取材ノートから

　臓器移植法に基づく国内初の脳死者からの心臓移植が大阪大病院で行われた９９年２月、日本初の心臓移植手術「和田心臓移植」を６８年８月に札幌医大で行った和田寿郎氏に電話取材した▲当時の新聞を見ると、和田氏は「３１年前を思い返すと、マスコミは関係者を悩ませたことを忘れないでほしい。ドナーと移植を受ける双方の患者と家族のために心ある報道をしてほしい」と語っている▲「あなたの不明朗な移植のため、日本の心臓移植は大幅に遅れたのではないか」という質問の答えが一番聞きたかった。しかし和田氏は自分の手術の正しさを訴えるばかりだった。その後、脳死移植は１００例を超え、県内でも先日、摘出が行われた。和田氏は正当性を主張し続けたまま１４日に亡くなった。【石川宏】