大阪、愛知、岐阜の3府県で94年、男性4人が殺害された3件の連続リンチ殺人事件で強盗殺人罪などに問われ、2審で死刑判決を受けた当時18~19歳の元少年3被告の上告審弁論が10日、最高裁第1小法廷(桜井龍子裁判長)で開かれた。弁護側は「更生可能性がある」と死刑回避を主張、検察側は上告棄却を求めて結審した。判決期日は後日、指定される。【伊藤一郎】
被告は、愛知県一宮市生まれの当時19歳の男(35)▽大阪府松原市生まれの当時19歳の男(35)▽大阪市西成区生まれの当時18歳の男(35)。
1審の名古屋地裁(01年)は、2件は殺人と認めたが、1件を傷害致死と認定し、「主犯格」と認めた一宮市生まれの元少年に死刑、他の2人に無期懲役を言い渡した。一方、2審の名古屋高裁(05年)は3件とも殺人と認め「役割に差はない」と全員を死刑とした。
上告審で元少年側は「2審は、恵まれない環境で育ち、健全な発達を阻害された少年の精神的未熟さを十分に考慮していない」などと主張。「1件は1審の認定通り、殺人でなく傷害致死にとどまる」とも述べた。
検察側は「4人の命を奪った責任は誠に重大。犯行時少年だったことが、死刑を回避すべき特別な事情にはならない」と反論した。
2審判決によると、3被告は94年9~10月、大阪市内で無職男性(当時26歳)を殺害▽愛知県尾西市(現・一宮市)の木曽川堤防で型枠解体工の男性(同22歳)を殺害▽同県稲沢市で当時19歳と20歳の男性を連れ回し、岐阜県輪之内町の長良川河川敷で殺害--するなどした。
長良川河川敷で殺害された江崎正史さん(当時19歳)の父、恭平さん(66)は昨年10月8日夜、事件があったとされる時刻に合わせて、息子が連れ回された現場5カ所を妻のテルミさん(65)と初めて巡った。7月に上告審の弁論期日が指定された後、最初の命日だった。最後の裁判に臨む前に自らを奮い立たせたという。
夫婦が河川敷にたどり着いたのは、9日午前1時ごろだった。「こんな冷たい地べたで、なんで殺されんとあかんかったのか」。恭平さんは改めてこみ上げてくる怒りに震えた。
恭平さんは「最高裁が2審判決を維持しないと、私たち遺族は新しい一歩を踏み出せない」。最後の判決まで、息子の写真を携えて傍聴するつもりだ。
毎日新聞 2011年2月11日 東京朝刊