に吟味し「決め手にはならない」と結論づけた。日程は過去最長の四十日に及んだ。

 これと似た構図の裁判が二月二十四日、東京地裁で始まる。二〇〇九年、東京都港区のマンションで男性=当時(74)=を刺し殺したとして、強盗殺人罪に問われた伊能和夫被告(60)の裁判員裁判で、被告は捜査段階から否認し無罪主張の方針だ。

 検察側は、伊能被告の靴底に付いていた被害者の血痕などを柱に、被告が犯人であることを立証する予定。さらに被告は約二十年前にも妻と三歳の娘を殺害し、懲役二十年の刑を受けて服役しており、厳しい求刑となる可能性がある。

 日程は二十日間で、東京地裁ではこれまでで最も長い。間接証拠の評価に加え、有罪の場合に前科や服役経験をどう捉えるのか。裁判員は、それまでの人生経験を超えた判断を迫られる。

 同様に、被告が犯人かどうかが争われる重大裁判は、東京都と埼玉、千葉両県の男性連続不審死で三件の殺人罪などに問われた木嶋佳苗被告(36)、鳥取県の男性二人不審死で強盗殺人罪などに問われた上田美由紀被告(37)が、それぞれさいたま、鳥取両地裁で公判前整理手続き中。

 検察側は間接証拠を積み上げて有罪立証を図るが、いずれも被告側は起訴内容を否認する方針。ある検察幹部は「こうした事件は、証拠を一つ一つ見ても犯人に結び付かないが、まとめてみると『犯人はこいつしかいない』となる」と話すが、死刑か無罪か迫られた場合、裁判員が同じ答えを出すのかは未知数だ。

 

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