社説

文字サイズ変更

社説:朝鮮半島情勢 「北」は責任回避やめよ

 毎年恒例の大規模な米韓合同軍事演習「キー・リゾルブ」が今月末から3月にかけて実施される。日程発表は平壌で開かれた金正日(キム・ジョンイル)総書記の誕生日を祝う行事とぶつかる形になった。

 この演習はもともと北朝鮮軍の奇襲に全面反撃するシナリオで、米軍増援部隊の受け入れや前方展開、韓国軍との統合を訓練するものだ。米軍参加兵力は2万人以上になる。

 北朝鮮は年ごとに反発を強めてきた。米軍が昨年、有事の際に核兵器や生物・化学兵器、ミサイルなどの除去を担当する部隊を投入すると、演習後には韓国哨戒艦の沈没事件が起き、多国籍調査団が北朝鮮の魚雷攻撃と結論付けている。

 韓国での報道によると、今年はさらに、最高指導者の急死に伴う北朝鮮内部の混乱など急変事態に対処する訓練も予定されている。米空母も演習に参加するという。

 この流れを見ると、北朝鮮がまたもや軍事挑発に出る可能性を懸念せざるをえない。北朝鮮は暴挙を繰り返してはならないし、中国は北朝鮮への影響力を行使してほしい。

 昨年11月の韓国・延坪島(ヨンピョンド)への砲撃事件の後、北朝鮮は年明けから韓国に集中的な対話攻勢をかけた。真の狙いは米朝対話だったろうが、韓国政府は北朝鮮が「哨戒艦、延坪島」について何らかの責任を認めるのではないかと期待したようだ。特に1月の米中首脳会談後、「まず南北対話の進展、次に米朝協議、6カ国協議開催」という見方が強まった。

 しかし北朝鮮は責任回避を続ける道を選んだ。このため先週、板門店で開かれた南北高官級軍事会談の予備会談は物別れに終わり、北朝鮮は韓国のせいだと決めつけた。米高官らは北朝鮮の態度を非難した。

 このままでは早期の局面転換は望み薄と言える。16日に韓国の金星煥(キム・ソンファン)外交通商相が来日し、北朝鮮情勢を中心に前原誠司外相と会談したが、妙案はありそうもない。

 とはいえ北朝鮮も苦境脱出の展望は開けていない。食糧とエネルギーの7割以上を中国に依存し、それでも足りずに国際社会に食糧支援を要請している。今冬の寒波による農業被害や口蹄疫(こうていえき)拡大も報じられた。

 エジプトの政変も微妙な影響を及ぼしているだろう。北朝鮮はソ連製のスカッドミサイルをエジプト経由で入手し、ノドン、テポドンなどの開発につなげた経緯がある。ムバラク前大統領の独裁体制崩壊が一切報道されていないのは、金総書記の不安を示すものではないか。

 難局打開の道は、やはり韓国との和解と協力以外にない。その最初の一歩は、「哨戒艦、延坪島」の責任を認めることであろう。

毎日新聞 2011年2月17日 2時30分

 

PR情報

スポンサーサイト検索

社説 アーカイブ一覧

 

おすすめ情報

注目ブランド

毎日jp共同企画