もはやタレント!? 尖閣ビデオ流出の元海上保安官
【政治・経済】
2011年2月15日 掲載
講演でジョーク連発
冒頭、笑顔を見せながら、「少し緊張しています。こういう席に立つのは(自分の)結婚式以来です」と挨拶し、笑いを誘った。会場には100人以上の外国人記者がいたせいか、一色はサービス満点だった。まず経歴紹介では――。
「30歳で海上保安庁に入りました。一貫して船に乗り、警備・救難業務に従事していました。仕事内容をあまり詳しく言うと、また国家公務員法違反に問われるので伏せておきます」
12月に海保を辞職し、家族で引っ越したことについては――。
「子供に関しては、引っ越したことでポケットモンスターというアニメが見られなくなって、三日三晩泣かれたことだけが、父親としてふがいなかったと思っています」
懲戒処分を受けたことを、笑いのネタにしているのだからどうしようもない。一連のマスコミ報道については――。
「最初は反論を考えたが、そのうちに面倒くさくなった。具体的に何があったのかは、この本を読んでいただければ分かります」
チャッカリ、近く出版される著書をPR。もう開いた口がふさがらない。また、流出させたことについて、一色は「いろいろ考えて国民のために行動した」「公開して良かった」などと改めて正当性を主張、また中国については「日本に侵略を開始したとも受け取れる行動をとり始めた」と述べた。会場には東京都知事の石原慎太郎も駆けつけ、「愛国的な行動に敬意と感謝を表す。退職したのは残念」とヨイショしてみせた。
軍事ジャーナリストの田岡俊次氏が言う。
「海上保安官や自衛隊は、政府の指示には徹底して従う必要がある。対外関係では、微妙な駆け引きや大局的な判断が必要な場合も多いからです。勝手に個人の判断で動けば、国に大害を招くこともあり得ます。一部の人が、一色氏を英雄として扱うことで、後に続く者が出るのではないかと懸念しています」
そんな識者の声など、まるで耳にも入っていない元海上保安官。講演で記者から“政界進出の可能性”を聞かれると、「考えたこともありません。そういう話もありません」と否定してみせた。この言葉だけは冗談でないことを願う。