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【社説】

「抑止力は方便」 沖縄を愚弄する放言だ

2011年2月17日

 鳩山由紀夫前首相が米軍普天間飛行場の沖縄県内移設の理由に挙げていた抑止力維持が「方便だった」と発言した。県内移設の根拠が崩れたばかりか、沖縄県民を愚弄(ぐろう)する放言との誹(そし)りは免れまい。

 【方便】目的のために利用する便宜の手段。「うそも方便」(広辞苑)。うすうす感じていたが自ら方便と口にするとは。正直すぎるのか、政治家としての発言の軽さに気付いていないだけなのか。

 「最低でも県外移設」を公約して政権交代を果たした鳩山氏が県外を断念し、名護市辺野古への県内移設に回帰したのは昨年五月。

 その際の説明は「学べば学ぶにつけ沖縄に存在する米軍がすべて連携し、抑止力を維持できるというという思いに至った」だった。

 しかし、最近行われた沖縄県の地元紙などのインタビューで発言の真相について「(鹿児島県)徳之島も駄目で辺野古となった時、理屈付けをしなければならなかった。それ(抑止力)を方便と言われれば方便だが」と明かした。

 つまり「海兵隊の存在が直接、戦争の抑止になるというわけではない」(鳩山氏)が、抑止力という概念を持ち出して、県内移設の根拠を作り上げた、というのだ。

 公約を守れなかった言い訳に、抑止力を持ち出したのだろうと想像はしていたが、ここまで開き直られると、あきれてしまう。

 「緊密で対等な日米関係」を掲げ、国外・県外移設を目指した鳩山氏の姿勢自体は評価されるべきだ。問題は、それを実現できなかった政治的力量不足にある。

 鳩山氏もインタビューで「防衛省も外務省も沖縄の米軍基地の存在を当然視し、かなり凝り固まっている」と、官僚の壁に阻まれたことを認めている。政治主導を掲げながら、官僚の壁を崩すに至らないのは民主党政権の欠陥だ。

 移設先を辺野古とする鳩山政権末期の日米合意を引き継いだ菅直人首相は、今年前半で調整している訪米時に「同盟深化」の共同声明を発表する予定だという。

 しかし、名護市では市長や市議の過半数は県内移設反対派だ。仲井真弘多知事も県外移設を求める姿勢に転じており、地元の同意を得るのは至難の業だ。

 政権弱体化が進む首相には、県内移設を進める力すら残っていないのが現実だろう。行き着く先は危険な普天間飛行場の固定化だ。せめて首相には、同盟深化を方便に、沖縄に基地負担を強い続けるようなことのないよう望みたい。

 

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