EU:中国と安保対話推進 武器禁輸解除も視野 外交方針

2010年12月18日 2時30分

 【ブリュッセル福島良典】欧州連合(EU、加盟27カ国)のアシュトン外務・安全保障政策上級代表(外相)が、ソマリア沖での海賊摘発や地域紛争の予防など安全保障政策で中国との対話推進を盛り込んだ外交方針文書をまとめた。これまで希薄だった安保分野での関係強化に乗り出す。また、文書はEUの対中武器禁輸を「協力強化の障害」と位置づけ、将来的な解除の可能性を示唆している。

 文書は、中国などの新興国の台頭による国際社会の多極化を踏まえ、アシュトン氏がEUの新外交戦略の一環として起草した。外交力強化のための基本条約「リスボン条約」に基づき、今月1日に発足した欧州対外活動庁(EU外務省)の政策の土台になる見通し。アシュトン氏が17日、EU首脳会議で内容を報告した。

 毎日新聞が入手した文書によると、アシュトン氏は「新たな大国と問題の出現により、EUはより複雑な世界に直面している」と国際環境の変化を指摘。「EU益」を追求するため、外交・安全保障政策を貿易、エネルギー安全保障、地球温暖化対策、移民などの政策と連動させ、「戦略的パートナー」と規定する主要国との関係を強化する方針を打ち出している。

 対中関係で文書は「EUは安全保障問題で中国との連携を強めたい」と明記、協力強化を目指す分野としてイランの核問題や、朝鮮半島、アフガニスタン、ミャンマーなどの地域情勢などを列挙している。その上で、相互の信頼関係を構築するために軍事レベルの接触を深め、「ハイレベル安保対話」を開始するよう提唱している。

 EUの対外政策は長年、諸外国との通商・経済関係を中心に立案されてきたが、最近は政治・安保分野にも力を注いでいる。アシュトン氏が率いるEU外務省はソマリア沖の海賊対策やアフガン警察官支援などEU部隊の域外派遣も担当しており、文書には「EUと中国の利害が一致する安保分野」で連携を推進する狙いがある。

 EUが89年の天安門事件で発動した対中武器禁輸について文書は「外交・安保でEUと中国の協力を強化する上で主な阻害要因になっている」と分析、解除の検討を提案している。今年前半のEU議長国スペインは禁輸解除を模索したが、米国が阻止に動いたことが内部告発サイト「ウィキリークス」の暴露した米外交公電で明らかになっている。

 一方、文書は中国に対して、政府調達分野などの市場を欧州企業に開放し、国際貿易ルールを守るよう促している。

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