平成23年1月号

今こそ脱米自立を!半独立国家の汚辱を払拭しよう

 昭和四十五年十一月二十五日、三島由紀夫、森田必勝の両氏が東京市ヶ谷台の自衛隊駐屯地で自裁してから、早や四十年の歳月が過ぎた。
 三島由紀夫氏は決起の「檄」で要旨こう述べている。 「われわれは戦後の日本が、経済的繁栄にうつつを抜かし、國の大本を忘れ、國民精神を失ひ、本を正さずして末に走り、その場しのぎと偽善に陥り、自ら魂の空白状態へ落ち込んでゆくのを見た。政治は矛盾の糊塗、自己の保身、権力慾、偽善にのみ捧げられ、國家百年の大計は外國に委ね、敗戦の汚辱は払拭されずにただごまかされ、日本人自ら日本の歴史と傳統を涜してゆくのを、歯噛みをしながら見てゐなければならなかつた。(中略)

 沖縄返還とは何か? 本土の防衛責任とは何か? アメリカは真の日本の自主的軍隊が日本の國土を守ることを喜ばないのは自明である。あと二年のうちに自主性を回復せねば、左派のいふ如く、自衛隊は永遠にアメリカの傭兵として終るであらう(後略)」

 決起から四十年後、我が国の現状は惨澹たるものである。三島氏が「檄」に言う「本を正さずして末に走り、その場しのぎと偽善に陥り、自ら魂の空白状態へ落ち込」んだ我が国は、独立自尊の気概さえ喪失してしまった。
 過般の尖閣諸島における中国漁船衝突事件以来、国内には一気にナショナリズムが昂揚しつつあるが、私たちは今こそ「偏狭なナショナリズムに安易に妥協することなく、民族として、文化共同体として、高度な倫理を伴った自信」(『月刊日本』創刊の辞)を日本人にもたらさねばならない、と考える。
 昨今の一連の国辱的事件は、三島氏の指摘の通り、國家百年の大計を外國に委ね、敗戦の汚辱を払拭しないまま、今日に至った我々日本人自身の責任でもある。
 戦後体制の根底には、米国製の「日本国憲法」「教育基本法」「東京裁判」史観が腰を据え、「日米安保体制」が日本独立に蓋をしている、という冷厳なる事実を凝視する必要がある。最早、自己欺瞞と自己冒涜は許されない。
  今、最も大切なことは、我が国を真の独立国たらしめることである。
 私たちが、敢えて「脱米自立」を主張する所以である。

日本経済壊滅を狙うTPP 米国の五十一番目の州にするな! 衆議院議員 山田正彦

山田正彦(やまだ・まさひこ)
早稲田大学卒。1972年から郷里の長崎県で牧場を経営。弁護士も務め、1993年の衆院選で初当選。2010年6月に農相に就任。同年10月から衆院農林水産委員長。

    TPPを主導するアメリカの狙い

  1. 菅直人政権はTPP(環太平洋パートナーシップ協定)にどう対応しようとしているのか。
  2. 全く白紙の状態だ。情報収集のための協議を二国間で行っている段階に過ぎず、参加を前提とした事前協議ではない。
     TPPは、二〇〇六年にシンガポール、チリ、ニュージーランド、ブルネイの四カ国によって締結されたが、その後アメリカ、オーストラリアなども加えた九カ国で交渉が行われている。菅総理は十月はじめの所信表明演説で、TPPへの「参加検討」を打ち出した。
     TPPの危険性を認識している我々は、十月二十一日に「TPPを慎重に考える会」を旗揚げし初会合を開いた。鳩山由紀夫前首相や国民新党の亀井静香代表らも参加した。代理出席を含めると参加者は約百八十人に上った。
     それでもなお、民主党のプロジェクトチーム(PT)は「TPPへの参加の可否を含め、情報収集のためにも事前の協議を始める」という提言案を目指した。そこで十一月四日、「TPPを慎重に考える会」は緊急決議をして、次のように主張したのだ。
     「私たちは今般のAPECにおいて、議長国である我が国が前のめりになってTPPへの参加や事前交渉に参加することを表明することに反対する。その上で、TPP加盟国のみならず非加盟国も含めて万全の情報収集を行い、菅総理が主張する『国民全体で考える主体的で能動的な外交』を実現するために国民を巻き込んだ十分な議論を行ったうえで参加の可否を検討することを求める」
     こうした抵抗によって、PTの提言に「事前の協議を始める」という文言を入れることを阻止することができたのだ。
  3. TPPの何が危険なのか。
  4. TPPによって打撃を受けるのは第一次産業だけではない。TPPは関税の撤廃だけではなく、参加国の制度を一元化しようとするものだ。わが国は、金融、保険、医療、サービスなど様々な分野で規制の撤廃を要求され、制度改革を迫られることになる。実際、TPP交渉に参加しているアメリカなど九カ国は、金融や政府調達、労働など二十四の作業部会を設けている。
     例えば、保険の分野では、民間保険中心のアメリカ型保険制度に合わせるよう、わが国が誇る国民皆保険制度の見直しを求められる危険性がある。TPPの参加交渉に入れば、アメリカがあらゆる分野に口を出してくるのは明らかだ。
     労働分野の規制撤廃も重大な問題をはらんでいる。外国人労働者の受け入れを迫られる恐れもある。ヒトの移動が自由化され、新興国から低賃金の労働者が大量に流入することで、国内で失業率悪化や賃金低迷などが広がる恐れがある。郵政改革もやり玉に上げられ、再び郵政民営化を徹底させる方向での規制撤廃を要求されることになるかもしれない。
  5. TPPを主導しているのはアメリカなのか。
  6. 当初TPPはシンガポールなどの小国からスタートしたが、アメリカが参加してからは、アメリカがアジア太平洋地域で市場を拡大するための道具となった。菅政権はアメリカに押される形でTPPへの参加検討を打ち出した。
     『Inside Us Trade』誌十一月十九日付は、オバマ政権が、ASEANをベースとした経済統合を推進する中国に対抗すべく、TPPを推進していると指摘している。そして、アメリカは世界三位の経済規模を持つ日本の参加はTPP成立に不可欠と考えている。
     さらに、見逃すことができないのが、同誌が日本のTPP参加について次のように指摘していることだ。
     「事前協議で日本に高いハードルを課すなら日本は参加意欲を減退させる。日本側TPP参加希望者にとっての最善の方法は、事前協議において政治的に敏感な問題について明確な回答を行うことではなく、政治的コミットメントで交渉に参加できること。これにより、国内改革が完全に打ち出される前でもTPP交渉への参加が可能となる」
     同誌はまた、カーク米通商代表部(USTR)代表がAPECでの前原誠司外務大臣との会談の場において、牛肉のマーケット・アクセスと郵政の改革について、繰り返し要望を述べた模様だと書いている。
     日本は米国の五十一番目の州になる
  7. アメリカは、これまでも日米構造協議や年次改革要望書によって日本の制度改革を迫ってきた。再びTPPをテコにして、アメリカが日本の制度改革を迫ってきているということか。
  8. その通りだ。TPPは、アメリカの主張通りに、あらゆる面でわが国の制度改革を迫るものだ。すでにわが国は、年次改革要望書の要望に沿って労働市場の規制撤廃を進め、労働者派遣法などの規制緩和を実行してきた。市場原理主義に沿った制度改革が進んだ結果、日本は一気に格差社会になってしまった。TPPによって、さらに日本はアメリカ型の弱肉強食社会につき進んでいくかもしれない。
     TPPによって小泉・竹中路線が再現することを警戒する声も出ている。TPPへの参加問題は、わが国がアメリカの五十一番目の州になる危険性があるほど重大な問題だ。
     政府は、TPP参加によって、いかなる課題が生じるのかを含めて、国民に情報を開示すべきだ。政権交代で我々が目指したものは、外需依存型で市場原理主義の経済を転換し、内需を中心とした欧州型の福祉国家を実現することだったはずだ。
  9. 菅政権は「開国」という言葉を使っている。
  10. 前原外務大臣は、「日本のGDPの一・五%の第一次産業を守るため、九八・五%が犠牲になっている」と発言したが、これは暴論だ。農産物の平均関税率は、韓国が六二・二%、EUが一九・五%などに対して、わが国はわずか一一・七%であり、すでに日本農業は、世界で最も開かれた市場となっていると言ってもいい。
  11. 大手メディアの論調はTPP賛成に傾いている。
  12. TPPの危険性についての認識が不足しているからでもあるが、マスコミ自体が関税撤廃で利益を得る大企業の方を向いているからなのではないか。

    TPPで農業は壊滅する

  1. 木材の輸入自由化で日本の林業は勝滅状態になった。
  2. 日本は、一九六三年に木材輸入を自由化した。その結果、林業は壊滅的な被害に遭い、間伐する人間を失った山は荒れ果てた。農業でこれと同じことを繰り返してはいけない。
     わが国の食糧自給率の確保は死活的な問題だ。アメリカとフランスは完全に食糧を自給している。ドイツとイギリスも七割以上は確保している。これに対して、わが国の自給率は四〇%にまで低下している。穀物の自給率は二七%で、世界百七十三カ国・地域で百二十四番目という哀れな状態だ。しかも、アメリカへの依存度が異常に高い。対米依存度は、小麦が五三%、大豆が七〇%、トウモロコシにいたっては九五%だ。
  3. 戦後、日本人の食生活の変化と海外への食糧依存が同時に進んだ。一九五四年に、アメリカで余剰農産物処理法が成立し、日本人の小麦消費を拡大させるための様々な戦略がとられた。学校給食や災害援助向けにアメリカ産の穀物が無償供与されることになり、日本人の小麦消費は急速に拡大していった。一貫してアメリカは日本の食糧を支配するという戦略を持っているのではないか。
  4. アメリカにとって食糧はミサイルと同様、重要な戦略物資なのだ。アメリカの通商交渉担当者たちは、「USTRはいかなる外交交渉においても、アメリカの自給率一二五%を切るような交渉をしてはならない」と語っているほどだ。
     通商交渉の結果、日本は農産物輸入の拡大を余儀なくされてきた。一九九三年のガット・ウルグアイ・ラウンド交渉では、関税化した農産物については、最低限のアクセス機会の提供が義務付けられることになった。基準期間(一九八六~一九八八年)の国内消費量に対する平均輸入数量を基準として、五%以上のものはその輸入数量を維持することが合意されたのだ。これをカレント・アクセスという。
     これにより、わが国は当時の輸入実績である小麦五百七十四万トン、大麦百三十七万トンを輸入することを約束したとされる。政府は、コメの輸入枠「ミニマム・アクセス(最低輸入量)」と同様に、カレント・アクセスが国の義務であると言っていたが、国会の農水委員会で追及されて、単なる「輸入の機会」であると訂正した。
     アメリカや韓国では、ミニマム・アクセスすら守られていない。例えば、アメリカでは乳製品や落花生、綿についてミニマム・アクセスを設定しているが、綿についてのミニマム・アクセス四万百トンに対して輸入量は二万四千トンとおよそ五分の三でしかない。各国とも自国の農業を保護しているのだ。
  5. 日本に対する農産物輸入の攻勢に対して、農水省は抵抗してこなかったのか。
  6. 彼らは唯々諾々として従って来たといわねばならない。農水省もまた、加工食品製造業界の方を向いているからだ。製造企業は、原料を安く輸入したいから、関税の引き下げに賛成している。

    食糧危機に備え減反を廃止せよ

  1. わが国の食糧自給率を上げるためには、所得補償が不可欠なのか。
  2. 日本はWTO交渉の中で、三兆九千億円の助成粋が認められているが、そのことは農業者にも消費者にも知らされてこなかった。これまでに農家への直接の助成としては、中山間地域への五百四十五億円、農家所得のうちわずか一・五%しか行われてこなかったのだ。
     かつて小麦、大豆に稲作の転作奨励金として十アール当たり七万円まで助成されていた。そのときに十年間で達成する目標をたった二年で超えてしまったので、あわてて品質が悪いなどと言い訳して助成金を取りやめてしまった。
     アメリカは、麦、大豆、トウモロコシなど二十二種類の農産物に不足払い制度を実施している。アメリカの農家は平均百九十七ヘクタールを耕作しているが、所得の四割は政府からの助成金で賄われているのだ。アメリカは十年以上前から、あきたこまち、コシヒカリなどのコメを栽培しているが、農務省は目標価格をトン当たり二百四十ドルに設定し、国際価格の七十四ドルの二倍以上の差額百六十六ドルを不足払いと称してアメリカの農家に支払ってきた。
     EUもアメリカに劣らず農家に対して手厚い所得補償をしている。農家平均所得の七割は助成金と言われるほどに農家を保護して、自給率を上げてきた。ニクソン大統領時代に苦い経験をしているからだ。
     一九七三年、ニクソン大統領は大豆を七十日間禁輸した。当時のソ連が食肉の需要を満たすため大量の穀物買い付けに走り、アメリカは自国の穀物が不足して高騰するのを恐れたからだ。この結果、世界の穀物相場は一気に四・五倍に高騰した。当時、食糧自給率はイギリスが四六%、ドイツが六八%、フランスがかろうじて一〇〇%を超えていたが、ヨーロッパ各国は食料が現実に輸入できなくなることを知り、愕然とした。それからヨーロッパ各国は食糧の自給を目指して動き出したのだ。
     約三十年経過した現在、イギリスは七四%、ドイツ九一%、フランスは一三〇%と食料自給率を上げてきた。穀物自給率だけを見るといずれの国も一〇〇%を超えており、すべて自給できている。
  3. 所得補償を充実させ、食糧自給率が上がれば、わが国もTPPに参加できるのか。
  4. そういうことではない。所得補償をすれば関税を下げていいという話ではない。戸別所得補償は、農業の多面的機能に注目して行われるものだ。多面的機能とは、国土の保全、水源の涵養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承など農村で農業生産活動が行われることによって生ずる、食料やその他の農産物の供給の機能以外の多面にわたる機能のことをいう。
     例えば、スイスは一九九六年の憲法改正で、農業の多面的機能を農政の目的とし、環境への配慮を要件とする直接支払いを主な施策として農業経営を支援することを定めた。
  5. コメの減反政策についてはどうか。
  6. 古来、瑞穂の国として大事に受け継がれてきた水田を減反して耕作放棄地にして荒らしてはならない。いまこそ、減反政策を止めて、大増反政策へ転換するときだ。
     よく「古古米はぱさぱさして食べられない」といわれてきたが、実は低温で保管すれば、コメは十分に備蓄に耐えうる穀物なのだ。玄米でも四、五年は保存できるのだから、もみで低温保管すれば十年、二十年は長期備蓄できる。
     東北地方では古くからもみ倉庫があって、コメはもみで保存されてきているが、たまたま農家のもみ蔵から、三十年ほど前のもみが残っていて、それを苗代に播いたところ発芽したとも報告されている。
     日本も減反をやめて、近い将来の食糧危機に備えて、コメをもみで、低温で長期備蓄する政策への転換時期にきているのではないだろうか。稲作農家に作りたいだけコメを作らせて、余剰米を政府が国家備蓄として買い入れる備蓄政策を検討する必要がある。
     米粉の需要も拡大してきている。先日、小麦粉ではなく、米粉で揚げたチキンの唐揚げをいただいたが、なかなかの味だった。見た目も、食感も「本当に米粉ですか」と驚くほどだ。米粉パンもブームになりつつある。米粉の饂飩も食べたが、こしがあってなかなかのものだ。秋田の大潟村では餃子の皮も米粉で始めたという。
     「主食用のコメを作っても、今年の所得補償では赤字だが、米粉米、加工米を作った手間、農薬が省けて二、三万は利益を出した」という声も聞く。

    米国の究極的な狙いは遺伝子組み換え作物だ

  1. アメリカの食糧支配戦略として注目されているのが、遺伝子組み換え作物(genetically modified organism=GMO)だ。それを主導しているのが、バイオテクノロジー分野の有力企業であるモンサントだと言われている。同社は、ベトナム戦争で大量に散布された猛毒物質ダイオキシンを含む枯葉剤ラウンドアップを製造した企業でもある。
  2. 二〇〇八年にフランスの放送局「Arte」が制作したドキュメンタリーによると、モンサントは一九九五年から二〇〇〇年にかけて、世界の五十にものぼる種子会社を買収し、世界中でGMO栽培を拡大させてきた。
     モンサントは、豊富な資金力を背景にしたロビー活動によって、アメリカのFDA(食品医薬品局)の厳しい審査を潜り抜け、イギリスにおいては、ラットの実験結果などで遺伝子組み換え食品に警鐘を鳴らした学者を失脚させるなど、世界支配に向けての強引な攻勢が浮き彫りになっていると伝えられている。
     すでにインドの綿花は、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis=Bt)という細菌由来の殺虫性毒素を導入した遺伝子組み換えの綿「Btワタ」になった。二〇〇六年には、Btワタの病害で大きな被害が出て、在来種にも広がった。Bt毒素導入の際に、綿の木を枯らす病気への抵抗性が弱まったという推測さえある。
     インドの農民は、以前からの在来種の四倍も高価な種子を買わされることになった。小規模農家は借金して種子を買い、凶作が続いたときは破綻してしまった。マハラシュトラ州ビルダバ地区の綿作地域では、二〇〇五年のBtワタ導入から一年で、殺虫剤を飲むなどして六百人が自殺した。次の年は半年でさらに六百八十人が自殺したと言われている。
     発展途上国では、遺伝子組み換えの種子とともに大量に使われるグリホサート系農薬の土壌汚染が進み、子供たちの健康が次第に損なわれてきているともいう。
     メキシコは、モンサントのトウモロコシの遺伝子組み換え種子受け入れに抵抗していたが、ついに受け入れを余儀なくされ、現在は遺伝子組み換え作物の氾濫で深刻な状況に陥っている。同国はトウモロコシ遺伝子の宝庫と言われ、百五十種もの種子があった。ところが、北米自由貿易協定(NAFTA)によって、アメリカ政府から多額の補助金を受けて在来種の半額で売られる遺伝子組み換えトウモロコシの大量輸入を阻止できなくなったのだ。
     自然界に放たれた遺伝子組み換えトウモロコシが、在来種に制御不能な影響を与え、トウモロコシの茎が二本に分かれるというような奇形が生まれている。
     パラグアイは非合法的な遺伝子組み換え種子の輸入で、遺伝子組み換え大豆の栽培を事実上承認せざるを得なくなった。飛行機や大型散布機で大量散布される除草剤に脅かされた小規模農家は大規模農家に吸収され、毎年十万人が農村から都市のスラムに移住していると報道されている。
     農家がモンサントの種子を用いる場合、「自分の家で取れた種子を使うことはならない。必ず種子はモンサントから購入しなくてはならない。農薬もモンサントから購入しなくてはならない」という契約を結ばされる。さらに「ライセンス料として一ヘクタールの作付け当たり四十ドルを、毎年モンサントに支払わなくてはならない」とされている。これに反すれば、容赦なく損害賠償の裁判を提起してくる。
  3. 中国、韓国とのEPAを急げ

  4. TPPは日本の製造業にはメリットがあると主張されている。
  5. そのメリットは限定的だ。すでに、日本の自動車や家電メーカーなどは生産工場を海外にどんどん移転している。関税が撤廃されれば、日本の製造企業の海外法人の利益は上がるだろうが、日本国内の雇用は失われる。日本の利益にはならないのだ。  TPPに参加しないと、日本企業が韓国企業との競争に勝てないという指摘があるが、TPPに参加すれば勝てるというような単純な話ではないはずだ。すでに、サムスンに日本企業は負けているのが実態ではないか。
  6. TPPに参加することなく、貿易国家としての生き残りは可能だということか。
  7. 私は、貿易自由化そのものに反対しているわけではない。問題はその進め方だ。例外なく関税を撤廃するようなやり方、制度までも含めた包括的な手法が問題なのだ。
     わが国は、各国との間で着実に自由貿易協定(FTA)、経済連携協定(EPA)を結びつつある。個別品目の交渉ができるのがFTAやEPAの利点だ。中でも、中国や韓国とのEPA締結は日本にメリットが大きい。TPPではなく、二国間の協定を推進していくべきだ。
  8. (聞き手・構成 坪内隆彦)