きょうの社説 2011年2月17日

◎老朽ビル改築支援 金沢都心軸の近代化急務
 金沢市が都心軸の老朽ビル改築を促す助成制度の導入に動き出した。昭和40年代に国 の支援で建てられたビルの多くは老朽化が目立ち、耐震性やバリアフリー化、IT化対応が遅れている。今後、新たな店舗やオフィスを誘致しようにも、ビルが古く、歯抜けのような状態では勝負にならない。金沢のオフィス空室率は昨年秋で25.5%に達しており、都心軸の近代化は急務である。

 特に2014年度末の北陸新幹線金沢開業で、金沢市にある大手企業の支店や営業所が 本社などに吸収されるケースも想定される。日帰りが可能になれば、拠点を置く意味が薄れるからだ。進出企業の流出を食い止めるだけでなく、新たな支店機能を呼び込むために金沢市の拠点性や中枢管理都市機能を高めておきたい。活性化のテコ入れを続けないと、これまで積み上げてきたにぎわい創出の努力が無駄になってしまう。

 都心軸沿いの老朽ビルに対する近代化の支援事業は、山出保前金沢市長が金沢経済同友 会との意見交換会で示したもので、いわば前市長の置き土産といえる。山野之義金沢市長はそうした事情にこだわらず、同事業の意義を認め、調査費計上に踏み切った。山野市長自身もこれまで社会資本整備の重要性を強く訴えてきている。今後も良いアイデアを懐深く受け入れ、新たな知恵を加味して、より優れたものに磨き上げていく努力を続けてほしい。

 金沢駅から香林坊、片町に至る都心軸は、支店機能や商業施設が集積する地域経済の拠 点である。だが、老朽化したビルがおよそ6割を占め、リーマン・ショックの影響でオフィス需要が低迷し、空室率が高止まりしている。

 まちなか定住促進事業が「定住人口」対策なら、老朽ビルに対する近代化の支援事業は 「交流人口」の増加策でもある。出店者に家賃を補助するオフィス助成制度や国道157号沿いの武蔵、香林坊、広坂に片町と竪町を加えたファッションストリートの補助制度などとともに、都心軸の活性化を後押ししていきたい。都心軸の魅力が高まれば、金沢全体の魅力も高まり、ひいては石川県全体の吸引力アップにつながるはずだ。

◎北方領土共同事業 中韓政府に自制求めたい
 ロシアと中国の水産会社が、北方領土・国後島でナマコ養殖の合弁事業を行うことで基 本合意したという。さらに、韓国の水産業者も同島での合弁事業の準備を進めていると伝えられる。中韓の企業が実際に、北方領土の共同経済開発に参加するとなれば、日本にとってきわめて深刻な事態になる。

 軍備の増強と経済開発で北方領土の実効支配を強めるロシアに対し、日本は残念ながら 有効な対抗手段を持ち合わせていない。それだけになお、北方領土での企業活動の自制を中韓両政府に強く迫り、実現させる必要がある。

 ロシアとの間で国境問題を抱えていたかつての中国は、北方領土に関しては日本を支持 する立場をとってきた。しかし、国境紛争を終結させ、関係改善を図った現在の中国は、対日本との領土問題や歴史認識でロシアと気脈を通じていることをうかがわせる。同様の対日問題を抱える韓国までがそこに加わり、領土で呼吸を合わせるような状況は何としても阻止しなければならない。

 日本とロシアが北方領土の帰属を争っているのは国際的に周知のことであり、第三国の 企業の開発事業を黙認するのは国際信義にもとる行為であることを、特に韓国政府は認識してほしい。

 北方領土の共同開発提案に対して、日本はロシアの管轄権は認められないとして拒否し てきた。韓国に対しては、こうした訴えの理解を求める一方、韓国が実効支配する竹島の領有権を主張する二つの立場を使い分けねばならないことになる。前原誠司外相と金星煥外交通商相との日韓外相会談では、北方領土の共同事業問題について踏み込んだ議論はなされなかったようだが、いまは朝鮮半島有事に備えて日韓の連携を強化しなければならない時である。日本けん制の思惑が強いロシアの提案に乗り、日韓関係が悪化すれば、北朝鮮を利することにもなる。

 中国外務省は、中ロ企業の合弁事業計画について「まったく知らない」と述べ、無関係 の立場を示しているが、そうした見解をうのみにすることはできない。