2011年1月13日 20時31分 更新:1月13日 21時46分
埼玉県熊谷市で08年2月、飲酒運転の乗用車が対向車2台と衝突し9人が死傷した事故で、車に同乗して飲酒運転を黙認したとして危険運転致死傷ほう助の罪に問われた男2人の裁判員裁判が17日、さいたま地裁(田村真裁判長)で始まる。同乗者への同ほう助罪適用は極めて異例で、被告側は起訴内容を否認し争う見通しだ。【平川昌範】
起訴状によると、いずれも熊谷市の無職、大島巧(48)と関口淳一(45)両被告は08年2月17日夜、玉川清受刑者(35)=危険運転致死傷罪で懲役16年が確定=が酒に酔って正常な運転が難しいと知りながら同乗し、走行を了解・黙認したなどとされる。被告側は▽飲酒運転を承認してはいない▽運転を止めようとした▽そもそも止める義務もなかった--などと主張する方針という。
飲酒運転の同乗者の責任を巡っては、道交法違反(酒酔い運転)ほう助罪について▽1審の罰金刑を「軽過ぎる」と執行猶予付きの懲役刑を言い渡した仙台高裁判決(09年)▽福岡地検の起訴猶予を「相当」とした福岡検察審査会の議決(08年)--などがあり判断は分かれる。危険運転致死傷罪は一般に有罪立証のハードルが高いとされ、そのほう助罪に問われた今回のケースは極めて珍しい。
同乗者への危険運転致死傷ほう助罪適用に関し、京都産業大法科大学院の川本哲郎教授(刑法)は「運転を了解・黙認したことが立証されれば、罪が成立する可能性はある」と話す。一方、交通犯罪に詳しい高山俊吉弁護士(東京弁護士会)は「積極的な働き掛けが無ければほう助ではない」と指摘する。
両被告は道交法違反(飲酒運転同乗)容疑で書類送検されたが、遺族が「危険運転致死傷罪の共犯」と告訴。これを受け、さいたま地検が危険運転致死傷ほう助罪で在宅起訴した。公判は計15日間で、遺族4人が被害者参加人として意見陳述などをする予定。判決は2月14日。
【ことば】危険運転致死傷罪
「悪質運転による事故の罰則が軽い」との世論を受け、01年の改正刑法で新設。「故意の信号無視」や「飲酒などで正常な運転が困難な状態」などで事故を起こし人を死傷させた場合、死亡時には最高で20年、負傷時は15年の懲役刑が科される。