2011年2月17日17時0分
南海フェリーの和歌山側のオリジナルキャラクター=南海フェリー提供
ハンドタオルに描かれた「うたか3姉妹」。右端が「まりん」ちゃん=国道フェリー提供
宇野港に到着する国道フェリーの「こんぴら丸」。同社のフェリーは岡山と高松を日に22往復する=岡山県玉野市の宇野港、滝沢写す
高速道路料金の値下げで客を奪われ、苦境にあえぐフェリー会社2社が、相次いで「萌(も)えキャラ」をPR役に抜擢(ばってき)した。萌えキャラをあしらったさまざまな商品がヒットを重ねているだけに、関係者の期待は大きい。果たして、集客の「救世主」となるか――。
岡山県・宇野港と香川県・高松港を結ぶ「宇高(うたか)航路」を運航する「国道(こくどう)フェリー」(高松市)。宇野港にある宇野支店に入ると、直径約120センチの円形パネルが目に飛び込んできた。描かれているのは、水色のセーラー服を着た「うたかまりん」ちゃんだ。
イラストがあしらわれたタオルを買った岡山市の男性会社員(31)は、「こんなキャラがあったとは知らなかった」。旅行で乗った松山市の主婦飯野郁子さん(57)は「萌えキャラはフェリー会社では珍しい」と話した。
まりんは、地元出身者の思いから生まれた。
1988年に岡山県倉敷市と香川県坂出市を結ぶ瀬戸大橋が開通し、乗客数が下がっていた国道フェリーは、2009年3月から始まった「高速道路休日上限1千円」で追い打ちをかけられた。昨年2月には同じ宇高航路に就航している四国フェリー(高松市)とともに事業廃止届を出す事態に。住民らの声に押され、両社とも撤回したが、厳しい状況が続いていた。
そんな折の昨年4月、漫画家の八的暁(やまと・あきら)さん(42)が宇野支店を訪れ、「何かに役立ててください」と、フェリーを背景にまりんが敬礼するステッカーを手渡した。
八的さんは宇野港がある玉野市出身。レース用バイクに張るステッカーのデザイナーなどをしてきた。廃業届け出のニュースを聞き、「港にフェリーが停泊する見慣れた景色」を失いたくないとPRキャラクターを考案した。
同社はすぐに起用を決定。直後からステッカーやTシャツを製造して乗り場や船内で販売すると、グッズ目的で訪れる客も出始めた。同社は今年で運航50周年を迎える。近く、2人の姉「かれん」と「いおん」を加えた3人を「うたか3姉妹」としてホームページにPRキャラとしてデビューさせる予定だ。
高速道路では4月から新たに「平日上限2千円」も始まる。宮脇幸次取締役は「集客のために一時的に運賃の割引をしたが、効果は短期間しか持たなかった。人気の萌えキャラでPRし、フェリーに乗ったことのない若い世代を取り込みたい」と期待する。