韓国軍:軍病院の恥ずべき実態(下)

銃創の専門医皆無、指の骨折も治療できず!?

 そのため銃撃などで兵士が重傷を負った場合の治療は、主に民間の病院に任せている。兵士の治療の際に軍病院では手に負えず、民間の病院に委託されたケースは2009年に2344件あった。そのため国防部(省に相当)が治療費として民間病院に支払った治療費も372億ウォン(現在のレートで約27億9000万円、以下同)に上った。この民間への委託診療件数は毎年増加しており、05年には576件だったことから、ここ4年間に4倍へと増えたことになる。委託された治療内容は主に指の切断、骨折、ヒザのじん帯損傷、脊椎損傷、複雑骨折などだ。つまり兵士の治療を行う軍病院は、自分たちが本来やるべきことさえできないというわけだ。

韓国戦争当時から使われる建物も

 ソウルから京春街道を春川方面に向かうと、春川郊外の道路沿いにみすぼらしい軍病院が見える。入り口には「健康な将兵育成」と書かれているが、病院内は、この言葉が色あせるように感じられるほど雰囲気が暗い。1972年に建設された平屋建ての病棟では、50人から60人の兵士が治療を受けていた。病院の敷地内には、韓国戦争(朝鮮戦争)当時から使われている建物もある。医療陣が患者を治療する診療室はどこもセメント作りで、古い映画に出てくる野戦病院を連想させるようなものばかりだ。救急治療室には酸素治療を行う機器がなく、必要なときには酸素ボンベを使用している。患者が共同で使用する浴場は、あちこちタイルがはがれて水が漏れ、さび付いている。現在、軍病院の多くは改装作業が行われており、新たな建物もかなりできているようだが、この病院のように、かつての幕舎病院のようなものも各地に残っている。

 軍病院の施設や機器に問題があるだけでなく、医師の治療技術も信頼できないとして、兵士の中には軍病院での治療が可能な軽傷でも、わざわざ休暇を取って民間病院に行き、自費で治療を受けるケースも増えている。昨年はこのようなケースが1300件あった。国軍首都病院に勤務するある軍医官は「軍病院で治療を受けるときは無料だが、それでもあえて外で治療を受けようとする兵士が多い」と話す。

 京畿道のある軍病院の院長(大領=大佐、医師資格保持者)は「軍医官たちは、ある程度臨床経験を積むころには除隊してしまう。そのため、軍病院内ではいつまでも医療技術が蓄積されない」「短期の兵役期間に軍医官として従事している医師たちには、有事の際に必要な戦闘用軍陣医学を熟知させることさえ難しい」と語った。

金哲中(キム・チョルジュン)医学専門記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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